映画「アイ・イン・ザ・スカイ」 監督ギャビン・フッド ヘレン・ミレン、アラン・リックマン
最近、テレビ見てるとドラマでもドキュメンタリーでもいろんなシーンで俯瞰シーンがどんどん増えている。(特にNHK)
動画も静止画もNHK放送ならクオリティは高い。高画質でパンフォーカスでピントがあって解像度も4KでもOKだろう。
元はと言えばドローンは軍事開発なので、民間転用してこの高機能ということは、軍用はさぞ凄いとは想像するが、見ることは軍人か政府高官以外はない。この映画はそこを見せてくれる。
あらすじ)
イギリス軍の諜報機関で働くキャサリン・パウエル大佐は国防相のベンソン中将と協力し、ナイロビ上空を飛ぶドローンを駆使してロンドンから英米合同軍事作戦を指揮している。
自爆テロ計画の存在を突き止めた彼らは、アメリカ国内の米軍基地にいるドローン・パイロットのスティーブに攻撃命令を下すが、殺傷圏内に幼い少女がいることが判明。
キャサリンは、少女を犠牲にしてでもテロリスト殺害を優先させようとするが・・・
アフリカのテロリストを、虫型ドローンと上空ミサイル搭載ドロ―ンでテロリストを狙う。現地、英国の作戦指揮、指揮命令部署、アメリカの実行部隊の画面が頻繁に切り替わる。テロの時代の戦争の運営をはじめて理解できる。
アフリカにいるテロリスト攻撃を、アメリカの空軍基地内でボタンを押す訳だから軍人は誰一人死なない。
地球の反対側にいるので民間人が倒れても救助はそもそも出来ない。
周囲の死亡確率を表面上50%を切ることで攻撃承認させようとする主人公
少女を犠牲にして攻撃許可を出したくない、責任を逃げたい大臣たち
現場をモニターで見ながら少女を発見し苦悩するオペレーター
ミサイル殺害を巡る法的なやり取りと、現場に少女が現れてどう助けるか、助けないのかのサスペンスが絡んで、倫理上の問題を提起する。
遠いアフリカのハイテク戦争に日本は無関係という訳には、人道が入り込めば参加せざるを得ない。映画が終わるまでは、暗闇の中「あなたならどうする?」と問われる。
主人公のヘレン・ミレンは貫禄勝ちなんだけど、キャラとの年齢差が高すぎる。
大佐だったら40代後半~50代だろうから、ここはニコール・キッドマンとか- サンドラ・ブロックだろう。女性軍人のみが持つセクシーさが緊張感の中に見えればさらにリアリティが増しただろうにね。
遺作となったアラン・リックマンは良かった。軍人である故の苦悩が見えた。
スッキリしないグレーなエンディングがテロの時代の映画の文法なんだろう。
観客参加型が今後増えそうな予感がする。
参加させられるとSNSでなんか言いたくなるしね。
ヨーロッパとアメリカとアフリカ3大陸では、国民の知らないところでハイテク駆使して世界中でテロリストを追いかけ、殺害許可を求めている軍人と政治家がいる現実をスクリーンで知ることには意味がある。
一方の日本。尖閣周辺では、自衛隊と政治家間でこのやりとりが行われていくことは容易に想像できる。憲法にその存在を明記もされず60年以上、政治家に裏切られ続けている自衛官という名の軍人が、唾棄すべき政治家とどう日々折り合いをつけているのだろう。
紅白の演出がどうとか、元SMAPの木村と草なぎのドラマ戦争とか
金ぴかのPPAPとか品の無いCMを繰り返し見せられる
異常で異様なエンタメ業界による平和日本演出でこそ見るべき映画だと思う。
80点
映画「こころに剣士を」 監督クラウス・ハロ(フィンランド、エストニア、ドイツ)
チケットをラジオ局からもらったので平日11時半に行く。
ヨーロッパ映画で、フェンシングで、時代はソビエト圧政下の50年代。馴染みのないリトアニアを舞台にスター俳優は皆無。これは少ないぞ・・・とおもいきやシニア層を中心に5割入りだ。嬉しいね。
私の好きな要素が満載だ。
ヨーロッパ映画で社会派、SFXゼロの実写のみ、統治国家(社会) vs 抵抗人
ドラマチックにならない筈がない。
あらすじ)
1950年のはじめ、エストニアのバルト海に面した小さな町ハープサル。カバンをひとつ提げたエンデル(マルト・アヴァンディ)が歩いている。元フェンシングの選手で、小学校の体育教師として、ハープサルにやってきた。
校長は、なぜこんな小さな町にと、不審に思うがエンデルを採用する。彼は第二次世界大戦中、ドイツ軍とともにソ連と戦っている。いまは、ソ連の秘密警察から追われる身の上のエンデルにとって、ハープサルははるかレニングラードから逃れて選んだ土地だった。
体制べったりの校長から、スポーツクラブを開くよう要請される。戦時の供出のため、体育館には、スキーの板さえない。エンデルは、体育館で、剣を振る。そこにマルタ(リーサ・コッペル)という少女がやってきて、エンデルに「教えてほしい」と言う。半ば無気力、子どものことをあまり好きでないエンデルだが、マルタの表情を見て、教えることにする。
当日、多くの子どもたちが体育館に集まり、エンデルは驚く。おそらく、フェンシングは初めてという子どもたちである。エンデルは、基本の姿勢から教え始める。しかし、実物の剣がない。エンデルは、葦を刈り、煮て、何本もの剣らしきものを作る。
同僚の女教師カドリ(ウルスラ・ラタセップ)の話によると、スターリン政権の指示で、多くの子どもたちの父親、祖父が連行されているらしい。「子どもたちは、何かに打ち込んでいる間だけは、辛いことを忘れる」とカドリ。
葦の剣での練習が始まる。エンデルは、うまく出来ないヤーン(ヨーナス・コッフ)を、つい叱ってしまう。「先生はぼくたちを嫌いなんだ」とヤーン。その言葉にエンデルは驚き、「必ずりっぱな剣士にしてやる」と約束する。
練習に励む子どもたちを見た校長は、嫉妬なのか、フェンシングの練習を認めないと言い出す。校長は、以前から、エンデルの過去を調査している。やがて、エンデルの素性がどういうものかを知ることになる・・・
主演のマルト・アヴァンディがいい。戦争中にドイツ軍と共に対ソ連軍と闘った戦士の面影を隠し、地方都市に逃れ教師の仮面をかぶる佇まいがある。
終始二コリともしない。
50年代スターリンソ連の圧政下の雰囲気が、街の画面の随所に現れる。カメラの被写界深度を操ってパンフォーカスとボケの妙で主人公の心象風景をわからせる。音楽が控えめだけど刺さるね。
4日前に見た「狂い咲き」何とかの音の使い方とは180度違う。監督は多民族ヨーロッパの文化人だね。クラシック風がマッチする。
同僚の女教師との恋模様、子供たちとの信頼感を縦軸に、身に迫る危機のサスペンスを横軸に、行ってはいけないレニングラードへ向っていく。
至る所にドラマチックを配置しながらも大げさなハリウッド的表現を排して、抑制された空気感で統一させ、ラストへ導く手腕は見事。
子供たちは成長し、主人公は逃げず、彼も成長し、穏やかな希望のエピローグに。
邦画の子供はチャラチャラしてるか、バカの様に見える分
スクリーンの真剣な子供たちの眼差しには浄化される。
私はサムライなので(そのつもり)
「こころに剣士を」はタイトルだけで刺さる。
明日から早朝庭に出て木刀で素振りしたくなった。
90点
映画「狂い咲きサンダーロード」1980年 オリジナルネガ・リマスターデジタル再上映 監督:石井聰亙
2017年最初の映画は、石井聰亙が1980年に日本大学在学中に公開されたものでデジタル修復されたニュープリント版だ。
一部マニアでは日本版「マッドマックス 怒りのデスロード」と評価する向きもあり、2015年最高作品として評価しているのでこれは見ておかないいけない。
監督は福岡出身なので36年ぶりの凱旋公開なので、上映後の監督の挨拶、トーク、質疑があり、場内はリアルタイムで見た中年らと若者で満員。
たまに映画ファンと一体になってイベントとして楽しむのもいいもんだよね。
私は1980年公開時は見ていない。
当時は2本立てが多くて「サンダー」はサブで、メインは当時大人気の多岐川裕美の方だった記憶がある。職業監督鈴木則文が学生に負けることは東映の筋が通らない。
それでも16ミリで撮られた学生映画が大手映画会社で35ミリにされて全国一斉上映されるとは事件だったはず。
当時石井は22歳だよ。学生だよ。これは凄いこと。
80年版がどう評価されたかは知らない。
21世紀に入り、一部映画ファンでカルト人気に密かに火がついていた頃、2015年、逸失したと思われていた撮影当時の本編16mmネガフィルムが発見される。
それは当時のままを鮮やかに、素晴らしい画質で再現するものの、経年による埃や汚れ、キズも同時に発見。そこでクラウド・ファンディング手法で奇跡的に蘇る。
あらすじ)
暴走族“魔墓呂死”の特攻隊長・仁は、「市民に愛される暴走族」を目指す同輩や自分たちを取り込もうとする政治結社に反抗を試みた末、遂には右手を切断されてしまう。しかし、どん底に堕ちてなお抗うことをやめない彼は、バトルスーツに身を包み、幻の街サンダーロードで最後の決戦に挑むのだった!
冒頭、水中の何かわからない生き物から、どっかの活火山に飛んでシュール表現で驚かす。タイトルまでの遊び心は実にいい。
しかし「掴み」のアクションがないので敵対グループも魔墓呂死も存在感がない。
皮ジャン、ジーンズ、リーゼント、バイク、粗暴感の5点セットの登場人物ばかりで組織としての社会との立ち位置が見えない。構成員のキャラはもっと見えない。
ここが「マッドマックス」とは大きく違う。警察側マックスもギャング団もキャラ立りが十分に見えるので楽しい。
敵が強ければ強いほど観客の勝手な想像は高まるし、対立は深いほどメリハリが効く。
ドラマチックとはそういうこと。
学生とかプロとかは関係ない。
ドラマのない物語の中で、主役の山田辰夫は確かに印象的なセリフをどんどん吐いていく。 が言い回しが早く、滑舌が悪い。音が聞き取りにくく饒舌に過ぎる。
10代のチンピラ集団なのだからリアルと言えばリアルだろうけど。
主人公のキャラさえ全くわからないのだから共感などしようもない。
開始15分で、なんか肌が合わないと感じたら急激に睡魔に襲われ10分以上寝てしまった。気をとり直した後は途中で退席しようとも思ったが最後まで見た。
がホモセクシャルを伺わせる表現が中途半端だ。
パンク音楽好きな監督の趣味は理解するが曲が多すぎてうるさい。
詞の世界が映像の邪魔している。
街中の暴走や、廃墟のシーンに見るものがあったが、思ったよりも映像が暗くてスピード感はあるが、抜け感がない。
例えば
キューブリック「時計じかけのオレンジ」の近未来感
スコセッシ「ミーンストリート」の暴力
ジェームズ・キャメロン「ターミネーター」の追っかけ殺人ロンド形式
塚本晋也「鉄男」のようなエッジの効いた二度と見たくない妄想感
一流の監督に必ずある、突き抜けたものがない。
22歳の若き90分の熱量を感じた以外はね。
それにしても多くのスタッフ・キャストを巻き込んだ映像作品をクリエイティブしたエネルギーに敬意を表する。この人の活躍が多くの若者を刺激したことは間違いない。
終了後の監督トークはとても真剣かつ誠実で、真摯な人柄と映画愛はよく伝わった。
新作の話も「ここだけですよ」と断ったので詳細は書けないが期待する。
「シン・ゴジラ」以降観客のいわゆる社会派映画を見る目は変わったはず。
このタイミングだから石井の出番だと思う。
彼の描く近未来を見たい。
70点
次回鑑賞予定「こころに剣士を」
「町山智浩 たまむすび 2016 おすすめ映画トップ10」TBSラジオ
町山氏が2016年にアメリカで鑑賞した映画のお勧め10本です。
順位はありません。
(内4本は今月から順次日本公開予定)
1、「ドント・ブリーズ」 監督フェデ・アルバレス
2、「あなた、その川を渡らないで(韓国)」 監督チン・モヨン
3、「デッドプール」 監督ティム・ミラー
4、「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」 監督:ギャヴィン・フッド
2017年1月公開
5、「ズートピア」 監督:バイロン・ハワード、リッチ・ムーア
6、「メッセージ」 監督ドゥニ・ヴィルヌーヴ
2017年5月公開
7、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」 監督ケネス・ロナーガン
2017年5月公開
8、「サウルの息子(ハンガリー)」 監督ネメシュ・ラースロー
9、「ラ・ラ・ランド」 監督デミアン・チャゼル
2017年2月公開
第1回 批評サムライ 映画大賞2016 発表
新年明けましておめでとうございます。
昨年一年間お付き合い頂きありがとうございました。今年からリスペクトする「みうらじゅん賞」にならって一人審査員で勝手に賞を送ります。
対象)
2016年に見た映画(邦画・洋画)、TVドラマ、アダルト、新作も旧作も、初見も再見も、劇場公開でも動画配信もレンタルでも、PCでも、タブレット、iPhoneでも、YouTube、Amazonプライムビデオ、U-NEXTでも何でもOK。鑑賞したもの全てです。
・劇場鑑賞映画は全て数日以内に記事にしています。
・劇場公開の数倍を動画サイトで見ていますが、メモしてないのでつまらないものはタイトルも見たこと自体も覚えていません。
【映画賞】
グランプリ作品賞 「シン・ゴジラ」
見終わった後の高揚感は劇場でしか味わえない。邦画でこの体験は生涯一度もない、家族愛もロマンスを排し、涙を排し、センチメンタリズムのかけらも無く、怪獣を描く=日本の統治システムを暴く。膨大なセリフと、圧倒的な執拗な自衛隊の攻撃が、画面から熱量となっていく。これが真の怪獣映画だ。
脚色賞 三浦大輔(何者)
これまで出演したドラマ、映画から線の細い印象があった。しかしこの映画で徐々に長谷川は変わっていく。若き支配層をスマートに演じ、これまで邦画のスクリーンで見れなかった、新しいタイプのヒーローを演じきった。
主演女優賞 竹内結子(クリーピー)
不気味な隣人といったい何があったのか?バッサリ省略された為に、「支配された主婦」というこれまで見たこともないキャラクターを見事な存在感で演じきった。
特殊演技賞 香川照之(クリーピー)
撮影賞 芦澤明子(クリーピー)
トップ10(順位なし)
・「何者」 監督:三浦大輔
・「オーバーフェンス」 監督:山下敦弘
・「クリーピー 偽りの隣人」 監督:黒沢清
・「SCOOP!」 監督:大根仁
・「フェイク」 監督:森達也
・「I AM A HIRO」 監督:佐藤信介
・「アオイホノウ」(テレビ東京 2014年放映)Amazonプライムビデオ
監督:福田雄一
・「恥ずかしいカラダ おしゃべりチ●ポ 一条綺美香」(アダルト)
監督:カンパニー松尾
男女合わせて100歳超えの、おかしくも人生の深淵に触れるセンチメンタルジャーニー
・「スポットライト 世紀のスクープ」(洋画)
・「ボーダーライン」(洋画)
【勘違い賞】 脚本の破綻、役者の過剰演技、監督の無能さにより台無しに
邦画 64 ロクヨン(後編)
洋画 レヴェナント 蘇えりし者
【金返せ賞】 鑑賞自体を見なかったことにしたい
邦画 エヴェレスト 神々の山嶺
追悼【キャリー・フィッシャー(レイア姫)】。スターウォーズ第1作(4話)に確かにあった「何か」を考える。元旦那のポール・サイモン「時の流れに」を聞きながら献杯しよう。
1年前の今頃、全世界的に「フォースの覚醒」が話題になっていたのに。まさかレイア姫が60歳で去ってしまった。
若き姫がロボットにメッセージを託すところから映画は始まる。
美しさに加え、聡明さとキリっとした強さが絶妙なバランスで見るものを魅了した。
SFXはあまり好きではないが、この1作目はほんと楽しかった。
こんなスカッとするSF映画はそれまで見たことがない。
しかし2作目(5話)以降はそうでもなくなって・・・具体的にはよくわからない。
1作目にあった確かにあったルーカスマジックを失っていく。
4~5作なんてもう退屈でしかなかった。
おそらく第1作には特撮技術の素晴らしさ以上に、ルーク・スカイウォーカー、レイア姫、ハン・ソロ船長の3キャラが、それぞれマーク・ハミル、キャリー・フィッシャー、ハリソン・フォードのまだ若く、無名な3人の役者人生の懸けがスクリーンから熱量となって見れたんだろうね。
みんなオーディションでフィルムテストを受けてるんだね。
YouTubeはなんでバックステージの映像が沢山あるんだろう。映画ファンとしては貴重だけど・・・不思議だな。
。
当時はネットないから海外でヒットした映画を知るのはFMラジオか、スクリーン、ロードショー(現在廃刊)などの映画雑誌だった。
私が詳しくこの映画情報を知ったのは「ポパイ」か、音楽小僧のバイブル「ローリングストーン」(英語版)だったかな。
仮装したやつらと、ビキニの若い女性(キャリー・フィッシャー)がカバーで何の映画かさっぱりわからないけど・・・写真は思いっきりアメリカン。
カリフォルニアぽい突き抜けた青さがワクワクさせてくれたしポージングもユニークで日本女性はしないよね。
少女ぽさと小悪魔が同居する不思議なセクシーさが漂ってたし
いかにも当時尖がっていた「ローリングストーン」フォトだった。
短い期間だけどキャリーの旦那だったのが、ポール・サイモン。
この曲は彼女と出会う随分前の曲だけど、聞くたびに「昔の女」がキャリーとダブってしかたない。
世界中を夢中にさせる何かを
彼女は1976年のこの時、確かに持ってたね。
今夜はワインで献杯しよう。
映画「ドント・ブリーズ」 フェデ・アルバレス監督 スティーブン・ラング、ジェーン・レヴィ
今年最後の劇場鑑賞映画は昨年に続いてホラーだった。
21時始まりの日曜日はカップルが多いクリスマスの夜にも関わらず2割入りで丁度いい。
20年に1本と言えば、我が生涯で最高の恐怖はフリードキン監督の「エクソシスト」(1973)で、それ以降はこのトラウマで、怖そうな展開ではスクリーンを外すことが多くなり、しまいには劇場でこの手のものは見なくなった。
しかし、前評判の良さと、ぼっちクリスマスには映画館は最高の居場所だ。聖なる夜に恐怖でも感じさせてくれれば、それはそれでいいクリスマスだ。
あらすじ)
経済は破綻しゴーストタウン化が進む中、養育放棄の両親と暮らす不良少女ロッキーはいつの日か共にここから抜け出そうと妹に約束していたが、そのために必要な逃走資金を得られるあてはなかった。
ボーイフレンドのマニーから地下室に金庫を持っているらしい視覚障害者宅への強盗を持ちかけられた彼女はマニーと友人のアレックスの3人で真夜中に盲目の男性の屋敷に押し入る。
だがその男は元・軍人であり、盲目でも超人的聴覚を持ち、侵入者の殺人も厭わない恐ろしい人物だった。果たしてロッキーとアレックスは、即座にマニーを殺害した盲人の追撃を回避して悟られることなく静寂を保ったまま密室の家屋から脱出できるのか・・・
不良3人が見事なチームワークと現代の技で悪事を働く冒頭から絵作りの強さを感じる。ドローンの空撮で荒廃したダウンタウンをブルーとグリーンの色彩設計で少し誇張したような、スチールカメラで言えばジオラマ風な感じが実にうまい。(こいつ、アメリカの黒沢清だなと勝手に思った)
開始10分で並みではないクリエイティブは十二分に感じられる。
悪事を働きながらも、この町から出て夢のカリフォルニアへ妹と脱出したい家庭の事情も簡潔に語られる。脚本が巧みだ。
最後の大仕事に、盲目の退役軍人が所持するだろう大金に定める。
そして一人荒廃した地区に住む屋敷へ3人で忍び込む。
故に登場人物は3+1だ(途中以外な展開になるが)
閉ざされた屋敷に強盗団といえば、パニックルーム( デヴィッド・フィンチャー監督)があったがこちらは目が見えないのだ。
弱者というより障害者
しかしこの男、身体もメンタルもとにかく強い。
強盗と対決し一人を殺すが仲間がいることには気がつかない。
金を奪って存在を知られずに去っていきたい犯人との擦れ違いが、5分に1度のサスペンスで盛り上げる。
寝る暇も、横を向くすきも与えてくれない。
複数の存在を知ったあたりからおやじの異常さが際立つ。
地下室での意外な展開に
「ホー、そう来たか。」と感心。
実によくできてる。
まさに恐怖の館に飛び込んだ強盗坊ちゃんお嬢ちゃん状態に。
逃げ口を塞がれた瞬間、攻守逆転でサスペンスからホラーへギアチェンジ。
傷つけられても蘇るターミネーター要素が双方にあって
エログロも見せながらどんなエンディングに持って行くのか?
デトロイトの恐怖の館に、強盗と一緒に閉じ込められた感がハンパない。
エクソシスト級のホラー映画であることは間違いない。
ダークサイドの映画の至福を確かに味わった。
90点
次回、2016年映画鑑賞ベスト10を勝手に認定します。