映画「64 ロクヨン」(後編) 綾野剛・榮倉奈々
さて後編を一週間遅れで見た。
NHKドラマ版で知っていた通りに展開した。
しかしここから映画オリジナルが始まった。
見てない人もいるだろうがネタバレするので
以下は読まないで欲しい。
誘拐事件は
娘を殺されたロクヨン被害者の父・雨宮と
当時の捜査員・幸田との共謀で
ロクヨン犯人=スポーツ店経営者・目崎
を当時の現金受け渡しルートに誘い込む。
目先は警察で取り調べされるも
ロクヨンの操作ミスを記した「香田メモ」を明らかにしたくない
警察の思惑から釈放。
怒った三上広報官は不思議な行動をとる。
目先の子供を確保した上でロクヨン当時の死体発見現場へ誘い込む。
そして川での格闘の上目先は犯行を吐露し逮捕。
現場にいわせた記者の秋川に暴行事件としてスクープされる。
雨宮と幸田は自首する。
三上は広報官を追われる。
何だこれは?
ドラマと原作を超えた映画版サプライズのつもりか?
原作とエンディングが違う映画は別に珍しくないし構わない。
しかしこれを「蛇足」という。
三上の警察組織への怒りを極限化させるために
犯人へのトラップに、犯人の子供の誘拐(この描き方が曖昧)
するのか?
観客の前篇からの苦悩する板挟み中年・三上へのシンパシーが一気に崩壊する。
それやっちゃお仕舞いでしょ。
無理なストーリー展開に謎がいっぱい
(そもそもなぜ目先の子供と、雨宮が知り合いか?)
(その子がなぜ雨宮の工場付近にいるのか?)
(幸田メモの実態が不明)
(尊敬する上司・松岡も幸田メモに沈黙するのはなぜ?)
(記者・秋川の苦悩、記者クラブの中央VS地方の対立描写が中途半端)
(謎の同僚・二渡が何をしているのかがさっぱりわからない)
変な色気を出した結果、二部作の尺の関係からか説明を端折り
小さな謎は回収されないまま消化不良で終わった。
さらにラスト、諏訪への職務継承の描き方が演出の未熟さが目立った。
山を作れずに「えっ?これで?」
前後編なしの一本ならまだしも、前編のリズムが良かっただけに
かえすがえすもったいない。
大作原作の映画化は引き算が基本
キーマンを絞り、回収できない伏線は張らない。
もう一山のクライマックスを狙ったが故の脚本の失敗が致命傷。
映画製作委員会へのアピールかも知れない。
「ドラマにないもの、入れてますから・・・」
船頭が多い委員会方式の失敗作の典型。
後編の主役となった永瀬正敏は素晴らしかった。
いろんな辛さを乗り越えた表情がよかった。
彼を見るための映画としてなら
「ありだ」
50点