映画「億男」大友啓史監督 佐藤健 高橋一生 何だこの表層主義は?川村元気原作のつまらなさを補えるのは「何者」の三浦大輔しかいなかったのにね。
最近のエンタメ界隈は出版社がいい書評のみをネットでコントロールしている気配が濃厚で当てにはならない。その証左の代表が数年前に川村元気の原作を書評の高評価から読んで見て、近年稀に見るつまらなさに驚いた。
たった一言で表せる「薄っぺらい」
だけど、NHKドラマ「ハゲタカ」での過不足ない大友啓史演出は好きだし、「何者」の佐藤健と「シン・ゴジラ」高橋一生も出てる。最低でも合格点だろう期待もあっていつものスーパー内シネコンに出かけてみた。
あらすじ)
「お金と幸せの答えを教えてあげよう」。宝くじで三億円を当てた図書館司書の一男は、大富豪となった親友・九十九のもとを訪ねる。だがその直後、九十九が三億円と共に失踪。ソクラテス、ドストエフスキー、福沢諭吉、ビル・ゲイツ。数々の偉人たちの言葉をくぐり抜け、一男のお金をめぐる三十日間の冒険が始まる・・・
庶民でこのあらすじに心惹かれない人は少ないだろう。年に何回からくじ買うし、他力本願の権化・神社の祈りの中に「クジ当選」は入っていない人は少なかろう。
がだ。冒頭のパーテイー部分からして唐突過ぎてこれが何かわからない。
誰が、何の目的で、どういう人を・・・
後でわかるのだが、こんな勿体ぶった意味不明の順番にする必然がない。
最近やたらとこの手法が多くてメンドクサイ。
親友・九十九の思惑なんだけど2人のキャラ立ちも中途半端だし、ここに集まる魑魅魍魎な人種を見せて作品世界にぐっと引き込ませないといけないのに、ブレーキをかけてしまっている。
原作者はこの東宝のプロデューサーなのに一体何を見ているのだろう?
佐藤健は「何者」の就活生から一転。妻と別居し、娘を愛しながらも、借金苦であえぐ個性のないリーダーシップをとれそうにない市井の人を好演している。
高橋一生は複雑な成功者と吃音の落語学生を巧く演じた。
黒木華は昭和の顔立ちからお母さん役が実にいい。マネーと別世界のマドンナとして終始ぶれない。
出色の出来は北村一輝。
他と生きてるリズムが違う味をだしている。
前作の映画「去年の冬、きみと別れ」(2018年3月公開)の編集長役が余りに酷い学芸会芝居にガッカリしたので、やれば出来るじゃないか。
こういう屈折した役所が立ち位置ではないかな。
相変わらずなのは藤原竜也
インチキ成功者のインチキ感がないんだな。
何をやっても響かない。
オーラのない役者でも演じたらどうだろうか?
この映画は、主人公が、九十九のかつての仲間で出会っていく中で、大切なものを探し当てるのだが、なぜ九十九を探すのかがさっぱりわからない。
そこがわからないので、この物語のキモであろう
九十九探し=自分探し=本当の幸せ探し
に帰結しないのだ。
何故大切な当選金を全額、彼に預けたのか?
基本の「キ」がないのだ。
学生時代のモロッコ旅行とかにスポットを当てたところで「それで何?」となる。
順番が間違ってる。共感のしようがない。
監督(原作者もかな)はわかっていない。
エンタメの作りも、青春というものも。
彼らは「何者」を何回見たのかな?
(感性ないと観てもわからないけどね)
原作者の川村は「何者」の企画・プロデュースではないか。
三浦大輔に演出させないと。
表層しか描いていない原作を力のない監督に任せた失敗作。
30点