映画「フェイブルマンズ」勝手に「アメリカの夜」少年版を期待していたが・・・予想外にクリエーターの覚悟を突き付けられる。ラスト5分には痺れた。
3月中旬。マスク解禁となったいつものど田舎イオン系シネマ。
本日公開のアニメを観に子供たちも多く、どこも賑わっているがほとんどマスク。
みんながしてくれているので安心感が増す・・・これでいいのだ。
約50年映画を愛し、映画に愛された我らのスピルバーグ
Amazon primeで25年前の「プライベート・ライアン」
最近見直したが小さな画面ですら迫力が伝わってくる演出の力。
撮影監督ヤヌス・カミンスキーのルックの格調高さを堪能してきたばかり。
本物は画面サイズに関わらずスクリーンでもiPhoneでも伝わるね。
スピルバーグの子供時代の回想ドラマとなるとは聞いていたが
知っている情報といえば「ユダヤ教徒」、「8ミリ」くらいで
取柄のない少年がカメラと出会い、撮影仲間との友情、愛、裏切り、撮影手法の習得などを通じて成長していく「青春の門」的な物語ではないかと。・・・勝手に妄想。
「未知との遭遇」(1977)でリスペクトから出演したフランスの映画監督トリフォーには「アメリカの夜」という映画愛をめぐる傑作があるので、その少年版の期待もあった。
もう傑作の匂いしかない。
あらすじ)
初めて映画館を訪れて以来、映画に夢中になった少年サミー・フェイブルマンは、母親から8ミリカメラをプレゼントされる。
家族や仲間たちと過ごす日々のなか、人生の一瞬一瞬を探求し、夢を追い求めていくサミー。母親はそんな彼の夢を支えてくれるが、父親はその夢を単なる趣味としか見なさない。
サミーはそんな両親の間で葛藤しながら、さまざまな人々との出会いを通じて成長していく・・・
冒頭から懐かしシネマ上映で、50年代、娯楽の王様「映画」を家族で楽しむシーンでもう自分に置き換えてみたり。
母親役ミシェル・ウィリアムスはどんな映画でも存在感があってかつセクシーさを放つ天性の女優オーラの人。息子の味方として登場。
ここからカメラをプレゼントされ自分で家庭内サスペンスシーンを作りあげるとこなんて男の子がプラモデルで擬似社会を作るのに似て微笑ましい。
どこでカットするか、音を入れる、光を加える、角度は、スピードは・・・
出世作「激突」に通じるおもちゃを使った電車ムービーを完成させる。
学校ではユダヤ教いじめの対象となり、サバイバルの緊張感が伝わってくる。
イエスを殺した民の罪を責められる、日本で聞くいじめとは本質が違う怖さ。
これは毎日きついだろうな。
であればあれこそ、映画に熱中していきテクニックを重ねていくが・・・
故に愛する母の秘密を知るアイロニーと別れ。
卒業式映画の監督として復讐の仕方のえげつなさ。
フランス映画人の業界裏話と恋愛がフランス映画を作っている「アメリカの夜」のテイストは皆無だった。
彼の周りのいる市井の人たち(母、同級生、おじさetc)との出会いから
カメラを廻す怖さ(秘密さえも知ること)
演出によって学校のヒーローを断罪できる
物をつくる覚悟=安定した人生とは真逆な(棒に振る)覚悟が必要
これな映画に愛された男の苦い青春映画だった。
そしてラストシーン。
この人との対話5分で苦い青春が幕を閉じる。
映画、写真を撮る人は必見だ。
端的に言って、爽快で明瞭。
90点