批評サムライ  ~映画・ドラマ・小説・エンタメ ★斬り捨て御免!~

責任が何でも曖昧なこの国で娯楽くらいは白黒ハッキリ!大作も小品もアダルトも興業収入も関係ない。超映画批評にない「上映途中の居眠り」が特技。シネマハスラー宇多丸氏、たまむすび町山智浩氏、シネマストリップ高橋ヨシキ氏を見習って公開初日最速レビューを心掛け評価は点数制。地方在住フォトグラファーがど田舎のシネコンでネタバレあり&あらすじ&見たまま感想ブログ

映画「万引き家族」是枝裕和監督 リリー・フランキーの品の無さ、子役のリアルさ、松岡茉優のお宝演技、安藤サクラのふてぶてしさ満開の母性には参った。それよりも「もうおねがい、ゆるして」の5歳女児・船戸結愛ちゃん虐待死と重なり過ぎてどうしようもなかった。

一週間前のプレ上映に行きそびれ、昨日の公開初日に出遅れる。

晩御飯食べてると、NHK7時のニュースでも大ヒットが取り上げられた。

20時から制作委員会のフジテレビが地上波で「海街Diary」だし

監督の国からの表彰辞退、文化庁の支援は受けていた矛盾への非難など、今週は明らかに「是枝祭り」の様相。

土曜の最終上映は多いに決まっているが、行くしかない。

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案の定、いつもの九州のど田舎シネコンほぼ満席。
邦画のシリアスドラマが満席なのはほんとに嬉しいな。

あらすじ)

 東京の下町に、日雇い労働の父・柴田治とクリーニング店で働く妻・信代、息子・祥太、風俗店で働く信代の妹・亜紀、そして家主である祖母・初枝の5人家族。

 家族の収益は初枝の年金と、治と祥太親子で手がける「万引き」。5人は社会の底辺で暮らしながらも家族には笑顔が絶えなかった。

 冬のある日、近所の団地の廊下にひとりの幼い女の子が震えているのを見つけ、見かねた治が連れて帰る。体中に傷跡のある彼女「ゆり」の境遇をおもんばかり、「ゆり」は柴田家の6人目の家族となった。

 しかし、柴田家にある事件が起こり、家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれの秘密と願いが次々に明らかになっていく・・・

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いつもの脱力感漂わせるリリーフランキーが、子供を使っての万引きのスリルと

「万引き家族」のタイトルテロップの出し方の職人芸。

冒頭から心掴む。

映像が微妙に懐かし色と思ったら、デジタルでなくフィルム撮影だと気がついた。

家族の住む、やたら物の多い(いるか、いらないか、わからなさそうな)狭さが昭和感というよりあきらかに低所得者の趣き。

まるで我が家の様で身につまされる。

そして「ゆり」ちゃん登場。

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この子を見ていると「命」を考えざるを得ない。

親の愛に放置され、外で置いておかれるむき出しの「いのち」

「もうおねがい、ゆるして」のあの子と100%重なる。

随分前に目黒区に住んでいたのでなおさらだ。

あまりにタイムリーなドラマ。

 

彼女を誘拐したのも、一瞬で事の重大さを察知した万引き男のある種の感性の豊かさ。犯罪者ではあるけれどもシンパシーを抱いてしまう。

よく出来た脚本だ。

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この5人「家族」の日常の異様さの中の、この絆と暖かさはどうだ。根は悪い人たちでは決してない。

しかし何かみんな裏の顔があるようだ。そこは説明がない、

また、児童相談所とか役所など地域社会の不備など一切指摘しない。

誘拐捜査、裁判も、判決も描かない。北野武演出より省略してしまっている。

底辺で暮らす人々の細部を淡々と描く。

この辺りの丁寧さは平成の小津安二郎だ。

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安藤サクラはオールヌード(背中だけ)でリリーとの夏の夕暮れ、夕立情事を肉食おばさんをさらっと演じる。

取り調べ問答、収監面接の別れと名演技を見せつける。

「100円の恋」でも感じたが世界映画の最前線に立つ女優だな。

今年の主演女優賞は総獲りしかあり得ない。(興味はないが)

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品のない暮らしをしてい疑似家族を描きながら

是枝のいつものテーマ

「人は前を向いて生きていかねばならない」

にプラスして

「命を守るためなら何でもやれ」と

 

万引き家族=偽家族によって、本物の家族の宝であるはず4歳児は救われる。

しかし、偽家族崩壊後は、彼女は愛のない家庭に戻り・・・

いったいその後はどうなるんだろう?

 

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船戸結愛ちゃんのような悲劇にならないように大人の社会はどうするの?

あんたならどうするの?

実親だったら子どもの虐待を許す仕組みをつくった大人のルール=法律を

役者に語らせず、ナレーションもなく、テロップさえ入れない

敢えて主張しない、是枝の品の良さと重なって

ど直球、内角高めに入ってきた。

 

映画をきっかけで、狂った親から子どもを救わないと(法律変える)
ただ感動したで終らせてはいけないと思うな。

モリカケも必要だが、働き方改革法案よりはまず子どもだろう、命だろう。

 

法律改正なら国会議員を働かせないといけない。

現行の運用なら知事を働かせないといけない。

何かしないと、聞こえない悲鳴が日本中で、ご近所から今もあがっている。

 

100点

 

一部の是枝の発言や映画への非難の前に、大人にはまずやることがある。

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児童虐待の防止等に関する法律 一部抜粋 (平成12年5月24日)

 

(目的) 第一条

 この法律は、児童虐待が児童の人権を著しく侵害し、その心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるとともに、我が国における将来の世代の育成にも懸念を及ぼすことにかんがみ、児童に対する虐待の禁止、児童虐待の予防及び早期発見その他の児童虐待の防止に関する国及び地方公共団体の責務、児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援のための措置等を定めることにより、児童虐待の防止等に関する施策を促進し、もって児童の権利利益の擁護に資することを目的とする。

(児童虐待の定義) 第二条 

この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。

一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。

二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。

三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。

四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

(児童に対する虐待の禁止) 第三条 

何人も、児童に対し、虐待をしてはならない。

(国及び地方公共団体の責務等) 第四条 

国及び地方公共団体は、児童虐待の予防及び早期発見、迅速かつ適切な児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援(児童虐待を受けた後十八歳となった者に対する自立の支援を含む。第三項及び次条第二項において同じ。)並びに児童虐待を行った保護者に対する親子の再統合の促進への配慮その他の児童虐待を受けた児童が良好な家庭的環境で生活するために必要な配慮をした適切な指導及び支援を行うため、関係省庁相互間その他関係機関及び民間団体の間の連携の強化、民間団体の支援、医療の提供体制の整備その他児童虐待の防止等のために必要な体制の整備に努めなければならない。

2 国及び地方公共団体は、児童相談所等関係機関の職員及び学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、保健師、弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者が児童虐待を早期に発見し、その他児童虐待の防止に寄与することができるよう、研修等必要な措置を講ずるものとする。

3 国及び地方公共団体は、児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援を専門的知識に基づき適切に行うことができるよう、児童相談所等関係機関の職員、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援の職務に携わる者の人材の確保及び資質の向上を図るため、研修等必要な措置を講ずるものとする。

4 国及び地方公共団体は、児童虐待の防止に資するため、児童の人権、児童虐待が児童に及ぼす影響、児童虐待に係る通告義務等について必要な広報その他の啓発活動に努めなければならない。

5 国及び地方公共団体は、児童虐待を受けた児童がその心身に著しく重大な被害を受けた事例の分析を行うとともに、児童虐待の予防及び早期発見のための方策、児童虐待を受けた児童のケア並びに児童虐待を行った保護者の指導及び支援のあり方、学校の教職員及び児童福祉施設の職員が児童虐待の防止に果たすべき役割その他児童虐待の防止等のために必要な事項についての調査研究及び検証を行うものとする。

6 児童の親権を行う者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を有するものであって、親権を行うに当たっては、できる限り児童の利益を尊重するよう努めなければならない。

7 何人も、児童の健全な成長のために、良好な家庭的環境及び近隣社会の連帯が求められていることに留意しなければならない。

(児童虐待に係る通告) 第六条 

児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。

2 前項の規定による通告は、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第二十五条の規定による通告とみなして、同法の規定を適用する。

3 刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第一項の規定による通告をする義務の遵守を妨げるものと解釈してはならない。

第七条 市町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所が前条第一項の規定による通告を受けた場合においては、当該通告を受けた市町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所の所長、所員その他の職員及び当該通告を仲介した児童委員は、その職務上知り得た事項であって当該通告をした者を特定させるものを漏らしてはならない。

(通告又は送致を受けた場合の措置) 第八条 

市町村又は都道府県の設置する福祉事務所が第六条第一項の規定による通告を受けたときは、市町村又は福祉事務所の長は、必要に応じ近隣住民、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他の者の協力を得つつ、当該児童との面会その他の当該児童の安全の確認を行うための措置を講ずるとともに、必要に応じ次に掲げる措置を採るものとする。

一 児童福祉法第二十五条の七第一項第一号若しくは第二項第一号又は第二十五条の八第一号の規定により当該児童を児童相談所に送致すること。

二 当該児童のうち次条第一項の規定による出頭の求め及び調査若しくは質問、第九条第一項の規定による立入り及び調査若しくは質問又は児童福祉法第三十三条第一項若しくは第二項の規定による一時保護の実施が適当であると認めるものを都道府県知事又は児童相談所長へ通知すること。

2 児童相談所が第六条第一項の規定による通告又は児童福祉法第二十五条の七第一項第一号若しくは第二項第一号又は第二十五条の八第一号の規定による送致を受けたときは、児童相談所長は、必要に応じ近隣住民、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他の者の協力を得つつ、当該児童との面会その他の当該児童の安全の確認を行うための措置を講ずるとともに、必要に応じ同法第三十三条第一項の規定による一時保護を行うものとする。

3 前二項の児童の安全の確認を行うための措置、児童相談所への送致又は一時保護を行う者は、速やかにこれを行うものとする。

(児童虐待を行った保護者に対する指導等) 第十一条 

児童虐待を行った保護者について児童福祉法第二十七条第一項第二号の規定により行われる指導は、親子の再統合への配慮その他の児童虐待を受けた児童が良好な家庭的環境で生活するために必要な配慮の下に適切に行われなければならない。

2 児童虐待を行った保護者について児童福祉法第二十七条第一項第二号の措置が採られた場合においては、当該保護者は、同号の指導を受けなければならない。

3 前項の場合において保護者が同項の指導を受けないときは、都道府県知事は、当該保護者に対し、同項の指導を受けるよう勧告することができる。

4 都道府県知事は、前項の規定による勧告を受けた保護者が当該勧告に従わない場合において必要があると認めるときは、児童福祉法第三十三条第二項の規定により児童相談所長をして児童虐待を受けた児童に一時保護を加えさせ又は適当な者に一時保護を加えることを委託させ、同法第二十七条第一項第三号又は第二十八条第一項の規定による措置を採る等の必要な措置を講ずるものとする。

5 児童相談所長は、第三項の規定による勧告を受けた保護者が当該勧告に従わず、その監護する児童に対し親権を行わせることが著しく当該児童の福祉を害する場合には、必要に応じて、適切に、児童福祉法第三十三条の七の規定による請求を行うものとする。

映画「モリーズ・ゲーム」ジェシカ・チャステイン主演 ポーカー賭博の若き経営者の今風イケイケ成功譚と思いきや、奇妙なディスカッションを見せられて窒息しそう。

大好きなジェシカ・チャステイン

彼女の知的でミステリアスな匂いがたまらなくいい。

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「ユダヤ人を救った動物園 〜アントニーナが愛した命」

「女神の見えざる手」と連続見逃したので

今回は何とか終映迄に間にあった。

最近は回転早すぎて困るな。

スーパーイオンだし、映画の日でみんな安いし、金曜だし・・30人はいるだろうと思いきや・・・5人。男は私だけ。

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冒頭のモーグルの試合のスピード感がたまらなくいいね。

競技のポイント、戦略に加えて、略歴、父との関係、生き方などを自らの言葉で語る。

1秒に満たないカットをどんどん入れてくる。

40過ぎのアラフォーだけどオリンピック級のアスリート姿が凛々しい。

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「ソーシャル・ネットワーク」よりはるかにリズムがあって掴みは満点。

しかし、引退してからのサクセスストーリーがわかりにくい。

人の出入りはそんなぬ多くないが、セリフ量が「シン・ゴジラ」に匹敵するが、カードゲームの素養がないので言ってることが腑に落ちない。

落ちない中で、次のセリフでまたわからなくなる。悪循環。

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そこにFBI逮捕で裁判が進行するので弁護士との丁々発止がある。

このやりとりがまた言葉遊びを始めてしまう。

どいつもこいつもよくしゃべる。

ついていけなくなって久しぶりに寝てしまった。

人がいないと、熟睡もしやすい。

ロシアンマフィアに殴られるところで起きた。

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身も心もボロボロになったあたりで父とスケートリンクで再会する。

ここでお互いの心情を吐露する。

頭がいいのに、賭博場経営というリスキーで危険な生き方をする娘の核心に迫る。

どっかで見たぞ。

 

「ある愛の詩」か?「普通の人々」か?

ここから裁判のクライマックスまでがさらに、

登場人物おしゃべりMAXで、見る気が失せる。

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縦軸に逮捕から裁判、横軸に彼女の生き方、父との和解がスパイスなんだろうけども

ディスカッションが多すぎて密室劇だな。

実に息苦しい。

大都会の欲望まみれのギャンブル依存症ホワイトカラーの生態を描く為に、脚本は超リアルなんだけどね。ただそれだけ。

 

映画を見にきたのに、演劇中継見せられた様な違和感。

みんなキャラ作ってはいるが「セリフ仕事」で薄っぺらに見えるんだな。

なんだかな~

 

30点

映画「孤狼の血」公開初日最速レビュー 白石和彌監督 役所広司、松坂桃李、江口洋介、真木よう子 「警察じゃけえ、何をしてもええんじゃ」のキャッチは宙に浮き深作欣二でなくて、黒澤明リスペクトの違和感で「仁義なき戦い」ファンはがっかり。

仕事やあれこれでなかなか映画館に行けない。
その間に見たい映画が結構な本数流れて行く。

そんな中、予告がかなり攻めてる感じが記憶に残った。
広島が舞台の実録ヤクザ路線ときたら「仁義なき戦い」の2018年版ではないか?

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しかも今や誰と共演しようと、主役とトメ(テロップの最後に名前の出る大物俳優)しかあり得ない役所と、若手のホープ、松坂がコンビを組んで、監督は白石だし。

期待しない方が難しい。

昨年のベスト10に入った「彼女がその名を知らない鳥たち」の演出は良かった。

特に松坂はこの映画から飛躍した感がある。

ピエール瀧もいるし「終戦のローレライ」
石橋蓮司もいれば「アウトレイジ」

いろんな映画で見かけた名バイプレイヤー終結も期待できる。

公開初日の土曜日の初回は朝10時。

いつものど田舎シネコンの定位置で20名くらいの割と高齢者の映画ファンと幕を開けた。

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あらすじ)

昭和63年、暴力団対策法成立直前の広島。所轄署に配属となった日岡秀一は、暴力団との癒着を噂される刑事・大上章吾とともに、金融会 社社員失踪事件の捜査を担当する。常軌を逸した大上の捜査に戸惑う日岡。失踪事件を発端に、対立する暴力団組同士の抗争が激化し・・・

 

冒頭、豚だ。

映画の掴みが大事だけれど、いきなりその尻の穴のアップで始まる。

アウトロー達の情け容赦なし暴力シーンが続く。

背景説明をナレーションで入れる「仁義なき」方式を踏襲する。

このリズムが東映昭和感で嬉しい。

さらに松坂以外、全員の広島弁が楽しめる。

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破天荒なベテラン大上と、対立する新人の日岡

組同士も抗争を繰り返す中で、策を練る大上。

さらに殺人容疑のサスペンスも絡んで・・・

 

役所と松坂のキャラ立ちがOKだけど、ヤクザ達の出入りが見えない。

どうしても「仁義なき」を見ているのでそのわかりやすさと比較してしまう。

ドラマを引っ掻き回す金子信夫はいないし、優柔不断な田中邦衛もいない。

コメディが抜け落ちている。

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なんか違和感がある。途中でわかった。

構成は「野良犬」+「用心棒」ではないか?

最後は「赤ひげ」的でもある。

なるほど黒澤映画3本の面白さを白石はまとめようとしたんだな。

深作欣二ではなくて、東宝の黒澤リスペクトだ。

天才黒澤明は画面の説得力が抜群だけど、そうでない白石はもっとナレーションとか地図とか組織図とか使って暴力の支配する地方都市を描かないといけないのに、役者に頼った。

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他の出演者はいい味だしていた。

久しぶりにスクリーンで見た真木よう子は綺麗だった。元気になって写真集とか出して欲しいな。

最近男の色気が出てきた江口洋介は出番が少なくてかわいそう。

 

ヤクザ組織の大きな対立が先にあって都市が悲鳴をあげている背景をたっぷり見せた上で、正義の代行者である警察内の2つの個性の対立を見せてくれれば普通に物語に酔えたのに。

 

個々のバイオレンスと言葉の面白さはあってもね。

「アウトレイジシリーズ」の北野武の凄さに改めて脱帽する。

 

企画はいいのに、映画の作法=シナリオがとても残念な意欲作

とでも言おうか・・・

 

70点 

映画「クソ野郎と美しき世界」園子温、山内ケンジ、児玉裕一らの才気ないプロモーション的映像と、監督太田光+カメラ瀧本幹也+草彅剛のロードムービーが余りにアンバランスな、業界向けマスターベーションに付き合わされるクソ映画

すっかり月曜日はauマンディ(終日1100円)ということで、東宝シネマズ系列のスケジュールを見ていることが多い。

 

2週間限定公開?という不思議なプロモーションに釣られてしまい、元SMAPのファンでないが、園子温と爆笑問題の太田光演出と、役者として傑出している草彅剛を見たくて近所のイオンに向かった。

平日の18時とはいえ、巨大スーパーイオンで観客はたったの5人・・・

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ポスターからしてタランティーノ風で、3人のアウトローが銀行でも襲うのか?

しかし3監督なのでオムニバスということなので、「新しい地図」のCMは見たことがあるがイメージだけで、この映画こそ彼らのそれぞれの方向性が示唆されているに決まっている、日本のエンタメに波風起こそうとする気概あり、と勝手に解釈して席に座った。

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いきなり女が走る。追うヤクザ。お祭りパレード中に起きる逃走劇

稲垣吾郎は女に惚れられるピアニスト、彼のナレーションで回想シーンが割り込む。

オーバーな演技と原色衣装だけが目立つ。

物語はあってないような風は60年代フランスヌーベルバーグ風なのだが

「気狂いピエロ」ゴダールのような即興はなく

「ピアニストを撃て」トリフォーのような予測不能さなく

単に、奇をてらった、悪ふざけにつき合わされた役者が本当に気の毒。

またしても才能の枯渇を証明したのか?園子温

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第2話「慎吾ちゃんと歌喰いの巻」山内ケンジ監督

歌手で絵描きのアーティス・香取慎吾本人と歌喰い少女とのよくわからない関係が全く魅力的に描いてくれない。

途中から色鮮やかな「うんこ」が主役になってしまって、しかもそれを食べる・・

その感性にはついていけない、いきたくない世界。

(香取慎吾の現在の心模様を描いているならば別だけれど)

久しぶりに、時間泥棒、と叫びたかった。

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第3話「光へ、航る」太田光監督

一変して爆笑問題のボケ担当は色彩が前の2作品と違うのがすぐわかる。

外のシーンから昼間のブルーが写真のブルーに近い。(カメラマンは「海街Diary」の瀧本幹也だった)

この色の中で、草彅剛のオーラが光る。

都会で暮らす周囲と折り合いのつかない兄ちゃんを演らせると最高だね。

荒涼とした感じ、風に吹かれている感の不思議な魅力あるんだな。

警官役の新井浩文にも言えるけど。

尾野真千子もやり過ぎないしうまいな。

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役柄の心情が見えてくる。凄い役者になったな。

唯一、背景をボケ過ぎのマクロレンズ使った様な処理はどうなんだろう?

観客に想いは届いているんだから蛇足だと思うな。

 太田光はテレビ出演を抑えてでも長編で草彅と組んで欲しいな。
北野武のようなことはなかなか出来やしない。

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最終章「新しい詩」児玉裕一監督

一転して3人集まっての香取慎吾ミュージカル仕立ても、3本バラバラの最後に急に足りないものを全部付け足して、いったい何?

長い長いエンドクレジットに、CM、PVで活躍する、クリエイティブなんとかみたいな横文字の人を並べて、業界の一流どころが集まったお仕事でした、と内輪受けなんだろう。

観客からはこの2時間、ただの一言も、笑いも、驚きも、涙も、何一つ聞こえない。

”情けない”の一言に尽きる。

 

第3話以外、ここ数年見たことがないよう出来損ないはお見事としかいいようがない。

稲垣吾郎、草彅剛は既に日本映画を背負う素晴らしい役者(香取は違うと思う)なんだからこんな企画で彼らの「新しい地図」を汚してはいけない。

 

この映画は企画ありきのクソ映画であることは間違いない。

 

10点

映画「15時17分、パリ行き」おそらく世界最高齢の映画監督クリント・イーストウッドの大変化球に戸惑うも「境地3部作」と思えば是非に及ばず

何たって我らのイーストウッド

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60年代生まれの映画少年ならバイクに長い脚のせて都会を疾走する「アリゾナ無宿」が忘れられるはずがない。

俳優として好きだけど、監督としてが余りに素晴らしい。

「マディソン郡の橋 1995」の大人の恋愛模様の切なさ

「ミスティック・リバー 2003」の心理サスペンスの探り合い

「アメリカンスナイパー 2014」の戦闘シーンの圧倒的なリアル、などなど・・・

間違いなく映像表現の最先端を世界最高齢監督が続々更新していく様を映画ファンは目にしてきた。

しかも1990年以降じゃほぼ毎年、作品をリリースしていく
自身が率いる制作会社マルパソプロを持っているとしてもだ。

信じられない早撮りの奇跡。

その最新作がひっそり公開されていく。

見に行かずにはいかない。

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あらすじ)

2015年8月21日に、554人の乗客を乗せたアムステルダム発、パリ行きの高速鉄道タリス車内で、突如、イスラム過激派の武装したモロッコ国籍の男が乗車してきた。その男は自動小銃を持っていて、無差別に撃ち殺そうとしていた。

旅行中で偶然乗っていたアメリカ軍兵のスペンサー・ストーン氏とオレゴン州兵アレク・スカラトス氏、そして2人の友人であるアメリカ人大学生アンソニー・サドラー氏の3人がテロリストに立ち向かっていく・・・

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冒頭でテロリストが現れるが、すぐに3人の少年期に入る。

出会い、学校と折り合いのつかなさ、母とシングル家庭のつらさが丁寧過ぎるほど描かれる。

時々列車内がインサートされるが、3人のこれまでのある意味パッとしない様が描かれる。ドラマの山もなければ谷もない。

やがて成人し、ヨーロッパで再会、パリ行き列車に乗る。

ここから一気に動き出すのだが・・・

これまでのイーストウッド映画にない”奇妙な”味わいをどうしていいかわからない。

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これまでのフィルモグラフィーの中で

「許されざる者 1992」、「グラントリノ 2008」の雰囲気に近い。

大アクション、娯楽作の合間に死生観をテーマの渋い変化球を投げてくる。

私は「境地シリーズ」と呼んでいる。

(「ヒア アフター 2010」は余りに明確な主張が強すぎて違う気がする)

本物の芸術家だけが到達するある領域

例えば、織田信長が本能寺の乱で自死の間際に言ったとされる

「是非に及ばず」に近いかもしれない。

善悪でない、受け入れるしかない世界観

(イーストウッドはTM瞑想を長く実践している)

「パリ行き」はシリーズ3作目に位置するドラマともいえる。

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起承転結の王道とはかけ離れた構成であることは

神様イーストウッドは百も承知だろう。

 

ラスト15分の反撃で「人は変われる」を証明するために長々と幼少期を描く

カットできるのにしない勇気

何より役者でない、本物のヒーローにドラマを再現させた信念には驚く

 

これまで40年近く愉しませてもらった映画人が何をどう撮ろうとついていくしかない。それが私なりのリスペクトだ。

そういう映画人は、アメリカにイーストウッド

ヨーロッパにラース・フォン・トリアーとミハエル・ハネケ

日本に北野武、黒沢清など10人もいない。

今はわからないが70超えたらわかるのかも知れない。

それでいい。

 

この映画は評価できないし、する気もない。

ドラマであってドラマでない。

ある「境地」を体感する映画なのだ。

だから「是非に及ばず」

 

次回作はビヨンセと組んだ「スター誕生」のリメイクらしい。

私はバーブラ・ストライサンドが主演の第3作のこの曲が大好きだ。

 


A star is born - Evergreen

 

クリント・イーストウッドは

1930年生まれで5月に、88歳になる。

映画「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」スピルバーグ監督 トム・ハンクス主演 公開初日に為政者とのペンの戦争と新聞記者の矜持を見たかったが、ストリープの、ストリープによる、ストリープのための映画を見せられて困った

スピルバーグの新作を公開初日に見るこれはワクワクする。

他の監督よりは見ている気になったが最期に見た作品は「インディジョーンズ クリスタル・スカルの王国」で2008なので10年ぶりだった。トム・ハンクス主演では、「プライベート・ライアン」以来なので20年ぶりか。

金曜日の夕暮れ、いつもの映画館、いつもの席で、いつもの混み具合で、いつものように幕が開く。

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あらすじ)

1971年、ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国内には反戦の気運が高まっていた。国防総省はベトナム戦争について客観的に調査・分析する文書を作成していたが、戦争の長期化により、それは7000枚に及ぶ膨大な量に膨れあがっていた。
ある日、その文書が流出し、ニューヨーク・タイムズが内容の一部をスクープした。
ライバル紙のニューヨーク・タイムズに先を越され、ワシントン・ポストのトップでアメリカ主要新聞社史上初の女性発行人キャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)と編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)は、残りの文書を独自に入手し、全貌を公表しようと奔走する。真実を伝えたいという気持ちが彼らを駆り立てていた。
しかし、ニクソン大統領があらゆる手段で記事を差し止めようとするのは明らかだった。政府を敵に回してまで、本当に記事にするのか…報道の自由、信念を懸けた“決断”の時は近づいていた。

 

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ベトナム戦争の現場から始まる。

戦場を描かせたら撮影のカミンスキー色は最高にリアルだね。

冒頭の掴みがスピルバーグのお約束で相変わらずのキレの良さ。

ここから機密文章暴露をニューヨークタイムスに先を越されるまでがプロローグ

トムハンクス登場から文章入手までが前半、入手から公表までがヤマ場で

エピローグが裁判の勝利と起承転結の見本だ。

 

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新聞記者映画と言えば76年のアラン・J・パクラの「大統領の陰謀」で

記者が関係者に取材して廻る。足で稼ぐ姿が印象的だったが今回は調査報道。

動きがない。記者目線でミステリーを明らかにしていく過程の面白さがない。

報道によって明らかになった真実の提示が余りに少ないし丁寧さに欠く。

代わりに女社長の人間関係の動きがあるがこれが面白くないのだ。 

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自殺した主人の代わりに主婦から社長となった苦労を

娘を引っ張り出して名女優に語らせる。

おいおい、「吉永小百合映画」かよ。

お涙頂戴になった途端に興ざめだよ。

政府側のドタバタを見せるとか、記者側との軋轢とか

報道による為政者へのダメージと意義が観客に今ひとつ伝わらない。

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随所に報道の自由を思わせる気の利いたセリフはあるが、ハリウッドお得の法廷闘争はメリハリが出来るか、頭の体操に無理やり参加させられドラマを矮小化してしまう。

ストリープの、ストリープによる、ストリープのための映画になってしまい、われらのトム・ハンクスはただの引き立て役に終始。

ホワイトハウスとのハラハラする火花を背景に

記者の矜持を見れると勝手に思った私がバカだった・・・

 

70点

映画「去年の冬、きみと別れ」岩田剛典、山本美月、斎藤工、浅見れいな、土村芳、北村一輝 焦る脚本と力が入った稚拙な演技が目立ち、どんでん返しの魅力が半減した残念作

カメラマンが例え探偵でも、殺人者であってもドラマになればこれは見たくなる。

どんなカメラで、何を撮っているのか?

自分も含めて変人多いしね。

それに原作は話題の作家・中村文則のミステリーだし

「BG」で落ち着いた感じの斎藤工がどういう芝居を見せるか?

やっといつもの、ど田舎シネコンの定位置にひとり収まり
最終回の少ない観客と邦画を楽しめる。

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あらすじ)

婚約者との結婚を控え、幸せの只中にいる新進気鋭のライター・耶雲恭介。

彼が次の仕事のターゲットとしたのは、連続焼死事件の容疑で逮捕された天才写真家・木原坂雄大でした。

彼は何のために二人の女性を焼き殺したのか?

それは本当に彼の仕業だったのか?

事件の真相を追って木原坂や彼の姉、そして謎の人形師などに取材を試みるうち、いつの間にか彼らの術中にはまって抜け出せなくなっていく耶雲。

果たして耶雲は、婚約者との元の幸せな日々に戻ることができるのか・・・

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岩田剛典という人をこれまで見たことも聞いたこともない。

固定観念かも知れないがライターという自由業のもつ独特のやさくれ感がない。

迷いのない、隙のない、誰に対してもぐいぐい迫る一本気は、共感できない。

(この一貫さがどんでん返しの伏線でもあったことがわかるのだが)

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天才カメラマン役の斎藤工。

今回はその輝きが足りなかった。

これは脚本ミスだな。

知らない男に家の鍵を渡す異様さとか

何故に天才なのか、さっぱりわからない。

このキャラ設定が不十分だと、発言の重みと深みが感じられない。

エピソードを重ねて丁寧に映像で見せないといけない。

先を急ぎ過ぎ、この辺りは黒沢清を勉強して欲しい。

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対して彼女役の山本美月は幸薄感がいいな。

(福岡出身なので応援してます)
後半のキーウーマンなんだけど美女と悲劇は相性がいいね。

かわいそうなのが北村一輝

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物語の最大のキーマンなのだが

そこまではライターのボスとして敏腕編集長然としてキャラ作りに成功していたが、感情の揺れを吐露するシーンの下手さはどうしたんだろう。途端に学芸会になった。

これまで見たドラマのカッコ良さはなんだったのか?

別テークをやらせるか、カットして構成変えるかしないとね。

これは監督の演出力の無さだな。

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収穫は浅見れいな

対談した宝塚男役のようなキリッと感とミステリアスが似合う。

30代の訳ありショートカット美女は恐ろしい。

 

 

 

どんでん返しは確かに面白く見れたけど登場人物の誰にも共感がないし

どいつもこいつも悪人だらけで後味はかなり悪い。

 

おまけに最後に流れるイメージソング

3分の音楽で2時間の苦労を一瞬で台無しにするこの手法

殺意さえ覚えた。

 

70点