批評サムライ  ~映画・ドラマ・小説・エンタメ ★斬り捨て御免!~

責任が何でも曖昧なこの国で娯楽くらいは白黒ハッキリ!大作も小品もアダルトも興業収入も関係ない。超映画批評にない「上映途中の居眠り」が特技。シネマハスラー宇多丸氏、たまむすび町山智浩氏、シネマストリップ高橋ヨシキ氏を見習って公開初日最速レビューを心掛け評価は点数制。地方在住フォトグラファーがど田舎のシネコンでネタバレあり&あらすじ&見たまま感想ブログ

映画「新聞記者」内閣調査室VS官僚+記者のサスペンスが、東京新聞:望月衣塑子ショーにすり替える構成はいただけない。

1日2回の菅官房長官記者会見を時々YouTubeで見る。

後半決まって、東京新聞記者・望月衣塑子氏の質問攻撃を見ることができる。

他社が聞かない(聞けない?)ことを執拗にで聞くいつものスタイル。

ほとんど共闘はない。

週刊誌報道や根拠のない記事に基づく質問も多く訂正やとんちんかんもある。

知る権利を代行する仕事が記者なので、手法はどうあれ「まっとう」である。

そんな彼女の原作で映画を作った。

組織に敵対する官僚に近年最も色気のある松坂桃李、望月と思われる記者に韓国のシム・ウンギョン(全く知らない)

期待値は高まったので公開初日、大都会シネコンの2回目に参加。

f:id:kudasai:20190706112315j:plain

あらすじ)

都新聞記者・吉岡 ( シム・ウンギ ョ ン ) のもとに 、大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXで届いた 。日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育ち 、ある思いを秘めて日本の新聞社で働いている彼女は 、真相を究明すべく調査をはじめる 。

一方 、 内閣情報調査室官僚・杉原 ( 松坂桃李 ) は葛藤していた 。「 国民に尽くす 」 という信念とは裏腹に 、与えられた任務は現政権に不都合なニ ュースのコントロー ル 。

 愛する妻の出産が迫 っ たある日彼は 、久々に尊敬する昔の上司・神崎と再会するのだが 、数日後神崎はビルの屋上から身を投げてしまう 。真実に迫ろうともがく若き新聞記者 。「 闇 」 の存在に気付き 、選択を迫られるエリート官僚。

 二人の人生が交差するとき 、 衝撃の事実が・・・

f:id:kudasai:20190706112942j:plain

最近複数のビジュアルポスターで逐次投入が当たり前になった。
SNS拡散を狙ったのだと思うが、これほど「刺さる」キーワード版も珍しい。

先行試写で無料鑑賞した著名な文化人・知識人の傑作コメントもどうかと思う。それは金払ったこっちで判断するさ・・・作り手の傲慢というもの。

シム・ウンギ ョ ンは日本の女優が引き受けなかった理由で登板した様だが新鮮で結果良かった。胸の奥に秘めた正義感、生い立ちのトラウマを背負った影とか。

昭和の香りがする久しぶりに瞳の澄んだ大人の女性を見た。言葉のハンディも感じない。

f:id:kudasai:20190706113539j:plain

内調官僚役の松坂、今回はMr.葛藤

国家公務員であるにも関わらずダーティー仕事が日課で妻にも真実を言えない。良心の呵責から尊敬する上司の自死に吹っ切れる。

すけこまし役日本一の松坂にとって真逆な、令和版の志村喬黒澤明「生きる」)の様で、背負ったものの重さでつぶされそうな市井な人感が秀逸だ。

f:id:kudasai:20190706115121j:plain

そんな二人が内調=政府の秘密を暴露するサスペンスなんだが・・・
記者が見る番組に、文科省事務次官の前川氏との対談者として記者・望月衣塑子が頻繁に画面に表れる違和感。

国民の多くが知る例の詐欺師夫婦土地取引問題、四国の獣医師大学設置の「疑惑」を追求してきた当事者2人が出てくる。

フィクションにノンフィクションをぶち込む。

 

f:id:kudasai:20190706120659j:plain

映画を見終わって観客に感じて欲しいことを、途中で原作者の言葉として要約させてどうするよ。

政権批判も、為政者批判もどんどんしたらいいけれど

原作者の、原作者による、原作者のためのドラマだ。

素晴らしい俳優たち、フィルムライクな霞が関シーン、心象風景を大胆に魅せるカメラワークetc 素晴らしい映画になれたのに。

いつもの制作委員会方式で、特定の企業の思惑に寄った構成に改編されたのか?

 

70点

 

映画「ハウス・ジャック・ビルト」監督トリアーが他映像の大量投入で「自在さ」と引き換えに「傲慢さ」が鼻につく現代地獄巡り

ラース・フォン・トリアー監督の新作は3K(北野武是枝裕和黒沢清)と同じく劇場で見るようにしている。

脚本を自分で書く、アイドルはいない、特撮ない、見えない・見たくない仕組みを描くなど、その作家性と普遍的なアプローチへの信頼がある。

前作「ニンフォマニアック」でトリアー組常連シャルロット・ゲンズブール持ってきて、現代女性の隠された暴力と性依存をあからさまにする中で、噛み合わない不思議な禅問答が随所に挟んで、構成もリズムも欠いたアンバランスさでドラマをぶち壊した。

f:id:kudasai:20190626151236j:plain

今回は期待した。現代シリアル・キラーを通して何を語るか?

アンチクライスト」の救いようのない狂気、「メランコリア」の崇高さが戻ってくる気がした。

九州では公開4日目、JR博多駅シネコンは月曜11時だけど30%入りでおじさん臭漂う中、スタートした。

f:id:kudasai:20190626151316j:plain

あらすじ)

 1970年代の米ワシントン州。建築家になる夢を持つハンサムな独身の技師ジャック(マット・デイロン)はあるきっかけからアートを創作するかのように殺人に没頭する・・・

 5つのエピソードを通じて明かされる、 “ジャックの家”を建てるまでのシリアルキラー12年間の軌跡。

f:id:kudasai:20190626151710j:plain

1話

冒頭から謎の老人と犯人との問答が入って嫌な予感がする。

マット・デイロンと言えばコッポラの「アウトサイダー」とかしか思い出さない。神経質そうで、偏執的な人物描写とスター感の無さはこのドラマ向きだ。

大好きなユマ・サーマンが最初の被害者。

シリアルキラー」のキーワード連発で、犯人をとことん挑発していく表情が素晴らしい。こういう人はスクリーンで見ると美しさが倍増する。

さらに、自分を家を自分で建てる様子が描かれる。

当然何かのメタファーだろう。

f:id:kudasai:20190626152452j:plain

2話目

警官を装って未亡人宅に侵入する。

ここでの会話が秀逸だ。言葉だけでサスペンスが生まれている。

この女優は知らないが50歳前後の幸薄い感じがリアル。

カメラワークが安定させず、上下にどんどん振る感じがドキュメンタリー調で癖になる。

どっかで見たぞ。今村昌平の映画「復讐するは我にあり」だ。

そうか、こいつはアメリカ版「榎津巌」なんだ。

 

f:id:kudasai:20190626153426j:plain

しかし突然この犯人がボード持ってキーワードフィリップを投げ捨てる。

なんだこりゃ。

犯人目線進行の中にカジュアル犯人がジャマをする。

家は作っては途中で壊す。これもメタファー?

これ映画?

映像論文・・・とでもいうべきかな。

f:id:kudasai:20190626152752j:plain

3話目

母と息子2人がターゲット。

酷い殺し方でドラマとはいえ腹が立つ。

どんどん老人対話がドラマに介入、ヒトラーナチスなど現代史事件事故の写真・動画がこの語りに沿って挿入される。

説得力を持たせたいのかさっぱり意図がわからない。

f:id:kudasai:20190626153937j:plain

4話

プレスリーの孫娘女優が乳房を切り取られる。

対話、家壊し、フリップ投げ、現代史挿入が終わらない。

もはやドラマ完全崩壊。

 

最終話

対話老人が現れて、2人で旅に出る。

地獄を思わしい場所へと・・・・

結末はもはや意味がわからない。

 

何の感動も共感もない、2時間半の悪夢。

ポカーンとしたおじさん観客の溜息しか聞こえてこない。

他映像の世界観を自在に扱う魔法使いにでもなったつもりか。

 

ポスターなどビジュアルは、前作と同じ世界一の北欧デザイン事務所制作なので、期待してしまった私がバカだった。

あの比類ない才能はどこへ行ったのか?

もはや本当に枯れてしまったのか?

30点

 

映画「旅のおわり世界のはじまり」監督黒沢清が前田敦子の歌声をただアジアの真ん中で聞かせたかっただけの不思議な解放感。

黒沢清の「前田敦子愛」がファンの間では常識で、「Seventh Code」(2014)、「散歩する侵略者」(2017)に続く集大成なのかを確かめにいつものど田舎シネコンでチケット買ってたら、磁器カードが壊れていて再発行に手間どり開始時間を過ぎた。公開2日目で黒沢ファンも、AKBファンとかも多いだろうし、焦って頭低く座席を目指したが、目が慣れてきたら誰もいやしない。黒沢の新作をぼっち鑑賞出来る。これは贅沢だ。

f:id:kudasai:20190621101740j:plain

映画の情報を全く持ってなかった。タイトルからして「村上春樹」的だし、ロードムービー的でもあるし、加瀬亮がいるとハチャメチャが起きるし・・期待はするがどこに連れて行ってくれるのか全く未知数。

「私の心は迷子になった」なるコピーが意味深だ。ホラーを描かせて世界一の黒沢がアジアの砂漠でどんな恐怖を見せてくれるのか・・・

f:id:kudasai:20190621102352j:plain

あらすじ)

テレビのリポーターで“ウズベキスタン”を訪れた葉子は、“伝説の怪魚”を探すため、番組クルーと様々な地を訪れる。ある日の収録が終わり、彼女はひとり見知らぬ街を彷徨ううち、導かれるように路地裏につながれたヤギと巡り合う。それは、目前に広がる“世界”との対話のはじまりだった・・・

さて前田敦子である。

f:id:kudasai:20190621103814j:plain

黒沢の前作「散歩する侵略者」で天然俳優としての素晴らしさを証明してみせたが、今回は心が迷子にならないといけない。

そもそもこの映画は「迷子」がキーワードのようで

番組は怪魚が見当たらず迷子、ディレクターは撮影出来ないイライラで迷子、前田は歌手になれなかった過去を回顧しつつ町を彷徨う。

スタッフ4人の男性陣と彼氏とのLINEだけが日本語会話で、それ以外は現地での非コミュニケーションの身ぶり手ぶり。

f:id:kudasai:20190621103851j:plain

家畜として繋がれた「やぎ」の解放は、何かのメタファーなんだろうがよくわからない。撮影禁止区域での警官との追っかけが唯一のサスペンスなんだけど「第三の男」風にもならず、終始特撮もなければ血の一滴も流れない。

この中途半端さはこっちが迷子になりそうだ。

現地の劇場で突如エディット・ピアフの名曲「愛の賛歌」が流れる。

なんだ、これは?何の関係がある?

f:id:kudasai:20190621114129j:plain

いや待て、監督は黒沢清なんだ。

すべての伏線は見事に回収され、あーそうだったのか!と、誰もを映画の国に連れてってくれた黒沢清だ。最終版で一気に畳み込む演出だろう。

このままで終わるはずがないではないか。

f:id:kudasai:20190621114120j:plain

しかし、映画は何もしないまま前田の砂漠アカペラ独唱で終わる。

黒沢ファンは目が点になっただろう。

やりっぱなし。風呂敷広げっぱなし。やりたい放題。

しかしある種の解放感はなんだろう。

f:id:kudasai:20190621114431j:plain

このシーンを撮りたいがための2時間のぐだぐだ紀行ではないか。

鳥取砂丘でもよかったと思うが、それなら30分で終わってしまう。

脚本読んだだけで商業映画としては失敗とわかるだろう。

だからこんな映画作る映画人はいない。

PIAAフィルムフェスチバルや学生映画の様な挑戦に拍手を送るしかない。それは黒沢清だから。

映画としては失敗、でも失敗であるが故に最後に解放される。

 

50点。

 

 

映画「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(スクリーンX版)」公開初日レビュー。支離滅裂の歴史的出来損ない。

あの「コジラ」が帰ってくる。

f:id:kudasai:20190531212552j:plain

第2弾「キングコング 髑髏島の巨神」が随所に雑ではあるが、CGの完成度は素晴らしくて巨大生物のリアルさは驚いた。

久々の世界のKEN WATANABEの芹沢博士だし

東宝怪獣シリーズで60年代、子供心を鷲掴みされた一人として、モスララドンキングギドラ総出演とならば襟を正し、公開初日、しかも福岡で最近完成した「スクリーンX」劇場に出かけてみた。

40%の入りで、スクリーンのほぼ中央後方に陣取って左右スクリーンを視野に収めるベストポジションで、金曜の13時、50、60代に囲まれてスタート。

f:id:kudasai:20190531212623p:plain

あらすじ)

神話の時代に生息していた怪獣のモスララドンキングギドラが復活する。彼らとゴジラとの戦いを食い止め世界の破滅を防ごうと、生物学者の芹沢(渡辺謙)やヴィヴィアン(サリー・ホーキンス)、考古人類学者のアイリーン(チャン・ツィイー)らが所属する、未確認生物特務機関モナークが動き出す・・・

 

冒頭は愛情深い母と娘の日常風景を見せる。(第1作もそうだった)

ここからがもの凄い展開に。

f:id:kudasai:20190531213737j:plain

モナークの科学者の母が、テロリストと組んで世界に散らばるモナーク基地を行ったり来たり。怪獣の周波数をコントロールできる謎のマシンを使っていろんな怪獣を呼び寄せる地球規模のテロに加担する。

歴史に悪名を残す母テロリストに対峙する娘と元夫とKen Watanabe引き入りるチチームモナーク

画面一杯にでるわでるわの怪獣たち。

その姿がやたらカラフルで強いんだけど恐怖を感じない。コングにあったリアルが今回はない。

f:id:kudasai:20190531215856j:plain

但し登場人物にある家族愛、地球愛、怪獣愛・・・

愛の為に物語はご都合主義と科学的なエビデンスも解説もない支離滅裂へ一直線。

政治家が一人も出てこないまま、怪獣vsチームモナークのやりたい放題。

余りのバカバカしさに睡魔が来るが

目をつぶっても左右のスクリーンが明るすぎて熟睡できない。スクリーンX恐るべし。

f:id:kudasai:20190531215008j:plain

後半から初期ゴジラシリーズの音楽監督伊福部昭スコアが随所に登場する。

シン・ゴジラ」で味をしめたチーム東宝の入れ知恵か。(予告編で流れるクラシックの名曲は皆無だった)

どのタイミングで席を立とうか、いかんせん座席は中央で観客の邪魔はしたくないので後半1時間耐えた。

f:id:kudasai:20190531220809j:plain

この映画は、今まで見てきた映画の系統に入るのか?

どの人物キャラクターにも共感できず、ただ怪獣が暴れ、光線とか飛びまくり、スクリーンはやたら発光し、爆音鳴らし、テロリストは生き延び(次回はゴジラキングコングと戦うんだって)

何とも悪趣味な世界戦略映画3部作

 

東宝は怪獣キャラを貸して世界で大儲けか?

あー、この虚しさ。

見たことを全て忘れてしまいたい歴史的駄作

時間の無駄。

 

0点

映画「ブラック・クランズマン」スパイク・リー監督のジャンル別け不能で不要なシリアスコメディの誕生。動画全部入りの何でもあり感が実に新鮮。

所謂トランプ(批判)映画が作られるハリウッドの中で、最も尖がったドラマの予感がした。

カンヌ映画祭グランプリとかはどうでもよろしい。

70年代、KKK vs 警察、黒人差別、潜入捜査・・と来たら、もうあらゆる場所から「対立」の火花がない方がどうかしている。

公開初日、いつものど田舎シネコン、いつもの席で、客席40%埋まってスタートした。

f:id:kudasai:20190530150050j:plain

あらすじ)

 70年代半ば、アメリカ・コロラド州コロラドスプリングスの警察署でロン・ストールワース(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は初の黒人刑事として採用される。署内の白人刑事から冷遇されるも捜査に燃えるロンは、情報部に配属されると、新聞広告に掲載されていた過激な白人至上主義団体KKKクー・クラックス・クラン>のメンバー募集に電話をかけた。

 自ら黒人でありながら電話で徹底的に黒人差別発言を繰り返し、入会の面接まで進んでしまう。騒然とする所内の一同が思うことはひとつ。 KKKに黒人がどうやって会うんだ? そこで同僚の白人刑事フリップ・ジマーマン(アダム・ドライバー)に白羽の矢が立つ。

 電話はロン、KKKとの直接対面はフリップが担当し、二人で一人の人物を演じることに。任務は過激派団体KKKの内部調査と行動を見張ること。果たして、型破りな刑事コンビは大胆不敵な潜入捜査を成し遂げることができるのか―!?

f:id:kudasai:20190530152339j:plain


物語読んだだけで、数か月前に見た映画「グリーンブック」と比較すると、もっとハチャメチャでサスペンスがあって面白そうだ。「ブック」は真正面のストレートが多くて、品行方正に過ぎた。抜けがなくて酸欠になりそうだった。

一方「ブラック」は「風と共に去りぬ」差別映画の王者「国民の創生」を見せたり、過去の実写、現代のデモ、トランプをぶち込んだ「動画全部入り」で面白い。

監督スパイク・リーのスタイルなんだろうが新鮮で好きだな。

f:id:kudasai:20190530150930j:plain

ジョン・デヴィッド・ワシントンが、あのカッコいいディンゼル・ワシントンの息子とはね。アダム・ドライバーを「スターウォーズ」以外では初めて見た。どっちも自然で好感。

ファッションも服装も音楽も憧れのアメリカ70年代を感じられる。

一番の貢献は、誰が見ても頭悪そうなKKK連中が怖さよりもコメディ担当で笑える。

f:id:kudasai:20190530152649j:plain

70年代の地方を描きながら、表現手法が斬新で21世紀らしさ満載だった。マイケル・ムーアスパイク・リーはいつも目が離せない。

資金がなくても手法で魅せる実証をスクリーンずっとやってくれている。

日本の監督たちも続いて欲しい。

 

90点

 

 

映画「空母いぶき」佐藤浩市発言よりも情緒的な脚本の方が問題。建前国家にエンタメ界からの一石は評価大。

やっと見れた今年最初で、令和最初の日本映画は

佐藤浩市発言で公開前から話題の「空母いぶき」

しかし、百田直樹は作品は素晴らしい(「夢を売る男」は平成に読んだ本で最高だった)のに、見てもいない映画について発言しなくていいのに、自分を小っちゃく見せて情けない。

どうでもいい話だけど

20数年前、帰郷する間の半年だけ、東京でドラマのエキストラをやっていて、フジのドラマで佐藤浩市渋谷ビデオスタジオで共演した。バーのシーンで女性と2人連れの客の設定で近くで見ていて、世の中こんなカッコいい男がいるのか?と率直に思った。立ち姿が色気あり過ぎる。

さて公開3日目、月曜日の昼下がり、ご近所スーパーシネコンはシニア世代が多く20%の稼働率でスタート

f:id:kudasai:20190530155200j:plain

あらすじ)

20XX年。日本の最南端沖で起こった国籍不明の軍事勢力による突然の発砲。日本の領土の一部が占領され、海保隊員が拘束された。

未曾有の緊張が走る中、政府は初の航空機搭載型護衛艦「いぶき」を中心とする護衛隊群を現場に向かわせる。

日本は、かつて経験したことのない1日を迎えることになる・・・

日本にはないことになっている「空母」(実際は「いずも」、「かが」が改装中)

をスクリーンで見せる姿勢に1本!

島を獲りにきた外国軍隊を見せる勇気に1本!

日本映画界が憲法施行から70数年目にやっとたどり着いたリアルに目を向けた瞬間に立ち会えた。

f:id:kudasai:20190530160240j:plain

日本国憲法 前文にある

・・・平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。 とある。

実際は

ロシア・・北方領土を不法占拠(日ソ中立条約を一方的に破棄)

韓国・・・竹島を不法占拠

中国・・・尖閣諸島を実効支配しようとする

北朝鮮・・日本人を日本国内から拉致し帰還させない

ならず者周辺国に囲まれて「平和を愛する諸国民」とか、ファンタジー憲法との乖離を、学校でも一切習わない、国会でも議論しない。

米軍基地と核兵器に守られた「お花畑国」にあって、エンタメとはいえスクリーンで一石を投じた姿勢を評価したい。

原作者「かわぐちかいじ」は、自衛隊シリーズで一貫した「本音と建前」批判の姿勢に最大の敬意を表したい。

f:id:kudasai:20190530161140j:plain

冒頭、不特定子供たちの集団が・・・あー嫌な予感がする。

違うな・・・・と。

空母が主役のこの映画は「シン・ゴジラ」系の第1作目であると勝手に思っていた。

ゴジラ」はメタファー

主役は日本の統治機構と、唯一の暴力装置自衛隊であり

閣議、関係閣僚会議、記者会見など為政者・官僚の発言と行動だった。

庵野監督が膨大なセリフとテロップを駆使して

市井の人々の表情を敢えて一切描かない日本映画革命を成功させた。

 

今回は、相手の思惑がわからない(=コミュニケーションがとれない)「海外某国」を「ゴジラ」に見立て、指揮系統の最上位官邸や自衛隊が、「シン・ゴジラ」では踏み込まなかった「憲法」や「専守防衛」「武力」など、為政者が時の流れに合わせて解釈と言う名の屁理屈を重ね、憲法の矛盾、本音と建前の偽善を描くものと思い込んでいた。

f:id:kudasai:20190530225520j:plain

だが違った。

「日本は戦争をしない」主義者の佐藤総理の苦悩は、会議中のセリフによってのみ表現される。その前段の本音と建前の偽善システムが描かれないので、カッコのいい言葉だけが宙を舞う。

(第1次の安倍総理に病気を揶揄した、とかそんな感じは皆無)

 

 空母側は敵と火花散っているが、官邸は意見の違いがあっても火花が散らない。

苦しそうな佐藤総理がただうろうろしているだけ。

 

それに比べて西島艦長の存在感は見事だった。

どういうシチュエーションでも口角を上げたまま、まるでナレーションの様なセリフ廻しで現場を指揮し支配する。

海自の中でも心技体傑出したリーダー像を見せてくれる。

こんなに上手い役者だったとはね。

f:id:kudasai:20190530232057j:plain

但し、大阪弁艦長のコントセリフは楽しいがリアリティを欠いたし、コンビニ店長と店員の下りはドラマのリズムを大きく崩してくれた。

唯一の市井の人の暮らしを見せて「平和が大切」としたかったのだろうが双方のテンションが違い過ぎて相乗効果が逆に出てる。

いつもの映画制作委員会形式の為か、複数クライアントの合意形成の為、情緒に寄ってしまったのだろうか?

 

ここは「シン・ゴジラ」風に振り切っていかないといけない。

庶民は描かないんだ、と肝をすえないと。

 

70年以上の偽善の積み重ねが生んだ、何でも先送り主義の末に

それを見越した諸外国勢力との衝突の最前線と、為政者を切り取るんだ、と。

何故そこを描かないんだ!

 

せっかくの「かわぐちかいじ」の長年の問題提起と役者の演技を脚本は生かし切れなかった。原作者からすると無念だろうな。

 

振り切れない恨みで80点

それでも評価はしたい。

1歩は進んだ。

映画「記者たち 衝撃と畏怖の真実」カッコつけたタイトルと監督が一番カッコいい、ジャーナリストたちの表層を描いた置きにいった凡作

映画では「新聞記者もの」ジャンルが確実にあって出来るだけ見るようにしている。

70年代「大統領の陰謀」のレッドフォード、ホフマンがカッコ良かったから。
2人のファッション、話し方、罠の張り方、言葉のひっかけ方・・・「絶対将来記者になってやる」と。(夢は破れたが・・)

f:id:kudasai:20190524143349j:plain

サスペンス寄り記者映画には当たり外れがあるが、実話になると大きく外れがない。

この映画もそうなるものと思っていた。

 

あらすじ)

2002年、ジョージ・W・ブッシュ大統領は「大量破壊兵器保持」を理由に、イラク侵攻に踏み切ろうとしていた。 新聞社ナイト・リッダーのワシントン支局長ジョン・ウォルコットロブ・ライナー)は部下のジョナサン・ランデー(ウディ・ハレルソン)、ウォーレン・ストロベル(ジェームズ・マースデン)、そして元従軍記者でジャーナリストのジョー・ギャロウェイ(トミー・リー・ジョーンズ)に取材を指示、しかし破壊兵器の証拠は見つからず、やがて政府の捏造、情報操作である事を突き止めた・・・

 

f:id:kudasai:20190524143839j:plain

俳優陣は最近の大活躍の元祖キレ芸人ウディ・ハレルソン

お久しぶりのジェシカ・ビールはロマンス担当で、クールビューティーがいるとドラマは楽しい。

が、ミラ・ジョヴォヴィッチにいたっては何の為にいるのかわからない。

f:id:kudasai:20190525085556j:plain

追いかける記者2人パターンは「大統領の陰謀」と同じだけど、どう見ても支局長役のロブ・ライナー監督の発言と動きが目立って主役なのだ。

大物記者役トミー・リー・ジョーンズも裏回しの活躍もなく、唯一報道した我らによってアメリカの民主主義の伝統は守られた、と。

f:id:kudasai:20190525090744j:plain

悪しきセリフ主張型ドラマになり下がり、バットの芯にあたらずファールチップで無得点で9回終わってしまい、眠い置きに行ったゲームを見せられポカーン。

 

「衝撃と畏怖の真実」・・・宣伝部はよくもこんなタイトルを付けたもんだ。

そのセンスに衝撃と畏怖を受けた。

 

50点