映画「I AM A HERO」 佐藤信介監督 大泉洋・長澤まさみ・有村架純
日曜日の夜にホラー映画を見た。
海外の映画、ドラマではやたらめったら死人が街をうろついて
食人するゾンビ物がよくあるが、この手のドラマは気持ち悪くて
もう1分も持たない。
チャンネルを変えるか、読書の方がましだ。
しかしTBSラジオ「シネマハスラー」で宇多丸氏が
日本ならではのゾンビ映画に仕上がっている・・・と絶賛。
その「ならでは」が妙に気になる。
生まれて初めて映画館でゾンビ映画を見るはめに。
あらすじ)
鈴木英雄は「アイアムアヒーロー」と自らをを鼓舞するようにつぶやくのが口癖のモテない・サエない・うだつのあがらない漫画家アシスタント。平凡な生活を続けていたある日、英雄の日常が一変します。 何と、噛まれるとZQN(ずきゅん)というゾンビのようになってしまう謎の奇病によって突如大量の感染者が発生してしまい、英雄の周囲でも感染する人が現れ始めたのです。 実は、英雄は趣味のクレー射撃のおかげで銃砲所持許可証および散弾銃を所持していました。散弾銃を武器にZQNと闘い、危機を乗り越えようとします。果たして、散弾銃は極限状況を乗り越える武器となるのでしょうか?
冒頭から35歳の漫画家アシスタントの妄想とうだつのあがらなさが、丁寧に描かれて実にリアルだ。
塚地がいい味出している。
彼女役の片瀬の長い手足から34歳の大人の生生しさを見たかったが、最初のゾンビになってしまう。
この玄関を挟んだ描写が面白い。
愛の再確認に戻ったのに、恋人に殺されそうになる不条理
真正面からSFXとスピード感で異常な生き物の存在感を知らしめる。
心理ホラー得意の邦画では、でもハリウッド製でもない・・・
何か違う、something new が確かにある。
つまり、「ならでは」になっている。
この現場から一気に逃げ出すと
世の中がどこもかしこも不条理に染まっていることがわかる。
政府の人間とか出てこないで視覚でわからせる。
この辺りが新鮮で、並みの邦画の文法ではない。
うまいね。
女子高生を高速道路で拾い、別の逃避行が始まる。
アクションがここではハリウッド並みだ。
富士山、ZQNのキーワードが示され
山の中へ場面転換。
おっさんとのJKの距離が近ずく。
恋の成就の予感さえする。
やがてショッピングモールにたどり着くと
屋上に生存するコミューン VS 下で生きるゾンビ
とのバトルに巻き込まれる。
唯一ヒーローになれる銃の存在感が随所に出てくるが
決定的な場面で引き金を引けない。
この愚図さがラストに生きてくる。
の登場がいい感じだ。
最近の彼女は吹っ切れている。
ここからは西部劇だ。
大インディアンに囲まれた騎兵隊
あるいは、宇宙生物に襲われる宇宙飛行士
話の通じない相手との生存競争。
殺さなければ殺させる絶体絶命
ひ弱な鈴木が覚醒していく様がよく描かれている。
いつもの軽口たたく大泉ではない。
中年に差しかかった
まだ何ものでもない感をよく演じきっている。
気になるのが
半分ゾンビの女子高生は何だったのか?
屋上での組織内抗争は別の見せ場なのに
きっちり全体とヒエラルキーを見せていないので効果は半減
長澤まさみをセミヌードにするとか濡れ場を与えるべき。
母性を言葉で説明したのは全体のリズムを壊した。
いくつか惜しい点はあるものの
巻き込まれパニックで、セリフで説明しない
出色のロードムービーが
邦画の歴史上初めて誕生した感が嬉しい。
パート2が必ずある。
90点