映画「杉原千畝」 唐沢寿明、小雪
2016年最初の1本。
こういう映画は難しいと思うな、作る方は。
大まかな結論を観客は知っている。
多くの外国人を助け、後に外務省を追われる。
超善人で、日本人の誇り。
昭和を生きた実在の人物が映画のタイトルになるのは
偉大過ぎる。
あらすじ)
1935年、満洲国外交部勤務の杉原千畝(唐沢寿明)は高い語学力と情報網を武器に、ソ連との北満鉄道譲渡交渉を成立させた。ところがその後彼を警戒するソ連から入国を拒否され、念願の在モスクワ日本大使館への赴任を断念することになった杉原は、リトアニア・カウナスの日本領事館への勤務を命じられる。同地で情報を収集し激動のヨーロッパ情勢を日本に発信し続けていた中、第2次世界大戦が勃発し……
ヨーロッパが舞台なので、唐沢が仕事してる時は英語を喋る。からむのはヨーロッパの役者たち。
ソ連とナチスが悪者でからんでくるシーンなんか迫力があってスリルとサスペンス洋画だ。
前半は杉原の諜報員としての能力の高さを見せつける。
しかし、妻役の小雪の見せ場が全くない。
支えている感じが出てない。監督が日本女性をわかってないのか? ドライな感じの違和感。
雰囲気が変わってしまった。劣化とかじゃなくてミスキャストだろうな。
何が映画で嫌いかと言えば
例えばラスト近くに(起承転結の結にあたる)主人公が独白したり、泣いたり、感動したりの見せ場で
「さあ観客の皆さんも泣きましょう」的なBGMが流れ、尺をしっかりとったシーンの、情緒的な雰囲気の強制がたまらなく嫌だ。冗長さに耐えられない。
日本映画はとにかくこれが多い。吉永小百合が主役ならほぼ70%で、監督が山田洋次ならほぼ100%。
「シンドラーのリスト」ではスピルバーグでさえ冗長シーンで見るに忍びなかった。
この映画では、そこはなかったのでよかった。
一番肝心な、救った杉原と、救われたユダヤ人と家族がどう戦後生きていったかが語られていない。
偉大な人間と、そうでない軍人・外務官僚らとの思想の違いと過ちをもっと見せるべきだ。
その為には、戦後をきっちり描かないと。
外務省から批判され恵まれなかった杉原と、夢をつかんでいく世界へ散った人たちとの対比があった後に、奇跡的な邂逅があり杉原は祝福される。こうあって欲しかったな。
国境を越えるシリア難民が大テーマになる2016年。
75年前に、普遍的な人間愛を貫き通した人のドラマになるはずが惜しい。
60点