批評サムライ  ~映画・ドラマ・小説・エンタメ ★斬り捨て御免!~

責任が何でも曖昧なこの国で娯楽くらいは白黒ハッキリ!大作も小品もアダルトも興業収入も関係ない。超映画批評にない「上映途中の居眠り」が特技。シネマハスラー宇多丸氏、たまむすび町山智浩氏、シネマストリップ高橋ヨシキ氏を見習って公開初日最速レビューを心掛け評価は点数制。地方在住フォトグラファーがど田舎のシネコンでネタバレあり&あらすじ&見たまま感想ブログ

映画「MOTHER マザー」長澤まさみのヤサグレクズ母物語は歯がゆい現実の投影故か、映画的リズムを欠いた凡庸さで共感も興奮も何にも無い情けなさ

 7月最初は、近年映画主演が年2作以上のトップ女優長澤まさみが初の母役にいどんだ「MOTHER」に。

 

いつものご近所スーパー系シネコンに行く。

家族連れのごった返す食堂街を通って席に着くとわずか20人くらいと

東宝シネマズの看板女優で公開2日目、最初の土曜日の午後に・・・大丈夫か?

 

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あらすじ)

シングルマザーの秋子は、生活保護を受け一人息子の周平と苦しい生活をした。

実家に帰り両親に借金を申し込むも、親子の縁を切られてしまう。

ゲーセンでホストの遼と出会い、やがて二人は内縁関係に。 周平は学校に通うことも出来ず、荒んだ生活を続けていく。 ある日秋子は遼の子どもを妊娠するも、遼は認知せず逃走。

 秋子が子どもを産んだ5年後。16歳となった周平は、学校に行かず妹・冬華の面倒を。やがて3人は住む場所にも困り路上生活となり児童相談所が救いの手を差し伸べる。

 周平はフリースクールで勉強を教わり、少しずつ学ぶ楽しさを感じた。

しかし、秋子は周平に金を無心するように・・・

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人の金で、パチンコやホスト遊びで散財し働かないシングルマザーと

学校に行かない、友達のいない息子

 

この2人の周りの大人が例外なく情けない。 

覇気がなく口先で生きてる。

刺されても訴えない市役所職員、暴力を見ても警察に届けないラブホ経営者

暴力を見ても止めようとしない児童相談所職員・・・

真剣にこの親子を救出しようとはしない。

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この辺りのリアルの積み重ねが、この映画唯一の真骨頂だ。

親子再生のヒントも、ヒーローも現れない

ということは悪循環しかなく、路上生活者や犯罪者になるしかない。

 

長澤は元亭主から養育費を受けながら働かず

子を使い金を借りさせ、犯罪させる、正真正銘のクズ親である。

同時に男に言い寄られ、利用し、性欲を発散する女でもある。

後者がきちんと描かれていないのでキャラクターの説得力を欠く。

 

だらしない女はだらしないセックスをする。

あるいはセックスだけはだらしなくないとか。

 

エロス表現がない(セックスしてる風はあるが)のだ。

例えば「復習するは我にあり」の倍賞美津子はスクリーンから

エロスの波が見えた。

 

裸になる必要はない。

 例えばセックスに向かっていく際に、画面が回転する

白石和彌監督の映画「凪待ち」の様な映画的な至福などいくらでも技があった。

 演出は東宝の看板女優故に、置きにいった感が否めない。

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青空が全くない。

2人の心象風景のようにグレートーンが支配する。

笑いがない。

 

クズぶりをセリフでも行動でも 笑いに出来たにも関わらずだ。

チャップリン曰く

「近くで見れば悲劇でも、遠くからはコメディだ」

観客に息抜きさせないと疲れる。

 

物語はヒーロー登場しないんなら、せめて小さなエピソードで感情を揺さぶらないと。

エンタメに昇華しきれてない監督の力量不足。

 

役者陣では非共感者を演じている面々はいい仕事をした。

ホストの阿部サダヲの軽さ、トラウマを抱える児童相談所夏帆の半歩下がって生きてる感じ、ラブホ経営者の仲野太賀の不思議な優しさ・・・など役に徹して見事にクズだった。

 

少年役の奥平大兼は何をしふだすかわからない不気味さをナチュラルに感じさせて好演だった。

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さて主演の長澤まさみだ。

誰からも真に愛されない、息子だけを愛する(彼女なりの)人格であるためか、彼女史上初の役柄だと思う。

監督の力さえあれば、主人公が共感されなくても、別の何か「something else」で希望は見せる。

映画って本来2時間の暗闇でその「something else」を見せるものと思っているので今回は運がなかった。

 

どこか一つ、良い行いをしたが故に救われるお釈迦様的救いもなく、映画はただリアルを描いて終わってしまった。

ドキュメンタリー映画でもあるまいし。

 

50点

映画「犬鳴村」・・この町で生まれ、隣町に住む私が、地元では有名な都市伝説の映画化をコロナ開け1本目に選んだ・・

ブログ再開します。

昨年秋に、動物センターの犬を飼いだしたら、強い分離不安症で、飼い主いないと吠える、暴れる、脱走するの連続で、市の動物管理車が出動したり、仕事も一緒に出掛ける必要から車を買い替えたり、コロナより先に、新しい生活様式になってしまいました。

結果、映画館に行けない日々が続きましたが、なんとか解決しそうな予感です。

昨年末分も少しずつUPして行きます。

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この映画を緊急事態宣言開けて最初に見たのは訳がある。

・家からわずか20km先にあるのが「犬鳴トンネル」

・トンネルは宮若市にあり、私はそこで生まれ隣町に住む

・母校の小学校校歌の始まりは「犬鳴きはるか・・・」

・犬鳴伝説は、確かに数十年前から地元住民も知られている

まさにご当地映画なのだ。

ホラーは基本苦手だけれど、この監督清水崇には興味があるし避けてはいられない。

 

初めてのイオンシネマは、お客さん5人くらいで、寒々しいが

ホラーにはちょうどいい。

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あらすじ)

臨床心理士の森田奏の周りで突如、奇妙な出来事が起こり始める。

「わんこがねぇやに ふたしちゃろ~♪」 奇妙なわらべ歌を口ずさみ、おかしくなった女性、行方不明になった兄弟、そして繰り返される不可解な変死。

それらの共通点は心霊スポット【犬鳴トンネル】だった。

「トンネルを抜けた先に村があって、そこで××を見た…」突然死した女性が死の直前に残したこの言葉は、一体どんな意味なのか?

全ての謎を突き止めるため、奏は犬鳴トンネルに向かう。

しかしその先には、決して踏み込んではいけない、驚愕の真相があった・・・・

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トンネルに深夜入りカップルが動画撮影する。

10年前ならあり得ないが、ユーチューバー時代にはこういうのが全国にわんさといるんだろう。ネットではこのトンネル前から(中には入れない)映像が山とあるしね。

廃墟に入ってからの恐怖の盛り上げはうまいもんだ。注視できなくなって下向いてた。

恋人女性が自死し、兄は実家に妹(三吉彩花)を呼ぶ。

三吉をスクリーンで初めて見た。

目力の強い大きな体で目の前の衝撃を受け止める存在感が抜群だ。

特別の演技とかないのだがナチュラル。

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随所に現れるホラー描写よりも、三吉が自身が持つ特別の能力を自覚し、家族(父:高嶋政伸 母:高島礼子 祖母:石橋蓮司)の隠された出自を探るファミリーヒストリードラマになっていく。

 

現在の出来事は過去に秘密があり、その鍵探しの旅である。

 

高嶋政伸はクセがある役はいつもうまいが、振り切った高島礼子が秀逸。女優のプライドを捨てたかのような何物感。よく役受けたな。

 

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一方で廃墟の村にまつわる電力会社の闇も描かれる。

ここでその当時の亡霊の出現には参った。

ぺらぺら当時の模様を三吉に説明しだした辺りでトーンが変わる。

これはホラーか?コメディか?

彼女が自分の体と知恵で、今起こっている現象を解き明かしてこそ共感が生まれるのだ。

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ドラマの構成はよかった。

起)お気楽カップルの悲劇

承)主人公の自我の目覚め

転)ファミリーヒストリー

結)亡霊たちの訴え

ラストカットがパート2の布石だろうか?

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既にある日本最恐の「犬鳴伝説」を使って

一家族の、ユーチューブ世代と因習に縛られて生きている二つの世代を描く。

同時に悪徳企業ら資本家に翻弄される住民の恨みがラストでスパークする。

 

俳優の力演、SFXの完成度は素晴らしかった。

縦糸と横糸がかみ合った社会派ホラーになるはずだったが・・・

おしゃべりな亡霊なんかいらない。

 

70点

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長年この伝説に心を揉んでいた地元住民として、映画の形で終止符を打ってくれた東映と清水監督には敬意を表したい。

そもそも亡霊なんていないしね、エンタメの中だけ。

 

映画「ワンス・アポナ・タイム・イン・ハリウッド」何をやってもタランティーノ!人気俳優の興亡と60年代カリフォルニアの狂気が交わるサスペンスが秀逸!ブラピのカッコ良さが特筆。

何をやっても魅せてくれる我らがタランティーノ

今回はどう楽しませてくれるか?

60年代のハリウッドが舞台で・・・と言っても題材なんてどうでもよろしい。

西部劇でも、ナチハンターでも・・・結局はサスペンスあり、活劇あり、恋愛があって・・濃い人間ドラマになっているんだから。

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ディカプリオとブラピのW主演?

タイタニック」以降どうもディカプリオ主演映画が見てるとつらい。

日本で言うと「藤原竜也」で、ハンサムで頼りがいがある活躍するけどなんか共感できない、みたいな。

ブラピは頼りがいがあるがクールで余裕がある感じ。

この2人がタランティーノがどう使うか?

いつものシネコン、いつもの辺りで見て来た。

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あらすじ)

1969年、ハリウッド。俳優のリック・ダルトンレオナルド・ディカプリオ)は、テレビから映画へのキャリアチェンジがうまくいかずに焦っていた。彼のスタントマン兼付き人のクリフ・ブース(ブラッド・ピット)は、変わらぬ忠誠心をリックに捧げ続けており、2人は固い友情で結ばれていた。リックは隣に越してきた、時代の寵児ロマン・ポランスキー監督と妻で女優のシャロン・テートマーゴット・ロビー)に刺激を受け、イタリアで数本のマカロニ・ウェスタン作品に出演する。半年後、帰国したリックが自宅で過ごしていると、ヒッピー風の若者たちが運転する車が私有エリアに入り込み、リックとの間にトラブルが発生する・・・

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人気俳優の興亡の個人史がケレン味たっぷりで描かれる。

その職場であるハリウッドの喧騒のアクセントに70年代の世界的ヒーローになった役者ばかりでうれしい。

10代の日本の少年洋画ファンを熱狂させたブルース・リーと、キング・オブ・クールのスティーブ・マクイーン。俳優がまたよく似てる。

映画小僧タランティーノの編集が実にテンポ良く飽きさせない。

人気スターが仕事を失う恐れを、ディカプリオがいい味を出している。

さすが主演の貫禄だ。

 

f:id:kudasai:20190920160341j:plainここからが本領発揮。

60年代カリフォルニアに蔓延していたカルト宗教がスタントマン兼親友役のブラピに絡んでくる。ここからのサスペンス、ダークな匂いこそこの映画の神髄だ。

ここを描きたかったんだろうな。

街にあふれるヒッピー風の若者の群れ

郊外で独自のコミューンを作り、厳密なヒエラルキー組織を持つ。

リーダー(チャールズ・マンソン)は敢えて登場させない不気味さが人格支配されている恐怖を物語る。

f:id:kudasai:20190920160351p:plainこのコミューンにやってくるブラピのカッコ良さ。

理解できないカルト集団VSブラピ

悪党だらけのバーにやってくる一人のカウボーイみたいな。

少ないセリフ、余裕のある態度、無駄のないアクション

マクイーンの傑作「ゲッタウェイ」見てるようなキレの良さ

ブラピ主演映画の中で最高にカッコいいシーンだ。

ラスト40分で主演が完全に入れ替わる。

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この後、ロマン・ポランスキー監督、シャロン・テート夫妻に忍び寄る悲劇へと進む直前に、隣家に住むブラピと再度対決する。

2本の別の映画みたいだ。

前半はヒューマンコメディ、後半がカルト集団サスペンス

50代になったブラピは本当にいい俳優だ。

共感度が増した。

特にタランティーノと組んだ時にね。

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シャロン・テート殺害事件をモチーフに「虚栄の街」に巣食う異常な人たちをスケッチして見せた新感覚エンタメが登場した。

タランティーノコーエン兄弟の新作はこの新感覚がいつも楽しめる。

題材はなんでもいい。必ず最高の料理にしてくれる。

映画を愛し、映画に愛される稀有な映画作家だ。

 

90点

 

 

映画「イソップの思うツボ」昨年度BEST監督の上田慎一郎はこの先どこへ向かう?ここ10年見た中で歴史的駄作。東宝は金返せ!

2018度NO1の評価をしたのが「カメラを止めるな」

監督&脚本の上田慎一郎が文句なしの傑作だった。

その上田の次作(2018年公開「ブルーサーマルVR -はじまりの空-」はVRシアターが近くにないので見れず)は、題材がどうであれ見なければならない。

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公開4日目の昼下がり、ご近所スーパーシネコンに客はたった2人

これはしかたない。

ヒットドラマの焼き直しでなく、大ヒット漫画の映画化でもなく

ジャニーズも、一人のイケメンも、綾瀬はるかもいやしないのだ。

上田慎一郎」の名前も、九州のど田舎までは伝わらない。

それでいいではないか。

面白ければ人は来る。1年前に彼が証明したばかりだ。

 

あらすじも、予告編CMも見ていない、何の情報もないまま座席に座れた訳で

トリッキーな上田映画鑑賞には理想的な形でスタートした。

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あらすじ)

主人公の亀田美羽(石川瑠華)は、友だちのいない内気な女子大生。人気タレント一家の娘である同級生・兎草早織(井桁弘恵)が、うらやましくて仕方がない様子だ。ある日、臨時講師として八木圭佑(高橋雄祐※高ははしご高)が学校にやってくる。彼の爽やかな前髪に早織は夢中になっていくが、美羽はそんな姿を遠くから眺めていて……。一方、父と復しゅう代行業を営む戌井小柚(紅甘)は、その日暮らしを送る自身の人生に思いをめぐらせていた・・・

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物語は意味不明、サスペンスは中途半端

共同監督のせいか、3者個別シーンの表現が違うのでリズムが違う。

ラストシーンありきで、盛り上げるためにカードを並べてみた程度の

一切の感情を揺さぶられることは皆無で、虚無感しかない。

 

場内全シーンで無言(私含め2人なので当然だが)

観終わってシーン。

なんだこれは?

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これはドラマか?

これは映画なのか?(大スクリーンと音響がいるのか?)

つまりこれはエンタメではないのだ。

「我らの」(これは最上級の褒め形容詞)上田慎一郎がね。

一体どうしたんだろう。

 

大学の映研でもこんなドラマは作らない、いや作れはしない。

恥かしいからだ。

作り直しか、仲間内試写で話のつまみ程度だろう。

 

ましてや全国の不特定多数の映画ファンから1000円以上の金を取るなんて出来やしない。映画会社はやってはいけない。

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せめて公開にあたり、日本映画史上初の「面白くなかったた返金付き」にしなくてはいけなかった。よくも一般映画と同額にしたな!酷いな。

子供の頃から東宝でマンガ祭り、ゴジラマタンゴ若大将シリーズ・・散々見てきたのに、なんでこんな仕打ちを50過ぎて受けないといけないのか?

80年以上、日本のエンタメ界のリーディングカンパニーとして最大のスクリーン数を持つ矜持はないのか?

(よくも今年、一律に入場料を100円値上してみせたもんだ)

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それにしても上田慎一郎

「カメ止め」がピークでいいのか?

 

日本映画界久々のヒーロー登場で、名声を得て、映画演出のみならず脚本、CM、ドラマ、ゲームなどコラボしたい企業は引く手あまただろう。

 

今なら無理な企画も通る、予算もある、演出の自由度は広がる・・・

その中で、このありさま。

 

昨年エンタメ界一の「登り坂」が

わずか1年で「まさか」を超える真っ逆(さか)さま

 

本来の持ち味をもはや期待していいものかどうか・・・

次回までは見守りたい。

立て、慎一郎。

 

0点

映画「天気の子」新海誠の理解不能ドラマの極北。アオハルアニメはほんと困る。美しいだけで、共感の余地がどこにもない。

新海の前作「君の名は。」が2016年8月公開か・・・

歴代2位の興行成績でこれは確かに楽しめた。

 

スクリーンに広がる夏のイメージが、懐かしく美しく

都会の描写が精緻で機能美に溢れ、こちらも美しく

悪い人一人も出て来ないおとぎ話を最後まで貫ける凄さ。

 

アオハルアニメの体を取りながらも、自己犠牲と愛についての姿勢が

肯定的で、筋の通った、突き抜けた本物のクリエーターに出会った。

 

それから3年

天気を操れる子がいて・・・としか情報がない中

ご近所シネコンは5割の観客で期待の高さを十分に感じつつスタート。

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あらすじ)

高校1年生の夏、帆高は離島から逃げ出して東京に行くが、暮らしに困ってうさんくさいオカルト雑誌のライターの仕事を見つける。雨が降り続くある日、帆高は弟と二人で生活している陽菜という不思議な能力を持つ少女と出会う。祈るだけで晴れ間を呼べる「晴れ女」を巡る物語・・・

 

空、海、街、雨、雲、虹・・・何を描いても進化したな。

記憶の色を自在に操り、見たことのない忘れられない残像を残す。

世界最高峰の背景描写力顕在なり。

 

しかし物語は10代少年の超妄想についていけない。

 

「世界征服は可能か」と悩む力のある10代のナイーブさが嫌い。

主役2人がとにかく気持ち悪い。

共感する術がどこにもない。

 

止まない雨、晴れ女、ドロップアウトした少年・・・

物語を結びつける努力はしたものの、途中であきらめた。

 

平たく言うと、終盤以降何がなんだかさっぱりわからないのだ。

金払った客に頭使わせる・・・それが映画か?エンタメか?

 

 

新海誠の感性は大人として大丈夫か?

川村元気はプロデユーサーとして正気なのか? 

東宝はヒットさえすればいいのか?

 

大ヒットの次こそクリエーターの真価が問われる。

見事に空振りして見せた。

 

10点

 

 

映画「アルキメデスの大戦」は「ガリレオ」+「風立ちぬ」=「コスト削減プレゼン」と見せて、日本人しかわからないだろう滅びの美学にした山崎貴の奇襲。

原作漫画は読んでいないが、作者の三田紀房の「インベスターZ」は素晴らしい。

評論も、インタビュー、バラエティーでの発信も一貫していて信頼できる。

平たく言えば「綺麗ごとを言うな」

今回は東野圭吾ガリレオ」風数学者を軍人にして、戦争をとめる?

主役は菅田将暉。名前は知っているがドラマでも映画でも見たことがない。ジャニーズ系俳優にあるような虚飾な嫌な感じはしない。

監督はVFXの騎手山崎貴だし、戦争シーンのリアル、スピード感、カメラアングルの自由さが素晴らしい。隠れテーマは「戦艦大和」だし、見ない訳にはいかない。

いつもの巨大スーパーのいつもの席辺りに座った。

f:id:kudasai:20190730154017j:plain あらすじ)

昭和8年(1933年)、第2次世界大戦開戦前の日本。日本帝国海軍の上層部は世界に威厳を示すための超大型戦艦大和の建造に意欲を見せるが、海軍少将の山本五十六は今後の海戦には航空母艦の方が必要だと主張する。進言を無視する軍上層部の動きに危険を感じた山本は、天才数学者・櫂直(菅田将暉)を軍に招き入れる。その狙いは、彼の卓越した数学的能力をもって大和建造にかかる高額の費用を試算し、計画の裏でうごめく軍部の陰謀を暴くことだった・・・

 

冒頭に戦艦大和VSアメリ航空母艦戦闘機をいきなり見せてくる。

山崎VFXの真骨頂を映像で見せつける。

ここはクライマックスシーンと勝手に思っていたが・・・

40代以上なら史実を知っていると思うが、20代には太平洋戦争の結果がどうかも怪しい。まず「大和沈没」を印象ずける。

「うん、なにかあるのかな・・・」

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まず山本五十六連合艦隊司令長官登場。

60年代生まれの洋画ファンならなんたって「トア・トラ・トラ」の山村聡なのだ。サムライ三船敏郎や、モダン役所広司よりも知的な大人の魅力がたまらない。

あぶないデカ・舘ひろしはダンディを抑え、少し軽いが包容力、決断力のリーダーシップをまとっている。意外性の勝利。

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そして天才数学者菅田将暉が遊び人として山本と遭遇。

都会暮らしの、尖がった反逆児ぶりが実にいい。

終始セリフ廻しが明瞭で面白い。

相棒の柄本佑も巧い。兄弟そろって素晴らしい。

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ヒロインの浜辺美波だけがミスキャストのような感じ。クラシック美女だけど感情が伝わらない学芸会みたいだった。

山本の強引な引き抜きで海軍に入るが戦争映画の面影はない。機密情報を数学者が様々な抵抗にあいながら相棒と共に設計図を作っていく。が、プレゼン前20分ほど寝てしまった。(午前に小学生相手に勉強を見て、食後にヨガ、午後から庭仕事と忙しかった)

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「コスト削減プレゼン」を映画で見るのは初めてで、攻守が入れ替わりマウントの取り合いが確かに面白い。がスクリーンで見ることはないけどな・・・

と思いきや怪人俳優の田中泯がこの後、全部持っていく。

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「永遠のゼロ」の元戦友の右翼老人もそうだった。あの映画ではセリフと共に絵があったが、今回は菅田将暉とのセリフの応酬だけ。

ガリレオ」も、同じ殺人兵器を作った設計者「風立ちぬ」でさえ描かなかった「科学者の業」を説得力ある言葉でこちらは届く。

こういう展開になるからこそ、冒頭の「沈没」が生きてくる。

戦闘シーンではなく、日本人に生まれた数学者、科学者の心模様がテーマだったのだ。構成の勝利だな。

滅びへと旅立つ船の哀しみ、そうなるとわかった上で産み出した須田の見送る涙が、日本人として府に落ちる。

「異議なし」なのだ。

「是非に及ばず」なのだ。

 

日本人にしかわからない世界観だろうと思う。

驚いた。

 

「これでいいのだ」(by 赤塚不二夫の名言)

 

90点

 

 

 

映画「凪待ち」香取慎吾、大きい体、ギャンブル依存、斜め回転・・・クズ男再生のリアル。今年の邦画NO1

3連休最終日。

月曜日の東宝シネマズ、auユーザーは安いのだ。

「海の日」の祝日にわざわ白石和彌フィルムを見ないといけないのか。

それは白石だから。

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彼女がその名を知らない鳥たち」(2017年)で感心させられたのに

孤狼の血」(2018年)だけしか見ていない。

サニー/32」、「止められるか、俺たちを

ピエール滝の最終出演であろう「麻雀放浪記2020」3本をスルーしてしまった。

九州のど田舎では公開時期が短いのだ。

いつものご近所スーパーシネコンは、ちびっことファミリーでごった返す中、白石フィルムなんか、いかに元SMAPとはいえ閑古鳥と思いきや、20%も入ってる。

”これは何かある” いい予感の中スタート

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あらすじ)

 無為な毎日を送っていた木野本郁男は、ギャンブルから足を洗い、恋人・亜弓と彼女の娘・美波とともに亜弓の故郷である石巻に移り住むことに。

 亜弓の父・勝美は末期がんに冒されながらも漁師を続けており、近所に住む小野寺が世話を焼いていた。

 人懐っこい小野寺に誘われて飲みに出かけた郁男は、泥酔している中学教師・村上と出会う。彼は亜弓の元夫で、美波の父親だった。ある日、美波は亜弓と衝突して家を飛び出す。

 亜弓は夜になっても帰って来ない美波を心配してパニックに陥り、激しく罵られた郁男は彼女を車から降ろしてひとりで捜すよう突き放す。その夜遅く、亜弓は遺体となって発見される・・・

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西田尚美はいい感じに熟してきて香取慎吾の恋人役か。

最初の違和感が、じきにしっかり者の姉さんに変わる巧さ。

娘役の恒松祐里が10代少女のリアルだしてくる。

黒沢清監督「散歩する侵略者」のあの子か。

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印刷会社の同僚は底辺俳優やらせたら日本一の黒田大輔だが、今回も見事。

何といっても我が郷土福岡筑豊が産んだアンチスター、リリー・フランキーがまたまたまた変幻自在の素晴らしさで、全部持っていく。

妻を震災に、娘を殺人で失う父親役の吉澤健が最終版のキーマンで希望の鍵の受け渡し役に。

他にも競輪闇営業グループ、ヤクザとしか思えない刑事などなど、脇役のアンサンブルがドンピシャで久々に日本語のドラマのやりとりを堪能できた。

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香取の大きな体で、人は悪くないがギャンブル依存、決断しないクズ男、暴力を厭わないシーンがこれでもか、と見せてくれる。

香取の”斜め回転”が始まったら面白いことが始まる。

こんなクズ男のリアルと血のつながらない故の再生がスクリーンで目撃できる。

彼の映画、ドラマほとんど関心がなかったが、40超えて熟成してこその「味」出てきた。コメディ三谷じゃなくて、まさかのバイオレンス白石だったとはね。

今年見た日本映画でNO1

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95点