批評サムライ  ~映画・ドラマ・小説・エンタメ ★斬り捨て御免!~

責任が何でも曖昧なこの国で娯楽くらいは白黒ハッキリ!大作も小品もアダルトも興業収入も関係ない。超映画批評にない「上映途中の居眠り」が特技。シネマハスラー宇多丸氏、たまむすび町山智浩氏、シネマストリップ高橋ヨシキ氏を見習って公開初日最速レビューを心掛け評価は点数制。地方在住フォトグラファーがど田舎のシネコンでネタバレあり&あらすじ&見たまま感想ブログ

映画「犬鳴村」・・この町で生まれ、隣町に住む私が、地元では有名な都市伝説の映画化をコロナ開け1本目に選んだ・・

ブログ再開します。

昨年秋に、動物センターの犬を飼いだしたら、強い分離不安症で、飼い主いないと吠える、暴れる、脱走するの連続で、市の動物管理車が出動したり、仕事も一緒に出掛ける必要から車を買い替えたり、コロナより先に、新しい生活様式になってしまいました。

結果、映画館に行けない日々が続きましたが、なんとか解決しそうな予感です。

昨年末分も少しずつUPして行きます。

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この映画を緊急事態宣言開けて最初に見たのは訳がある。

・家からわずか20km先にあるのが「犬鳴トンネル」

・トンネルは宮若市にあり、私はそこで生まれ隣町に住む

・母校の小学校校歌の始まりは「犬鳴きはるか・・・」

・犬鳴伝説は、確かに数十年前から地元住民も知られている

まさにご当地映画なのだ。

ホラーは基本苦手だけれど、この監督清水崇には興味があるし避けてはいられない。

 

初めてのイオンシネマは、お客さん5人くらいで、寒々しいが

ホラーにはちょうどいい。

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あらすじ)

臨床心理士の森田奏の周りで突如、奇妙な出来事が起こり始める。

「わんこがねぇやに ふたしちゃろ~♪」 奇妙なわらべ歌を口ずさみ、おかしくなった女性、行方不明になった兄弟、そして繰り返される不可解な変死。

それらの共通点は心霊スポット【犬鳴トンネル】だった。

「トンネルを抜けた先に村があって、そこで××を見た…」突然死した女性が死の直前に残したこの言葉は、一体どんな意味なのか?

全ての謎を突き止めるため、奏は犬鳴トンネルに向かう。

しかしその先には、決して踏み込んではいけない、驚愕の真相があった・・・・

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トンネルに深夜入りカップルが動画撮影する。

10年前ならあり得ないが、ユーチューバー時代にはこういうのが全国にわんさといるんだろう。ネットではこのトンネル前から(中には入れない)映像が山とあるしね。

廃墟に入ってからの恐怖の盛り上げはうまいもんだ。注視できなくなって下向いてた。

恋人女性が自死し、兄は実家に妹(三吉彩花)を呼ぶ。

三吉をスクリーンで初めて見た。

目力の強い大きな体で目の前の衝撃を受け止める存在感が抜群だ。

特別の演技とかないのだがナチュラル。

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随所に現れるホラー描写よりも、三吉が自身が持つ特別の能力を自覚し、家族(父:高嶋政伸 母:高島礼子 祖母:石橋蓮司)の隠された出自を探るファミリーヒストリードラマになっていく。

 

現在の出来事は過去に秘密があり、その鍵探しの旅である。

 

高嶋政伸はクセがある役はいつもうまいが、振り切った高島礼子が秀逸。女優のプライドを捨てたかのような何物感。よく役受けたな。

 

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一方で廃墟の村にまつわる電力会社の闇も描かれる。

ここでその当時の亡霊の出現には参った。

ぺらぺら当時の模様を三吉に説明しだした辺りでトーンが変わる。

これはホラーか?コメディか?

彼女が自分の体と知恵で、今起こっている現象を解き明かしてこそ共感が生まれるのだ。

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ドラマの構成はよかった。

起)お気楽カップルの悲劇

承)主人公の自我の目覚め

転)ファミリーヒストリー

結)亡霊たちの訴え

ラストカットがパート2の布石だろうか?

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既にある日本最恐の「犬鳴伝説」を使って

一家族の、ユーチューブ世代と因習に縛られて生きている二つの世代を描く。

同時に悪徳企業ら資本家に翻弄される住民の恨みがラストでスパークする。

 

俳優の力演、SFXの完成度は素晴らしかった。

縦糸と横糸がかみ合った社会派ホラーになるはずだったが・・・

おしゃべりな亡霊なんかいらない。

 

70点

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長年この伝説に心を揉んでいた地元住民として、映画の形で終止符を打ってくれた東映と清水監督には敬意を表したい。

そもそも亡霊なんていないしね、エンタメの中だけ。