映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」公開初日最速レビュー!ケネス・ロナーガン監督 ケイシー・アフレック ミシェル・ウィリアムズ 登場する誰もが、少年も大人も、うつむき、うなだれ、傷ついている海辺の地方都市スケッチの謎
公開前の「傑作」の呼び声高く、大いに期待していた。
公開初日の18時半、九州のど田舎シネコンは見事に10人弱。
この映画館の魅力は、アート系がいつも10人弱で見れるので自由に座席移動ができること。
このポスターだけで、昨年見た映画ベスト10に入る
「オーバーフェンス」 監督:山下敦弘に通じる何かを感じていた。
社会と折り合いのつかない男の再生物語・・・そんな感じ。
ケイシー・アフレックがオスカーの主演男優賞を獲ったことはどうでもいい。
何といってもミシェル・ウィリアムズが出ている。
不幸な労働階級のアメリカ女性を演じさせるとピカ一だ。
ショートカットがその影も含めてたまらなくクールだ。
マリリンモンロー演じても圧倒的な存在感で素晴らしかった。
あらすじ)
アメリカ・ボストン郊外でアパートの便利屋として働くリー・チャンドラーのもとに、ある日一本の電話が入る。故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーにいる兄のジョーが倒れたという知らせだった。
リーは車を飛ばして病院に到着するが、兄ジョーは1時間前に息を引き取っていた。リーは、冷たくなった兄の遺体を抱きしめお別れをすると、医師や友人ジョージと共に今後の相談をした。
兄の息子で、リーにとっては甥にあたるパトリックにも父の死を知らせねばならない。ホッケーの練習試合をしているパトリックを迎えに行くため、リーは町へ向かう。
主演するケイシー・アフレックの圧倒的な薄幸の何でも屋の仕事でもオーラの無さ。
コミュニケーションの欠如、興奮すると何かにつけてFU●Kを連発する、もちろん手も早い粗暴感・・・
マイナスオーラは終始一貫して存在感を維持する。
こんなアメリカンアンチヒーローは初めて見る。
場面は現在の時間軸に過去シーンを短いカットでどんどん入れてくる。
その強引さが潔い。
2003年とかテロップでもあるとわかりやすいのだが・・一切ない。
その過去シーンは複数あるので最初はとまどうね。
ちょっとでもトイレに行ってると大事な伏線を見逃してしまう。
兄に死と残された息子の養育を巡って、故郷に帰ってくる粗暴な弟とその関係者がだれも皆、傷をかかえ、うつむいている。
笑うシーンは一つもない。
映画館は不思議な緊張感に包まれる。
もはやアメリカ映画のバカバカしさは一切ない。
労働階級の悲劇でもない。
余りに大きな傷を抱えた男の心象風景を見せる。
それに付き合わされるので所謂カタルシスはない。
元気な大人も映画の後は鬱になりそうな
傷ついた夫婦のかみ合わない心情の吐露
なんとリアルなんだろう。
希望も「き」の字もありゃしない。
エンドマークが、この鬱状態が終わる解放感で満たされる。
これまで見たきた映画の文法にはない
60年代末に「俺たちに明日はない」に始まったアメリカンニューシネマに匹敵する、ニューウェーブの予感がする。
ハッピーエンドでもバッドエンドでもない。
リアルエンドというか・・・
観客に媚びない、一切合切。
これでいい。
70点(人によって生涯最高の1本であっても不思議ではないかも)