映画「シェイプ・オブ・ウォーター」ギレルモ・デル・トロ監督 サリー・ホーキンス アカデミー作品賞を獲った夜に見に行ったのだが・・・
アカデミー発表日の夜で、作品賞獲ったし、auマンデーは2人まで1100円なので久しぶりに彼女を連れて見に行った。
巨大スーパーイオンの内の東宝シネマズ。今回は人が多いだろうなと思ったら、閉店ガラガラ。
最後尾の真ん中で、見晴しはいいが、前席の下がり角度が低くて、カップルシートもない。肘掛がデカくて、あがらないので、変なこともできやしない。
いつものド田舎ユナイテッドシネマの素晴らしさがわかった。
デルトロ監督作品を見たことがない。
メキシコ人で、太ったオタク以外の情報はない。芦田愛菜が出た「パシフィック・リム」は知ってるがガンダム風は嫌いで見ないことにしている。
だけど、予告編で半漁人とのラブロマンスと、秘密兵器開発と50年代冷戦下サスペンスときたら興味はある・・・
あらすじ)
1962年、アメリカとソ連が対立していた冷戦時代。 イライザは一人で安アパートに暮らす中年女性。 隣人であり親友のジャイルズも独り身、パイ屋の男に想いを寄せながら日がな一日画家として絵を描いています。 イライザは幼い時に声帯に傷を負い、今もその傷痕は首筋にハッキリと残っていました。 彼女が深夜から朝にかけて働いている職場は、アメリカ政府の機密機関「航空宇宙研究センター」。 そこにはゼルダという仲良しの黒人の同僚がいます。彼女は声の出せないイライザの分まで喋るかのように、いつも夫の話ばかりをしています。 ある日、職場にアマゾンから極秘の生き物が運ばれてきました。警備として元軍人の大柄で横柄で差別的な男、ストリックランドもやって来ます。 堅く閉ざされた扉の向こうにいる生き物が気になるイライザは・・・
主演のサリー・ホーキンスは全く知らない。
と思っていたら、幼児虐待容疑濃厚でもう新作は作れないであろう天才ウディ・アレンの「ブルージャスミン」の妹役ではないか。世渡りが出来そうにないブルーカラーの蓮っ葉女性を見事に演じていた。
今回、声の出せない、恋人がいない、一人で生きている薄幸の面影が抜群にいい。
バスタブ内の秘め事はR15指定になってもこのシーンはキャラ設定に必然だ。
半漁人は出てくる前で、この映画は「ディズニーじゃないよ」宣言で、もしかしてエロ映画か?と違った期待も出てくる。
肉感的というよりも処女性を感じて、それが41歳とはね。
こういう展開はおじさん世代にはうれしい。
職場で最高機密の半漁人と出会うのだけど、興味から好きになる尺が早すぎる。もっとエピソードをつないだ中で劇的な何かがあった方が感情移入できる。
旧ソビエトスパイに協力する科学者や、痛めつける政府側キャラ設定がステレオタイプで、わかり易いのだけれど、冷戦下の厳しい現場で生きるヒシヒシ感が足りないな。
それに国家機密をこんな簡単に、ウソみたいに脱出できるかな?
「ミッション・インポッシブル」のスパイのプロチームならまだしもね・・
この変のリアリティの無さは目をつぶろう。
脱出させてからのアパート内の撮影は見事だな。
猫シーンはショックで倒れそうになった。
あれはいかんよ、カットだカット!
北野映画がブルーなら、この映画はグリーンだね。狂気の色。
人と半漁人の愛もある種の狂気だし、冷戦下の核戦争時代の狂気でもあるし。
夜の雨のシーンはさらに懐かし色で綺麗だ。
社会の片隅で、障害のある隠れるように一人で生きてきた女性が
職場で運命の出会い、恋をして、愛するが故に、別れないといけない。
彼氏はただ半漁人・・・
生まれ故郷に、自由な世界へ戻したい主人公が切ない。
こっちは「ロッキー」みたいに彼女を全力で応援したいんだけど最終コーナーの起伏がないので本当に残念。ラストが2人の世界になるだけにね。惜しいな。ドラマは脚本だな。
ヌードが多いのに作品賞を獲ったのは、ある種のメッセージなんだろうな。
壁を作ろうとするトランプ狂気の中、マイノリティ側がエンタメ作品としてささやかな爆弾を投下して壁を壊す抵抗なのだろう。
「大脱走」「カッコーの巣の上で」「ソーシャンクの空へ」
自由への渇望は映画のラストシーンとして最高に萌える。
これでいいのだ。
85点