批評サムライ  ~映画・ドラマ・小説・エンタメ ★斬り捨て御免!~

責任が何でも曖昧なこの国で娯楽くらいは白黒ハッキリ!大作も小品もアダルトも興業収入も関係ない。超映画批評にない「上映途中の居眠り」が特技。シネマハスラー宇多丸氏、たまむすび町山智浩氏、シネマストリップ高橋ヨシキ氏を見習って公開初日最速レビューを心掛け評価は点数制。地方在住フォトグラファーがど田舎のシネコンでネタバレあり&あらすじ&見たまま感想ブログ

映画「新聞記者」内閣調査室VS官僚+記者のサスペンスが、東京新聞:望月衣塑子ショーにすり替える構成はいただけない。

1日2回の菅官房長官記者会見を時々YouTubeで見る。

後半決まって、東京新聞記者・望月衣塑子氏の質問攻撃を見ることができる。

他社が聞かない(聞けない?)ことを執拗にで聞くいつものスタイル。

ほとんど共闘はない。

週刊誌報道や根拠のない記事に基づく質問も多く訂正やとんちんかんもある。

知る権利を代行する仕事が記者なので、手法はどうあれ「まっとう」である。

そんな彼女の原作で映画を作った。

組織に敵対する官僚に近年最も色気のある松坂桃李、望月と思われる記者に韓国のシム・ウンギョン(全く知らない)

期待値は高まったので公開初日、大都会シネコンの2回目に参加。

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あらすじ)

都新聞記者・吉岡 ( シム・ウンギ ョ ン ) のもとに 、大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXで届いた 。日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育ち 、ある思いを秘めて日本の新聞社で働いている彼女は 、真相を究明すべく調査をはじめる 。

一方 、 内閣情報調査室官僚・杉原 ( 松坂桃李 ) は葛藤していた 。「 国民に尽くす 」 という信念とは裏腹に 、与えられた任務は現政権に不都合なニ ュースのコントロー ル 。

 愛する妻の出産が迫 っ たある日彼は 、久々に尊敬する昔の上司・神崎と再会するのだが 、数日後神崎はビルの屋上から身を投げてしまう 。真実に迫ろうともがく若き新聞記者 。「 闇 」 の存在に気付き 、選択を迫られるエリート官僚。

 二人の人生が交差するとき 、 衝撃の事実が・・・

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最近複数のビジュアルポスターで逐次投入が当たり前になった。
SNS拡散を狙ったのだと思うが、これほど「刺さる」キーワード版も珍しい。

先行試写で無料鑑賞した著名な文化人・知識人の傑作コメントもどうかと思う。それは金払ったこっちで判断するさ・・・作り手の傲慢というもの。

シム・ウンギ ョ ンは日本の女優が引き受けなかった理由で登板した様だが新鮮で結果良かった。胸の奥に秘めた正義感、生い立ちのトラウマを背負った影とか。

昭和の香りがする久しぶりに瞳の澄んだ大人の女性を見た。言葉のハンディも感じない。

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内調官僚役の松坂、今回はMr.葛藤

国家公務員であるにも関わらずダーティー仕事が日課で妻にも真実を言えない。良心の呵責から尊敬する上司の自死に吹っ切れる。

すけこまし役日本一の松坂にとって真逆な、令和版の志村喬黒澤明「生きる」)の様で、背負ったものの重さでつぶされそうな市井な人感が秀逸だ。

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そんな二人が内調=政府の秘密を暴露するサスペンスなんだが・・・
記者が見る番組に、文科省事務次官の前川氏との対談者として記者・望月衣塑子が頻繁に画面に表れる違和感。

国民の多くが知る例の詐欺師夫婦土地取引問題、四国の獣医師大学設置の「疑惑」を追求してきた当事者2人が出てくる。

フィクションにノンフィクションをぶち込む。

 

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映画を見終わって観客に感じて欲しいことを、途中で原作者の言葉として要約させてどうするよ。

政権批判も、為政者批判もどんどんしたらいいけれど

原作者の、原作者による、原作者のためのドラマだ。

素晴らしい俳優たち、フィルムライクな霞が関シーン、心象風景を大胆に魅せるカメラワークetc 素晴らしい映画になれたのに。

いつもの制作委員会方式で、特定の企業の思惑に寄った構成に改編されたのか?

 

70点