批評サムライ  ~映画・ドラマ・小説・エンタメ ★斬り捨て御免!~

責任が何でも曖昧なこの国で娯楽くらいは白黒ハッキリ!大作も小品もアダルトも興業収入も関係ない。超映画批評にない「上映途中の居眠り」が特技。シネマハスラー宇多丸氏、たまむすび町山智浩氏、シネマストリップ高橋ヨシキ氏を見習って公開初日最速レビューを心掛け評価は点数制。地方在住フォトグラファーがど田舎のシネコンでネタバレあり&あらすじ&見たまま感想ブログ

映画「孤狼の血」公開初日最速レビュー 白石和彌監督 役所広司、松坂桃李、江口洋介、真木よう子 「警察じゃけえ、何をしてもええんじゃ」のキャッチは宙に浮き深作欣二でなくて、黒澤明リスペクトの違和感で「仁義なき戦い」ファンはがっかり。

仕事やあれこれでなかなか映画館に行けない。
その間に見たい映画が結構な本数流れて行く。

そんな中、予告がかなり攻めてる感じが記憶に残った。
広島が舞台の実録ヤクザ路線ときたら「仁義なき戦い」の2018年版ではないか?

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しかも今や誰と共演しようと、主役とトメ(テロップの最後に名前の出る大物俳優)しかあり得ない役所と、若手のホープ、松坂がコンビを組んで、監督は白石だし。

期待しない方が難しい。

昨年のベスト10に入った「彼女がその名を知らない鳥たち」の演出は良かった。

特に松坂はこの映画から飛躍した感がある。

ピエール瀧もいるし「終戦のローレライ」
石橋蓮司もいれば「アウトレイジ」

いろんな映画で見かけた名バイプレイヤー終結も期待できる。

公開初日の土曜日の初回は朝10時。

いつものど田舎シネコンの定位置で20名くらいの割と高齢者の映画ファンと幕を開けた。

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あらすじ)

昭和63年、暴力団対策法成立直前の広島。所轄署に配属となった日岡秀一は、暴力団との癒着を噂される刑事・大上章吾とともに、金融会 社社員失踪事件の捜査を担当する。常軌を逸した大上の捜査に戸惑う日岡。失踪事件を発端に、対立する暴力団組同士の抗争が激化し・・・

 

冒頭、豚だ。

映画の掴みが大事だけれど、いきなりその尻の穴のアップで始まる。

アウトロー達の情け容赦なし暴力シーンが続く。

背景説明をナレーションで入れる「仁義なき」方式を踏襲する。

このリズムが東映昭和感で嬉しい。

さらに松坂以外、全員の広島弁が楽しめる。

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破天荒なベテラン大上と、対立する新人の日岡

組同士も抗争を繰り返す中で、策を練る大上。

さらに殺人容疑のサスペンスも絡んで・・・

 

役所と松坂のキャラ立ちがOKだけど、ヤクザ達の出入りが見えない。

どうしても「仁義なき」を見ているのでそのわかりやすさと比較してしまう。

ドラマを引っ掻き回す金子信夫はいないし、優柔不断な田中邦衛もいない。

コメディが抜け落ちている。

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なんか違和感がある。途中でわかった。

構成は「野良犬」+「用心棒」ではないか?

最後は「赤ひげ」的でもある。

なるほど黒澤映画3本の面白さを白石はまとめようとしたんだな。

深作欣二ではなくて、東宝の黒澤リスペクトだ。

天才黒澤明は画面の説得力が抜群だけど、そうでない白石はもっとナレーションとか地図とか組織図とか使って暴力の支配する地方都市を描かないといけないのに、役者に頼った。

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他の出演者はいい味だしていた。

久しぶりにスクリーンで見た真木よう子は綺麗だった。元気になって写真集とか出して欲しいな。

最近男の色気が出てきた江口洋介は出番が少なくてかわいそう。

 

ヤクザ組織の大きな対立が先にあって都市が悲鳴をあげている背景をたっぷり見せた上で、正義の代行者である警察内の2つの個性の対立を見せてくれれば普通に物語に酔えたのに。

 

個々のバイオレンスと言葉の面白さはあってもね。

「アウトレイジシリーズ」の北野武の凄さに改めて脱帽する。

 

企画はいいのに、映画の作法=シナリオがとても残念な意欲作

とでも言おうか・・・

 

70点