傑作映画シリーズ100本|No 002 「ゲッタウェイ」サム・ペキンパー監督 スティーブ・マックウィーン、アリ・マクグロー暴力をスローモーションとストップモーションで描くセンス
映画館には行く時間はないので最近はBSをよく見る。
CMあるとどうしてもリズムが狂うのでNHKオンリー。
今日の昼はペキンパーの「ワイルドバンチ」(1969)ではないか。
もうオープニングタイトルのカッコ良さといったらね・・・詩的過ぎる。
The Wild Bunch (1/10) Movie CLIP - If They Move, Kill 'Em (1969) HD
カラーフィルムが突然止まり、モノクロになりテロップが入る。
もうそれだけでペキンパーだ。
映画のマジックにかかってしまう。
この3年後にマックウィーンと傑作を発表する。
アウトロー夫婦の激しい暴力と愛。
犯罪者カップルは「俺たちに明日はない」など沢山あるが
カッコ良さの次元が違う。
どんな俳優も70年代のマックウィーンとクリント・イーストウッド
には誰も敵わないだろうな、とすら思う。
ペキンパーはここでもオープニングで自在な編集をしてみせる。
ストップモーションでタイトルを入れるペキンパー風はもちろん
短い回想シーンで、刑務所暮らしで敵わない願望が切ない。
イーストウッドと同じくペキンパーは省略の天才なのだ。
とくに出所した直後の公園シーンは本当に素晴らしい。
日本映画のような多くのセルフはないし、またいらない。
傑作映画は基本サイレントなのだ。
ここでも願望を見せて、それを行う
いまこの時、公園にいるのだから。
それはオープニングの敵わない願望と対になっていて
自由を手に入れた喜びと恋人と泳げる幸せを見せる。
何気ないエピソードでも天才が撮ると
スクリーンは映画の至福にあふれる。
清純派から脱皮したアリ・マクグローの演技
琴線に触れるクインシー・ジョーンズの音楽
メキシコ系俳優が多く参加するバイオレンス映画特有のリアルな匂い
ハリウッドともアメリカン・ニューシネマとも違う
無国籍な感覚、ボーダレス感。
ペキンパー(写真右)はこれまでの挽歌(失われる者への哀愁)色を敢えて抑え
らしくないラストシーンを選んだ。
全編リアルな血まみれ映画が、不思議なラブストーリーに化学変化をおこし傑作になった。ペキンパーが詩人と呼ばれる訳だ。
バイオレンス映画と言えば何たってペキンパーだし
70年代のアメリカ映画を代表する一本だ。