批評サムライ  ~映画・ドラマ・小説・エンタメ ★斬り捨て御免!~

責任が何でも曖昧なこの国で娯楽くらいは白黒ハッキリ!大作も小品もアダルトも興業収入も関係ない。超映画批評にない「上映途中の居眠り」が特技。シネマハスラー宇多丸氏、たまむすび町山智浩氏、シネマストリップ高橋ヨシキ氏を見習って公開初日最速レビューを心掛け評価は点数制。地方在住フォトグラファーがど田舎のシネコンでネタバレあり&あらすじ&見たまま感想ブログ

映画「ドライブ・マイ・カー」近年邦画の最大収穫。西島に重ね合わさる家族嵐と、瀬戸内の穏やかな海風とで胸いっぱいになる。

昨年末、家庭で大きな事件があった。

人生には「上り坂、下り阪、まさか」の3つの坂があると聞くが

この「まさか」が数か月の間に5回やってきた。

「エー、ウソだろう」の連発。

 

年が明けて嵐は去っていったが心象風景では

小舟に乗ってフラフラになっていた時この映画を見た。

染みたな。

こんなことで立ち止まってはいけない、とそう思った。

あらすじ)

 脚本家の妻を突然亡くした舞台俳優の家福。2年後、喪失感の拭いきれない彼は、演出を任された演劇祭に愛車で向かった先で、専属ドライバーのみさきに出会った。

 口数の少ない彼女が運転する愛車で過ごす時間の中で、家福は妻の残した秘密に向き合っていく・・

 

村上春樹の本はリトマス試験紙みたいに知識や感性を測られてくる。

「1Q84」とは相性が悪く、足掛け4年読んでる「騎士団長殺し」は傑作「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」のようなわかりやすくはないが主人公には共感できる。

一緒に暮らしてはいるが気持ちが相手にない感覚。

セックスはするがそれだけのこと。

西島が自分と重なってくる。

この映画は俺が主人公なのだと思った。

西島は舞台を愛し、自分は撮影を愛す。

瀬戸内パートが最高にいい。

ロケがこんなに見ごたえのある映画を久しぶりに見る。

ただの風景でなく、心象風景のレフ板となって西島を補足する。

素晴らしいとしか言えない。

死んだ妻、無口なドライバー、狂った役者、信じあった異国の夫婦

言葉が交じり合って、感情がせめぎ合って

逃げない境地へ向かう過程が描かれる。

言葉が出ない。

スクリーンで向かい合うに値する

驚くべき現代ドラマの最高にして最前線の1本。

100点しかありえない。