映画「運び屋」我らがクリント・イーストウッド監督・主演の傑作!映画を愛し、映画に愛された最後のハリウッドスターにして孤高の映画詩人!頼むから新作を見せ続けて欲しい。アニキは世界に唯一無二なんだから。
またイーストウッド映画が見れる、しかも主演も兼ねて。
それだけで胸がいっぱい。
予告編から傑作の匂いがプンプンしていた。
ダータティハリーのイーストウッド=麻薬の運び屋が余りにマッチしないだけに興味深々で公開初日、いつもシネコン、いつもの場所で観賞した。
去年も「15時17分、パリ行き」を同じ劇場で見たのだ。
言っとくけど今年5月で89歳だよ。
「老醜」と言わば言え。
こっちも同じ数だけ歳をとる。
観客がおじさん・おばさんになっていくからこそ、90年代以降のイーストウッド現代劇(西部劇でも「許されざる者」は例外)の2度目鑑賞が身に染みるというものだ。
あらすじ)
家族と疎遠になり孤独に生きる90歳の男アール・ストーン。
花を売る事業に行き詰まり自宅を差し押さえられた時、車を運転するだけで多額の報酬が得られる仕事を持ちかけられる。だが、その仕事とはドラッグの「運び屋」だった。
仕事ぶりから麻薬組織の幹部から“おじいちゃん”を意味する“タタ”という愛称で呼ばれ、警察の捜査網をくぐり抜けるアールは、“伝説”の運び屋と呼ばれた。
気ままな運転で大量のドラッグを運び警察を翻弄、巨大麻薬組織からも一目置かれた史上最高齢の運び屋アールに、遂に警察の捜査の手が迫る。果たして男は逃げ切れるのか・・・・
映画は見事な起承転結を見せてくれる。
起)
冒頭から花と女性に囲まれてご機嫌なイーストウッドが写る。
もうこれだけで幸せだ。・・・グラントリノ以来
一匹狼が真骨頂だからこれはめったにないキャラだ。
楽しそう。
しかし・・・
ネット時代に取り残されて、人生の秋に経済的に堕ちていく。
家族との疎遠さもわかってくる。
このあたりの何気ないカットが無駄、無理、ムラなくてドラマのお手本。
ほんと職人技。
承)
孫の結婚式で出会った男ら運び屋の誘いが・・・
運ぶだけで大金が入る。友人や家族にも渡せる喜び。
犯罪と知りながらダークサイドに慣れ、再び「生きがい」=春を見出す老人。
運び屋車の空撮だけでロードムービーになってリズムが生まれる。
いいぞ、クリント。
もう共感してる自分がいる。
転)
ところが組織はリーダーが変わり監視が付き好き勝手させない。
警察はその存在をかぎつけ追ってくるサスペンスが入る。
共感してるのでいつ捕まるかドキドキする。
妻にも異変がおきて危機に。
麻薬マフィア、警察、家族の三角形の中で思い道理にいかなくてがんじがらめになっていく90歳なんてたぶん映画史にない。
結)は劇場で観ましょう。
対立、追っかけ、成功、失敗、脅し、友情、愛情、破綻etc
ドラマセオリー全部入りを過不足ない演出で切り取って
ハリウッド最高齢の主演男優として、人生の秋と春と冬を演じる。
ラストシーンに「これでいいのだ」と言うしかない。
ここ10年で10作の監督作品をリリースしている。
たぶん来年も新作を真っ先にスクリーンで見たい。
ドラマなんてこうやって作るんだぜ、と余裕で笑ってる感じがいい。
特撮も、怪獣も、ホラーも、エロスもいらない。
ハリウッド一でもアメリカ一でもなく
この人が世界の映画の頂点なんだと、今回も思う。
文句ない100点