映画「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」スピルバーグ監督 トム・ハンクス主演 公開初日に為政者とのペンの戦争と新聞記者の矜持を見たかったが、ストリープの、ストリープによる、ストリープのための映画を見せられて困った
スピルバーグの新作を公開初日に見るこれはワクワクする。
他の監督よりは見ている気になったが最期に見た作品は「インディジョーンズ クリスタル・スカルの王国」で2008なので10年ぶりだった。トム・ハンクス主演では、「プライベート・ライアン」以来なので20年ぶりか。
金曜日の夕暮れ、いつもの映画館、いつもの席で、いつもの混み具合で、いつものように幕が開く。
あらすじ)
1971年、ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国内には反戦の気運が高まっていた。国防総省はベトナム戦争について客観的に調査・分析する文書を作成していたが、戦争の長期化により、それは7000枚に及ぶ膨大な量に膨れあがっていた。
ある日、その文書が流出し、ニューヨーク・タイムズが内容の一部をスクープした。
ライバル紙のニューヨーク・タイムズに先を越され、ワシントン・ポストのトップでアメリカ主要新聞社史上初の女性発行人キャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)と編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)は、残りの文書を独自に入手し、全貌を公表しようと奔走する。真実を伝えたいという気持ちが彼らを駆り立てていた。
しかし、ニクソン大統領があらゆる手段で記事を差し止めようとするのは明らかだった。政府を敵に回してまで、本当に記事にするのか…報道の自由、信念を懸けた“決断”の時は近づいていた。
ベトナム戦争の現場から始まる。
戦場を描かせたら撮影のカミンスキー色は最高にリアルだね。
冒頭の掴みがスピルバーグのお約束で相変わらずのキレの良さ。
ここから機密文章暴露をニューヨークタイムスに先を越されるまでがプロローグ
トムハンクス登場から文章入手までが前半、入手から公表までがヤマ場で
エピローグが裁判の勝利と起承転結の見本だ。
新聞記者映画と言えば76年のアラン・J・パクラの「大統領の陰謀」で
記者が関係者に取材して廻る。足で稼ぐ姿が印象的だったが今回は調査報道。
動きがない。記者目線でミステリーを明らかにしていく過程の面白さがない。
報道によって明らかになった真実の提示が余りに少ないし丁寧さに欠く。
代わりに女社長の人間関係の動きがあるがこれが面白くないのだ。
自殺した主人の代わりに主婦から社長となった苦労を
娘を引っ張り出して名女優に語らせる。
おいおい、「吉永小百合映画」かよ。
お涙頂戴になった途端に興ざめだよ。
政府側のドタバタを見せるとか、記者側との軋轢とか
報道による為政者へのダメージと意義が観客に今ひとつ伝わらない。
随所に報道の自由を思わせる気の利いたセリフはあるが、ハリウッドお得の法廷闘争はメリハリが出来るか、頭の体操に無理やり参加させられドラマを矮小化してしまう。
ストリープの、ストリープによる、ストリープのための映画になってしまい、われらのトム・ハンクスはただの引き立て役に終始。
ホワイトハウスとのハラハラする火花を背景に
記者の矜持を見れると勝手に思った私がバカだった・・・
70点