映画「クリーピー 偽りの隣人」 黒沢清監督 竹内結子・西島秀俊・川口春奈・東出昌大・香川照之
監督が黒沢清であること。
竹内結子が出ること。
この2つで、見るに値する条件には十分だ。
黒沢作品をスクリーンで見るのは初めてになる。
YouTubeかアマゾンビデオかGYAOでほとんど見てきた。
怖さの質が他監督とは決定的に違う。
殺風景だったり、廃墟だったり、精神病院だったり、ファミレスだったり
都会の日常に潜む恐ろしさを、独自の様式美で見せつけるものだから
ファンにならずにはいられない。
あらすじ)
刑事から犯罪心理学者に転身した高倉(西島秀俊)はある日、以前の同僚野上(東出昌大)から6年前の一家失踪事件の分析を頼まれる。
たった一人の生存者である長女の早紀(川口春奈)の記憶の糸をたぐっても、依然事件の真相は謎に包まれていた。一方、高倉が妻(竹内結子)と一緒に転居した先の隣人は、どこか捉えどころがなく不気味な気配のする中年男だった・・・
郊外の一軒家に住む竹内結子がいい。
主人である西島の学者探偵がサスペンスを産むが、犯罪者香川の強烈なキャラがあってこそ。日中、犯罪者の隣に住む竹内が実は影の主役である。
隣人は変だが、この夫婦はどうなんだ?
極端の省略で何が起こったのか見せてくれない。
だからといって謎の回収ができていない、などとつまらない話は必要ない。
黒沢フィルムなのだ。
そのシーンの構図、カメラの動き、サウンド、そして特筆すべくは
自在な照明ワークと異常者宅のセット美術。
ドローンを使ったであろうワンショットの俯瞰・・・
コの字配置の戸建の恐怖を一発でわからせるうまさ。
まさに随所に映画的至福がある。
東出も川口春菜もその魔術の中で”らしく”見えるのだ。
21世紀の大都市郊外のリアルが見える。
床をめくると地下室に殺戮と不条理が顔を出した。
その目撃者にさせられる。
終盤の逃避行の妙な納得感
現代日本対狂気で釣り合っているのだ。
緑をキーカラーにした撮影設計が見たことのある風景を背景に
見たことのない世界へ誘う。
これがクリエィティブだ。
北野、是枝、黒沢 3Kの新作は見ないと損をする。
95点