我らがクリント・イーストウッド(88)の新作「THE MULE」(運び屋)が公開される幸せと、トランプ統治のアメリカへの異議申し立てへの期待。
娯楽映画の最高齢記録を更新し続ける天才映画俳優兼監督のクリント・イーストウッドの新作トレーラーがYouTubeにアップされている。
主演はおろか、出演もしないと依然インタビューで語っていたと記憶したが10年ぶりにスクリーンに復活した。
70年代「ダーティーハリー」で世界を席巻したアクション俳優。
ホットドッグ食べながらの悪人退治と44マグナム、ジャケットのカッコ良さ。
もう虜にならずにいられない。
彼は演出にも才能を発揮し「恐怖のメロディ」1971年で初監督兼主演以降、ワーナーブラザース配給で続々と80年~2010年代まで傑作ドラマを産み出し続け、その集大成が「グラン・トリノ」だった。
自分を犠牲にして異国から来た移民の幸せと引き換える。
かつて共和党を支持し2年間は市長として地域社会の抱える問題点を理解したのか、イーストウッド的博愛主義への変化球にファンのみならず世界が唸った。
予告編では、偉丈夫なイーストウッド(45年ファンなのでイメージが確立しているのもある)が、ただただおろおろする痩せた老人になりきっていて、死が近い古老の人で、それだけで落涙の一歩手前になってしまう。
一方で「グラン・トリノ」と違う、何か異質な傑作の予感しかない。
見てはいけないものを見てしまったら奈落へ落ちるしか他にはない。そんな感じが伝わるのだ。
この10年、アメリカ最大の出来事は何たって大統領選にトランプ勝利。
メキシコ国境にも、アメリカ国民にも、世界経済にも壁と分断と混乱をもたらす。
イーストウッドはトランプ統治のアメリカの今に我慢できず、これまでのキャリアから考えられない「ドラッグの運び屋」の役を通して、敢えて出演したのではないか?
残念だけど年齢からすると引退まであと数本だろう。
娯楽作の体で私映画を全世界に配給できる立場と能力が共にあるのは世界の映画界で唯一無二でイーストウッドだけだろう。
「最後に言っておきたいことがある・・・」
そんなとてつもない映画である気がしてならない。
来年の日本公開が待ち遠しい。