映画「スリー・ビルボード」マーティン・マクドナー監督 フランシス・マクドーマンド、サム・ロックウェルの陰鬱演技合戦、着地点の予想不能感、地方都市住民のスケッチが愉しめる快作。祝アカデミー主演女優、助演男優賞!
アカデミー賞が今日発表になって2人同時受賞で(他人事なので賞に関心はない)この映画、先月見たのにブログ書き時間がなかったが思いだした。
あらすじ)
アメリカ、ミズーリ州のエビング。
ある日、道路沿いにメッセージが現れる 「レイプされて死亡」 「犯人逮捕はまだ?」 「なぜ?ウィロビー署長」
7ヶ月前に娘を殺された母・ミルドレッドが進展しない捜査に腹を立て広告だった。 ニュース番組のインタビューを受け、波紋はどんどんに広がってゆく。
警察署長、部下ディクソン、牧師、歯医者、元旦那、広告会社社長など巻き込んで思わぬ方向へ・・・
冒頭のさびれた看板シーンから、もうワクワクする。
「スター・ウォーズ」とか「なんとかマン」とかSFXハリウッドインチキ映画では決して味わえない。本物のドラマの香りね。
アメリカの小さな街に起こるであろうとんでもない騒動のイメージが広がる。
徐々にフランシス・マクドーマンドの奥に秘めた怒り、悲しみ、激しさが見えるんだな。「ファーゴ」も見事だった。決して所謂、美人女優ではないが、(見た目)普通の人(心の中は闇)を演じてNO1だな。素晴らしいな。
警察署長は、何考えてるかわからないエキセントリック俳優のウディ・ハレルソンが今作では泣かせる。
その部下、サム・ロックウェルの異常者ぶりにホレボレする。若きジャック・ニコルソンからセクシーさを奪った様なな。
娘を殺した犯人探しを縦軸に、母と地域社会との反目を横軸に、2人の警察官との奇妙な協力関係の3つどもえが、どう着地するのかまったくわからない。
殺人事件映画の傑作「ミシシッピ・バーニング」の様な人絹無視の捜査もなく、「ゾディアック」の様な知的興奮もなく・・・どのジャンルにも属さない人間ドラマだ。
気取った美男美女がでてこない渋い40、50代の名優たちの演技のアンサンブルがほんとに堪能できる。
こういう映画なら予算も大きくないので日本でも作れると思うんだが、まだ吉永小百合を昭和史の中で泣く母を演じさせて、観客を泣かせる「昭和30年代方式」が今でも残る悪しき邦画界はどうしたものか・・・
いいドラマは脚本と俳優だな~とつくずく思うな。
95点