樋口毅宏論、鞘から抜かれた切れない刀の趣を楽しむ稀有な作家「愛される資格」「日本のセックス」「民宿雪国」
久しぶりに樋口を読んだ。
病みやすいし楽しかった。
この人の文章は素直だから好きだ。
レトリック、修飾、メタファーとか基本ない。
欲望に正直になった主人公を応援せずにはいられない。
抑圧された小市民の復讐が彼に通底するテーマだね。
話はいつもシンプルだ。
参加する社会や組織からの仕打ちがある。
リベンジを考え、実行する。
大藪晴彦作品にある、計画とか、企てがこの人にはない。
スッポリ抜けてる。
読者は妄想したいのだ。
その企て、果たして成功するのか・・
どう着地するのか・・・
今後に期待しよう。
スワッピングの実態をここまで書いたのは見たことがない。
私の経験からも納得できる。
エロ本編集部員と妻とのバトルがグリーン文庫作家よりナマナマしく、リアリティを大いに感じる。
彼のエロ本編集者経験が存分に生きている。
,
都会の隅で(豊島区は真ん中だけど)行われる不思議な家族物語
別の小世界を作ってみせてくれた。
暴力の極北だね。
後味は・・・それぞれの価値観だよね。
始めた読んだのがコレ
この面白さはなかなか伝えられない。
ジャンル別け不能で不要。
欲望に忠実な主人公と最小限の登場人物たちが織りなす世界が確かにあって、そこを見せてくれる。
文章が幼稚とか、稚拙とか、子供っぽいとか、女性蔑視とか批判はあるだろう。
でもね。
一日働いて、疲れて寝る間の束の間の30分の読書タイムにはこのくらいがいいのだ。
ドストエフスキーとかトルストイじゃ寝れないし、漱石もきついよ。
作品に出来、不出来のふり幅は大きい。
でもいつも刀が鞘から抜かれている潔さは評価したい。
切れる、切れないはまた別の話。
宮部みゆき、西加奈子、嫌ミスの女王とか女性作家の活躍が話題だけど、樋口は独立峰の立ち位置で男の欲望と復讐を書いてくれる。