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批評サムライ  ~映画・ドラマ・小説・エンタメ ★斬り捨て御免!~

責任が何でも曖昧なこの国で娯楽くらいは白黒ハッキリ!大作も小品もアダルトも興業収入も関係ない。超映画批評にない「上映途中の居眠り」が特技。シネマハスラー・宇多丸氏やたまむすび・町山智浩氏のブログを見習って公開初日最速レビューを心掛け、評価は点数制。みうらじゅんとカンパニー松尾をリスペクトするフォトグラファーがお届けします。

23年ぶりに五木寛之が「新 青春の門 第9部 漂流編」を「週刊現代」誌上に連載開始するも、電子書籍「dマガジン」で読む不思議さと講談社 VS 新潮社の戦い。

1970年代、私のヒーローはスティーヴ・マックイーンクリント・イーストウッドロバート・レッドフォード、デ二ーロなどハリウッドスターと、日本人では何故か五木寛之だった。

 

当時ラジオドラマが人気で「海に見ていたジョニー」など音で聞いていた。

カッコ良かった。

九州のど田舎でからいつか横浜に行きたい。

海外に出たい。世界を廻りたい・・・

 

60年代後半からの20年間は彼の小説群をよく読んだ。

『さらばモスクワ愚連隊』のJAZZへの矜持

蒼ざめた馬を見よ』の対ソ連世界謀略

青年は荒野をめざす』の20世紀ヨーロッパ史の悲哀と人種差別

青年は荒野をめざす (文春文庫)

青年は荒野をめざす (文春文庫)

 

  

『男だけの世界』『内灘夫人』『ヒットラーの遺産』『狼のブルース』『こがね虫たちの夜』など耽美サスペンスロマンとでも言うべき中編のエッジの効いた、戦争を引きづった者たちの企みの高揚と敗北感が堪らななく魅力だった。

 

主人公がフリーライター、カメラマン、ルポライター、週刊誌記者などマスコミの底辺で生きるフリーランスに強く憧れた。

サラリーマンなど宮使いでなく、リスクを背負って謎を付きとめたい好奇心がカッコ良かった。

 

その影響は私も受けた。

映画「四季・奈津子」で本田博太郎演じるカメラマンのように「ヌード撮りませんか?」+名刺を渡す作戦はやったことがある。

(アマゾンプライムで見直したら1979年が見えた。舞台は私が産まれた福岡県の飯塚市近郊。八木山バイパス、オートマ以前のシフトギアー、状況劇場の赤テント、博多駅の新幹線ゼロ系、東亜国内航空(今はJALに吸収)も、田村隆一が本人役で出ていて実にあの頃が蘇る)

 

さて 『青春の門

週刊現代で連載が始まったのが1969年((アポロ11号が月面着陸した年で、翌年70年安保の東大安田講堂事件の前年)だった。

 

あやすじ)

誰もが一度は通りすぎる、そしてただ一度しか通ることの許されない青春の門。熱い血のたぎる筑豊の地に生を享けた伊吹信介。目覚めゆく少年の愛と性、そして人生への希望と旅立ち…。ひたむきな青春の遍歴を雄大な構想で描き、世代を超えて読みつがれる不滅の大河ロマン第1部

 

(数度の映画化がされ、筑豊編は菅原文太版がベスト)

 

 以降作品は、自立篇 (1971年-1972年) 放浪篇 (1973年-1974年) 堕落篇 (1976年-1977年) 望郷篇 (1979年) 再起篇 (1980年)で一旦中止、 挑戦篇 (1993年)で再開するも再中断・・・

 

自立編からの東京での貧乏生活、恋愛、学生運動、函館への逃避行など、こちらも東京生活を始めたり、仕事の生きずまりとか、結婚しようとした女と突然連絡とれなくなったり。故郷へ帰ったりとか・・・小説とリンクするところもあり伊吹信介の心情がよくわかる。

ただ余りに、ゆっくりしたテンポで状況を描くので、作家の年齢を考えれば、完結などまず不可能でろうと思っていた。

そこにNHKが連載再開のニュースが入る

www.youtube.com

 地元紙でも

www.nishinippon.co.jp

 

「伊吹の29歳で筑豊に帰郷でお仕舞い」

であればもしかして完結もあるうると。

そして先週、第1回を紙面で読んだ。

 

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ソ連の僻地から物語がはじまる。

20年ぶりの五木節だ。挿絵も筑豊編の初期の感じがしていい。

60年代のソ連を舞台に日本男子・伊吹信介が躍動する。

 

2回目をDOCOMO提供のdマガジン(30日無料)でiPhoneiPadで読んだ。文字の大きさと行間をピッチで自由に拡大できる便利さはシニアには素晴らしい。30年後の連載が電子書籍とは作者も読者も思わなかっただろう。

 

1週間に1回、5,6ページ、時空を超えてイメージする贅沢さを味わう幸せ。

 

村上春樹の新作を午前0時に本屋に並び朝まで一気に読み込ませSNSクチコミPR作戦の世界系人気作家、と対して週刊誌連載という名のスロー読書体験が60~80年代文学界の旗手・五木寛之というの実に面白い。

 

新潮社VS講談社でもある。

 

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また、2017年、大統領トランプと皇帝プーチンが支配する全体主義的MADな世界に生きる日本人に、共産主義バリバリの1961年、日本の若者がどう生き抜いたのか?五木寛之なりのメッセージが必ずある。

 

週刊誌にするか電書にするかは別にして

週一、その時空に読者は飛べるか? 

真の読書力が問われる。

 

青春の門 文庫 全7巻 完結セット (講談社文庫)
 

 

私の中で最高傑作は「戒厳令の夜」だ。

中洲のバーから絵画を発見するところから始まって戦後の日本の政界と右翼との関係。石炭史興亡、メルセデスベンツの秘密、自衛隊出動、ナチスの絵画泥棒とリアルとエンタメが混然となって、私の故郷でもある福岡を舞台に20世紀世界史とこんな風に繋がっているのかと驚嘆。と同時のプロ作家の情報量と構築力の凄さに圧倒。

俺は作家にはなれない、と確信した。

 

戒厳令の夜〈上・下〉 (1976年)

戒厳令の夜〈上・下〉 (1976年)

 

 映画雑誌社に勤める江間は、出張時に博多のバーで、「伝説中の幻の絵」といわれるパブロ・ロペスの作品を見かける。なぜここに? 大学で美術史を専攻した江間の血が騒ぐ。江間は福岡の大物国士に相談し、日本への流入経路について探索をはじめる。スペイン内乱にはじまり、ナチスのパリ占領、GHQの日本統治、さらに政界の疑獄事件へとつながっていく手がかり。舞台は筑豊からチリへ。壮大なスケールの歴史ロマン。