批評サムライ  ~映画・ドラマ・小説・エンタメ ★斬り捨て御免!~

責任が何でも曖昧なこの国で娯楽くらいは白黒ハッキリ!大作も小品もアダルトも興業収入も関係ない。超映画批評にない「上映途中の居眠り」が特技。シネマハスラー宇多丸氏、たまむすび町山智浩氏、シネマストリップ高橋ヨシキ氏を見習って公開初日最速レビューを心掛け評価は点数制。地方在住フォトグラファーがど田舎のシネコンでネタバレあり&あらすじ&見たまま感想ブログ

映画「ブラック・クランズマン」スパイク・リー監督のジャンル別け不能で不要なシリアスコメディの誕生。動画全部入りの何でもあり感が実に新鮮。

所謂トランプ(批判)映画が作られるハリウッドの中で、最も尖がったドラマの予感がした。

カンヌ映画祭グランプリとかはどうでもよろしい。

70年代、KKK vs 警察、黒人差別、潜入捜査・・と来たら、もうあらゆる場所から「対立」の火花がない方がどうかしている。

公開初日、いつものど田舎シネコン、いつもの席で、客席40%埋まってスタートした。

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あらすじ)

 70年代半ば、アメリカ・コロラド州コロラドスプリングスの警察署でロン・ストールワース(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は初の黒人刑事として採用される。署内の白人刑事から冷遇されるも捜査に燃えるロンは、情報部に配属されると、新聞広告に掲載されていた過激な白人至上主義団体KKKクー・クラックス・クラン>のメンバー募集に電話をかけた。

 自ら黒人でありながら電話で徹底的に黒人差別発言を繰り返し、入会の面接まで進んでしまう。騒然とする所内の一同が思うことはひとつ。 KKKに黒人がどうやって会うんだ? そこで同僚の白人刑事フリップ・ジマーマン(アダム・ドライバー)に白羽の矢が立つ。

 電話はロン、KKKとの直接対面はフリップが担当し、二人で一人の人物を演じることに。任務は過激派団体KKKの内部調査と行動を見張ること。果たして、型破りな刑事コンビは大胆不敵な潜入捜査を成し遂げることができるのか―!?

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物語読んだだけで、数か月前に見た映画「グリーンブック」と比較すると、もっとハチャメチャでサスペンスがあって面白そうだ。「ブック」は真正面のストレートが多くて、品行方正に過ぎた。抜けがなくて酸欠になりそうだった。

一方「ブラック」は「風と共に去りぬ」差別映画の王者「国民の創生」を見せたり、過去の実写、現代のデモ、トランプをぶち込んだ「動画全部入り」で面白い。

監督スパイク・リーのスタイルなんだろうが新鮮で好きだな。

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ジョン・デヴィッド・ワシントンが、あのカッコいいディンゼル・ワシントンの息子とはね。アダム・ドライバーを「スターウォーズ」以外では初めて見た。どっちも自然で好感。

ファッションも服装も音楽も憧れのアメリカ70年代を感じられる。

一番の貢献は、誰が見ても頭悪そうなKKK連中が怖さよりもコメディ担当で笑える。

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70年代の地方を描きながら、表現手法が斬新で21世紀らしさ満載だった。マイケル・ムーアスパイク・リーはいつも目が離せない。

資金がなくても手法で魅せる実証をスクリーンずっとやってくれている。

日本の監督たちも続いて欲しい。

 

90点

 

 

映画「空母いぶき」佐藤浩市発言よりも情緒的な脚本の方が問題。建前国家にエンタメ界からの一石は評価大。

やっと見れた今年最初で、令和最初の日本映画は

佐藤浩市発言で公開前から話題の「空母いぶき」

しかし、百田直樹は作品は素晴らしい(「夢を売る男」は平成に読んだ本で最高だった)のに、見てもいない映画について発言しなくていいのに、自分を小っちゃく見せて情けない。

どうでもいい話だけど

20数年前、帰郷する間の半年だけ、東京でドラマのエキストラをやっていて、フジのドラマで佐藤浩市渋谷ビデオスタジオで共演した。バーのシーンで女性と2人連れの客の設定で近くで見ていて、世の中こんなカッコいい男がいるのか?と率直に思った。立ち姿が色気あり過ぎる。

さて公開3日目、月曜日の昼下がり、ご近所スーパーシネコンはシニア世代が多く20%の稼働率でスタート

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あらすじ)

20XX年。日本の最南端沖で起こった国籍不明の軍事勢力による突然の発砲。日本の領土の一部が占領され、海保隊員が拘束された。

未曾有の緊張が走る中、政府は初の航空機搭載型護衛艦「いぶき」を中心とする護衛隊群を現場に向かわせる。

日本は、かつて経験したことのない1日を迎えることになる・・・

日本にはないことになっている「空母」(実際は「いずも」、「かが」が改装中)

をスクリーンで見せる姿勢に1本!

島を獲りにきた外国軍隊を見せる勇気に1本!

日本映画界が憲法施行から70数年目にやっとたどり着いたリアルに目を向けた瞬間に立ち会えた。

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日本国憲法 前文にある

・・・平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。 とある。

実際は

ロシア・・北方領土を不法占拠(日ソ中立条約を一方的に破棄)

韓国・・・竹島を不法占拠

中国・・・尖閣諸島を実効支配しようとする

北朝鮮・・日本人を日本国内から拉致し帰還させない

ならず者周辺国に囲まれて「平和を愛する諸国民」とか、ファンタジー憲法との乖離を、学校でも一切習わない、国会でも議論しない。

米軍基地と核兵器に守られた「お花畑国」にあって、エンタメとはいえスクリーンで一石を投じた姿勢を評価したい。

原作者「かわぐちかいじ」は、自衛隊シリーズで一貫した「本音と建前」批判の姿勢に最大の敬意を表したい。

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冒頭、不特定子供たちの集団が・・・あー嫌な予感がする。

違うな・・・・と。

空母が主役のこの映画は「シン・ゴジラ」系の第1作目であると勝手に思っていた。

ゴジラ」はメタファー

主役は日本の統治機構と、唯一の暴力装置自衛隊であり

閣議、関係閣僚会議、記者会見など為政者・官僚の発言と行動だった。

庵野監督が膨大なセリフとテロップを駆使して

市井の人々の表情を敢えて一切描かない日本映画革命を成功させた。

 

今回は、相手の思惑がわからない(=コミュニケーションがとれない)「海外某国」を「ゴジラ」に見立て、指揮系統の最上位官邸や自衛隊が、「シン・ゴジラ」では踏み込まなかった「憲法」や「専守防衛」「武力」など、為政者が時の流れに合わせて解釈と言う名の屁理屈を重ね、憲法の矛盾、本音と建前の偽善を描くものと思い込んでいた。

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だが違った。

「日本は戦争をしない」主義者の佐藤総理の苦悩は、会議中のセリフによってのみ表現される。その前段の本音と建前の偽善システムが描かれないので、カッコのいい言葉だけが宙を舞う。

(第1次の安倍総理に病気を揶揄した、とかそんな感じは皆無)

 

 空母側は敵と火花散っているが、官邸は意見の違いがあっても火花が散らない。

苦しそうな佐藤総理がただうろうろしているだけ。

 

それに比べて西島艦長の存在感は見事だった。

どういうシチュエーションでも口角を上げたまま、まるでナレーションの様なセリフ廻しで現場を指揮し支配する。

海自の中でも心技体傑出したリーダー像を見せてくれる。

こんなに上手い役者だったとはね。

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但し、大阪弁艦長のコントセリフは楽しいがリアリティを欠いたし、コンビニ店長と店員の下りはドラマのリズムを大きく崩してくれた。

唯一の市井の人の暮らしを見せて「平和が大切」としたかったのだろうが双方のテンションが違い過ぎて相乗効果が逆に出てる。

いつもの映画制作委員会形式の為か、複数クライアントの合意形成の為、情緒に寄ってしまったのだろうか?

 

ここは「シン・ゴジラ」風に振り切っていかないといけない。

庶民は描かないんだ、と肝をすえないと。

 

70年以上の偽善の積み重ねが生んだ、何でも先送り主義の末に

それを見越した諸外国勢力との衝突の最前線と、為政者を切り取るんだ、と。

何故そこを描かないんだ!

 

せっかくの「かわぐちかいじ」の長年の問題提起と役者の演技を脚本は生かし切れなかった。原作者からすると無念だろうな。

 

振り切れない恨みで80点

それでも評価はしたい。

1歩は進んだ。

映画「記者たち 衝撃と畏怖の真実」カッコつけたタイトルと監督が一番カッコいい、ジャーナリストたちの表層を描いた置きにいった凡作

映画では「新聞記者もの」ジャンルが確実にあって出来るだけ見るようにしている。

70年代「大統領の陰謀」のレッドフォード、ホフマンがカッコ良かったから。
2人のファッション、話し方、罠の張り方、言葉のひっかけ方・・・「絶対将来記者になってやる」と。(夢は破れたが・・)

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サスペンス寄り記者映画には当たり外れがあるが、実話になると大きく外れがない。

この映画もそうなるものと思っていた。

 

あらすじ)

2002年、ジョージ・W・ブッシュ大統領は「大量破壊兵器保持」を理由に、イラク侵攻に踏み切ろうとしていた。 新聞社ナイト・リッダーのワシントン支局長ジョン・ウォルコットロブ・ライナー)は部下のジョナサン・ランデー(ウディ・ハレルソン)、ウォーレン・ストロベル(ジェームズ・マースデン)、そして元従軍記者でジャーナリストのジョー・ギャロウェイ(トミー・リー・ジョーンズ)に取材を指示、しかし破壊兵器の証拠は見つからず、やがて政府の捏造、情報操作である事を突き止めた・・・

 

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俳優陣は最近の大活躍の元祖キレ芸人ウディ・ハレルソン

お久しぶりのジェシカ・ビールはロマンス担当で、クールビューティーがいるとドラマは楽しい。

が、ミラ・ジョヴォヴィッチにいたっては何の為にいるのかわからない。

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追いかける記者2人パターンは「大統領の陰謀」と同じだけど、どう見ても支局長役のロブ・ライナー監督の発言と動きが目立って主役なのだ。

大物記者役トミー・リー・ジョーンズも裏回しの活躍もなく、唯一報道した我らによってアメリカの民主主義の伝統は守られた、と。

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悪しきセリフ主張型ドラマになり下がり、バットの芯にあたらずファールチップで無得点で9回終わってしまい、眠い置きに行ったゲームを見せられポカーン。

 

「衝撃と畏怖の真実」・・・宣伝部はよくもこんなタイトルを付けたもんだ。

そのセンスに衝撃と畏怖を受けた。

 

50点

映画「バイス」大統領は副大統領に操られ、副大統領は妻に操られながらも家族を大切にする一方、青春をこじらせて政治でチャンピオンになった陰気くさいロッキー映画。新感覚コメディの秀作

ダークナイトバットマンターミネーター4のイケメン俳優クリスチャン・ベールがデブ・ハゲ・小心の副大統領を演じる。

予告編では、ブッシュとの掛け合いのコメディ度が最高に面白そうで公開初日にいつものど田舎シネコンで拝見。

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あらすじ)

60年代半ば、酒癖の悪い電気工ディック・チェイニー(クリスチャン・ベイル)は、恋人のリン(エイミー・アダムス)に激怒され、彼女を失望させないことを誓う。

その後、下院議員のドナルド・ラムズフェルド(スティーヴ・カレル)のもとで働きながら政治のイロハを学んだチェイニーは、権力の中に自分の居場所を見いだす。

そして頭角を現し大統領首席補佐官、国防長官になったチェイニーは、ジョージ・W・ブッシュ(サム・ロックウェル)政権で副大統領に就任する・・・

 

よく存命する実在の人物をエンタメ映画でこき下ろすとは羨ましい。

(日本版バイスなら、ぜひ副総理・麻生太郎物語でコケにして欲しい。同じ福岡県人としてほんと恥ずかしい)

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それにしてもクリスチャン・ベールは凄いな。

ゴッドファーザーマーロン・ブランド級だけど彼は青年期は演じてないのでそれ以上だ。髪の毛から足先までなりきった。

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これまで見てきたハリウッドコメディは、マッチョで単細胞が多かったが・・・

小心で、何考えているかわからない、心臓に爆弾を持つ、子供思いの屈折男の喜怒哀楽、悲哀がビンビン伝わってくる。太宰治小説の登場人物みたい。

細かいアメリカ政治は知らないが、副大統領になった2000年以降はテロとの戦いの時期なのでここ20年の現代史(=自分史)の内幕なので面白くない訳がない。

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妻役が大好きなエイミー・アダムス

野心旺盛、回転が速く、夫より社交性があって、話がうまく、華がある

明らかに夫よりも政治家向きな秀才妻をまんま演じる。

ここ数年、彼女はハズレがない。

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ジョージ・W・ブッシュ役のサム・ロックウェルは傑作

こっちのコメディ度の方が高い。

何にも考えていない操られ男として。

2017年「スリー・ビルボード」のメンヘラ警官から大統領まで。

こういう曲者の脇がこの映画は多くて素晴らしい。

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このドラマは、愛国者である軍人の事故によって心臓移植に成功した”ハートのない”男ディック・チェイニーの政治版ロッキーだ。

「ロッキー」は万人に支持されるが、チェイニーは彼の野心の成就によって、武器製造企業が儲け、多くのイラク市民と軍人が死んだ。

辞めて10年たってその内幕がコメディ映画として明らかになる。

映画と政治がつなっがっているアメリカ。

ここは素晴らしい。

 

80点

 

 

 

映画「THE GUILTY/ギルティ」驚異の満足度100%の宣伝文句に乗せられるも、「密室」過ぎて酸素も感動も不足に。

3月公開(九州・福岡)はいつもハリウッドバカ作品と、邦画のお子様映画が多い中、ヨーロッパ系サスペンスとは珍しい。

「驚異の満足度100%」これは凄そうだ。

大好きな北欧デンマーク映画だし、緊急事態対応映画は時間軸が一通でわかり易い。

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あらすじ)

 アスガー・ホルム(ヤコブ・セーダーグレン)はある事件をきっかけに警察官として一線を退き、緊急通報司令室オペレーターとして、交通事故による緊急搬送を遠隔手配するなど些細な事件に応対する日々を過ごす。

 ある日、今まさに誘拐されているという女性からの通報を受ける。車の発車音、女性の怯える声、犯人の息遣いなど、微かに聞こえる音だけを手がかりに、アスガーは事件を解決することができるのか・・・

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特筆すべきはこの映画のシーンは3つしかない。

同一ビルのオペレーター室、その奥の個室、および廊下

 

家族も恋人も出てこないので職場の同僚しか現れない。

同僚とのコミュニケーションが無いし、関係は悪い。

ジョークもなければ、回想も何もない。

時間軸は一通なのでわかりやすい。

この潔さ。

電話の声だけが手掛かりで犯罪を防ぐ。

映画は会話だけを映すのでアップばかり。

会話内の犯罪を縦糸に、自分の今の状況が終盤に絡んでくる。

イデアの勝利。

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だけど、全編このトーンだと物足りない。

「抜けがない」のだ。

抜けないドラマを作ったと言われれば仕方ない。

ドラマには何らかの「青空」が欲しい。

1シチュエーション映画としては革新的かも知れないが「手法」は評価されても

感動にはならない。

 

60点

 

ただし、この手の映画が世界的にどんどん増えていく予感はある。

 

SONYのα7R3などあれば大スクリーンのクオリティには十分だ。

イデアさえあれば、小人数、セットなしのオールロケか室内で1か月で撮影完了。Macbookで編集、音入れなど数か月で終わる。

予算は100万以内、出来上がってからドラマをテレビ局や映画会社に売る。

 

「令和」はミラーレス一眼の本格的な普及から

静止画撮って「インスタ」アップよりも、その圧倒的な軽さから

動画撮影で誰でも個人映画作家となり世界中で「カメラを止めるな」的な作品が見れる。

映画「運び屋」我らがクリント・イーストウッド監督・主演の傑作!映画を愛し、映画に愛された最後のハリウッドスターにして孤高の映画詩人!頼むから新作を見せ続けて欲しい。アニキは世界に唯一無二なんだから。

またイーストウッド映画が見れる、しかも主演も兼ねて。

それだけで胸がいっぱい。

予告編から傑作の匂いがプンプンしていた。

ダータティハリーのイーストウッド=麻薬の運び屋が余りにマッチしないだけに興味深々で公開初日、いつもシネコン、いつもの場所で観賞した。

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去年も「15時17分、パリ行き」を同じ劇場で見たのだ。

言っとくけど今年5月で89歳だよ。

「老醜」と言わば言え。

こっちも同じ数だけ歳をとる。

観客がおじさん・おばさんになっていくからこそ、90年代以降のイーストウッド現代劇(西部劇でも「許されざる者」は例外)の2度目鑑賞が身に染みるというものだ。

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あらすじ)

家族と疎遠になり孤独に生きる90歳の男アール・ストーン。

花を売る事業に行き詰まり自宅を差し押さえられた時、車を運転するだけで多額の報酬が得られる仕事を持ちかけられる。だが、その仕事とはドラッグの「運び屋」だった。

仕事ぶりから麻薬組織の幹部から“おじいちゃん”を意味する“タタ”という愛称で呼ばれ、警察の捜査網をくぐり抜けるアールは、“伝説”の運び屋と呼ばれた。

気ままな運転で大量のドラッグを運び警察を翻弄、巨大麻薬組織からも一目置かれた史上最高齢の運び屋アールに、遂に警察の捜査の手が迫る。果たして男は逃げ切れるのか・・・・

 

映画は見事な起承転結を見せてくれる。

起)

冒頭から花と女性に囲まれてご機嫌なイーストウッドが写る。

もうこれだけで幸せだ。・・・グラントリノ以来

一匹狼が真骨頂だからこれはめったにないキャラだ。

楽しそう。

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しかし・・・

ネット時代に取り残されて、人生の秋に経済的に堕ちていく。

家族との疎遠さもわかってくる。

このあたりの何気ないカットが無駄、無理、ムラなくてドラマのお手本。

ほんと職人技。

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承)

孫の結婚式で出会った男ら運び屋の誘いが・・・

運ぶだけで大金が入る。友人や家族にも渡せる喜び。

犯罪と知りながらダークサイドに慣れ、再び「生きがい」=春を見出す老人。

運び屋車の空撮だけでロードムービーになってリズムが生まれる。

いいぞ、クリント。

もう共感してる自分がいる。

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転)

ところが組織はリーダーが変わり監視が付き好き勝手させない。

警察はその存在をかぎつけ追ってくるサスペンスが入る。

共感してるのでいつ捕まるかドキドキする。

妻にも異変がおきて危機に。

麻薬マフィア、警察、家族の三角形の中で思い道理にいかなくてがんじがらめになっていく90歳なんてたぶん映画史にない。

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結)は劇場で観ましょう。

 

対立、追っかけ、成功、失敗、脅し、友情、愛情、破綻etc

ドラマセオリー全部入りを過不足ない演出で切り取って

ハリウッド最高齢の主演男優として、人生の秋と春と冬を演じる。

ラストシーンに「これでいいのだ」と言うしかない。

 

ここ10年で10作の監督作品をリリースしている。

たぶん来年も新作を真っ先にスクリーンで見たい。

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ドラマなんてこうやって作るんだぜ、と余裕で笑ってる感じがいい。

 

特撮も、怪獣も、ホラーも、エロスもいらない。

ハリウッド一でもアメリカ一でもなく

この人が世界の映画の頂点なんだと、今回も思う。

 

文句ない100点

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映画「グリーンブック」60年代、アメリカ南部、人種差別、ロードムービー 好きな要素全部入りで堪能した。

前情報からすると、60年代、アメリカ南部、人種差別、ロードムービーetc

 

70~80年代に青春を味わった者としては過去の名作がどうしたって蘇る。

イージーライダー」「ハリーとトント」

ストレンジャー・ザン・パラダイス」「パリ・テキサス

ミシシッピー・バーニング」「スケアクロー」

それと我らがイーストウッド映画の数々・・・

どうしたって心の琴線刺激映画に間違いないだろ。

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アカデミー賞を獲ったから見に行ったんではなくて、このポスターの奥深さ。

車のボディもシートも。2人のシャツも、空の色だってこのブルー

2人の肌の色が違うだけ・・・

わかってるな、この監督。

 

いつものど田舎シネコンに7割の入りで、いつもの席についた。

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ガサツな運転手&ボディガードのイタリア系が憎めない。

どう見たって教養が低いか無い。

ガテン商売、家族思い、よく笑い、よく食べる。

70年代のアンチヒーローの一人、ジーン・ハックマン風で

共感が集まる役者を選んだもんだ。

 

対する雇い主のピアニストの

教養の塊りで、好き嫌いハッキリして、しかしミステリアスで

何か深刻な問題を抱えている感がわかってくる。

この道中のやりとりが何とも愉しい。

彼らと一緒に旅してるリズムが確かにある。

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運転手が各地で出くわす黒人であるが故のトラブルを、いろんな手を使って守っていく時のサバキ方、世渡りの巧さがわかりやすい見せ場。

一方でピアニストは旅先の事件の合間に少しずつ運転手に、被差別のつらさを吐露していく。

その心の開きが最終版にハッキリ見えてくる。

旅はかならず終わる。

運転手は愛する妻や家族のもとに。

ピアニストは誰もいない部屋へ。

ラストシーンはお約束だな、あれがいい。

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ロードムービーは本当にいい。

100点