映画 「天空の蜂」
邦画サスペンスで、東野圭吾で、原発で、タイムリミット物で・・
これだけ映画的な要素がそろったら見ない訳にはいかない。
原作が社会派サスペンス長編なので
登場人物の伏線と物語の糸、縦糸=時系列の解決)と横糸=人物の愛憎
が多いことは最初から予想される。
スタートから原発の上空にヘリがストップし
映画タイトルが現れるまではテンポがあって良かった。
しかしこれ以降の物語の交通整理が出来ない。
脚色が力不足で、原作のポイントを山盛りにしたのだろう。
観客は性急な展開に急がされ、見ているシーンの背景が理解できない。
70年代の傑作「新幹線大爆破」では
高倉健と山本圭が、虐げられた者の国家へのレジスタンスが丁寧に
情感よく描かれていた。
「健さん、新幹線やっちゃえよ!」
と登場人物へのシンパシーがあった。
が、ここでは犯人の綾野剛にも、ヘリ設計技師の江口にも
何も共感できない。
人物描写が稚拙で、部分的な小芝居が(髪の毛いじる刑事、理事長、航空自衛隊員など)ドラマの邪魔をしている。
総じて全員が熱演すればするほど、観客はしらけるしまう。
原発立地と運営の問題点・不条理をセリフで説明するのではなく
登場人物の行動とセットで描いてこそ説得力が出てくる。
そこは原作を離れ、「映画の文法」をしないと
こういう残念な結果になってしまう。
仲間由紀恵が最も中途半端でかわいそうだった。
監督・堤幸彦はヘリシーンはよかったが
地上シーンでは、イマジネーションがなかった。
ドラマ「トリック」など、手品とか奇をてらった
演出の人なんだろう。
安全と言い続けて国民をだまし、交付金で住民を黙らせる。
その構図は
諸国民に勝手に期待し、誰が国民を守るのか明記してない日本国憲法
9条で戦力を持たないなずなのに、存在する自衛隊
「集団的自衛権は認められない」という野党
拉致被害を受けても取り戻せず、平和憲法などと言う夢想主義者
本質に決して迫らないジャーナリズム
この国の根源のいたるところに現れる大いなる矛盾と
それを維持する与野党の政治家・官僚・財界・マスコミなどの
既得権益者たち。
「電力供給」と「放射能被害」
国民の関心の高い2大テーマに迫れば、これらインチキの仕組みの一端が
明らかにされる傑作になれたのに・・・
激しく対立する素材だらけなのに、火花が散らないんだから
しょうがない。
黒澤明の「天国と地獄」の21世紀版を勝手に期待したが
足元にも及ばない。
登場人物を対立させれる演出力もないんだから
「原発」を描く力量はそもそもなかった。
50点