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批評サムライ  ~映画・ドラマ・小説・エンタメ ★斬り捨て御免!~

責任が何でも曖昧なこの国で娯楽くらいは白黒ハッキリ!大作も小品もアダルトも興業収入も関係ない。超映画批評にない「上映途中の居眠り」が特技。シネマハスラー・宇多丸氏やたまむすび・町山智浩氏のブログを見習って公開初日最速レビューを心掛け、評価は点数制。みうらじゅんとカンパニー松尾をリスペクトするフォトグラファーがお届けします。

映画「ハドソン川の奇跡」 クリント・イーストウッド監督

待ちに待った伝説の男の物語

 

確かそれは中学時代

「マンハッタン無宿」のTV放映でその姿を焼き付けた。

スーツを着たまま長い手脚でバイクを乗り回す姿が

「大脱走」マックウィーンのナチスからの逃亡と比較しても

優とも劣らないカッコ良さ。

 

それはアメリカだった。

無口で、お洒落で、強くて、皮肉屋で・・・

男の中の男だと。

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それから彼は、自分のプロダクションを作り

アメリカン・ニューシネマ、カンフー、ホラー、SF、スーパーSFX、3D

世界的ブームやヒットのどんなスタイルにも組みせず、極力特殊撮影とは距離を置いて

人間ドラマに徹したエンタメイーストウッド・スタイル(寡黙で知的でワイルド)

に出演し、演出し、それを50年間貫いた。

 

その間多くのスターが生まれ、そして消えていった。

スティーブ・マックウィーン、ポール・ニューマン

スタローン、シュワルツネガー、ロバート・レッドフォード

ダスティン・ホフマンアル・パチーノハリソン・フォード・・

 

アメリカ映画界恒例の稼ぐ役者ランキング「マネーメイキングスター10」に

通算21年選ばれている

トム・クルーズは20年、トム・ハンクスが17年)

西部劇スターのジョン・ウェインに次いで2位

映画監督兼任はイーストウッドだけ。

 

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特に好きなのが、主演と演出の

恐怖のメロディ

ガントレット

「ペイルライダー」

マディソン郡の橋

グラン・トリノ

 

演出のみで

「バード」

ミスティック・リバー

ジャージー・ボーイズ

アメリカン・スナイパー

 

女好きDJから家族を失ったガンマン、カメラマンを演じ

破滅型ピアノ弾き、不条理サスペンス、ミュージシャンの興亡

イラク戦争の内なる戦いまで描く。

 

その映像スタイルは

省略、メタファーなしのオーソドックス

セルフは少なく、サイレント指向だ。

 

撮影は1テイクのみで早撮りの名手

余分なカットはほとんどないので編集など

後制作が楽で、故に公開までが早い。

 

私がSFX嫌いなのは、イーストウッド映画に

過剰がないことがあるのかも知れない。

 

「過不足ない」のだ。

これは凄いことだ。

 

そんなリスペクトしかないイーストウッドの最新作を見た。

金曜、九州のど田舎シネコンに16時30分スタート。

観客は10人弱、いい塩梅だ。

 

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あらすじ)

2009年1月15日激寒のニューヨークをシアトルに向けて飛び立ったUSエアウェイス"1549便は離陸直後に「バードストライク」と呼ばれる鳥がエンジンに飛び込む事故が発生。両方のエンジンが停止した状態で緊急の判断を迫られたチェス"レイ・サレンバーガー機長はキャリア42年のベテランパイロット。

このままでは155人の乗客乗員の命はおろか、下手をすれば70トンの機体がニューヨーク市内に落ちるかもしれない緊迫の事態。墜落までのリミットは約4分、速度と高度を計算しながら管制塔との緊迫のやり取りで一度は近くのテターボロ空港への着陸を検討するのだがそれも無理と判断したサレンバーガー機長は独自の判断でハドソン川に不時着を決意。    

過去にも川への着陸を試みた旅客機があったのだが失敗し大惨事となったケースがあったのだが、サレンバーガー機長はハドソン川奇跡の不時着に成功155人全員の命を救ったのだった。    

事故当時ハドソン川は氷点下6度、水温2度と記録されているなかサレンバーガー機長をはじめとするUSエアウェイス"の乗組員たちは決められた手順で冷静に脱出活動にあたった。    

事故後、サレンバーガー機長とジェフリー・スカイルス副操縦士はヒーローとして米国民に称賛されホワイトハウスではオバマ大統領からも感謝状が贈られるのだが、事故を捜査していた当局から殺人罪の容疑をかけられるのであった・・・

 

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期待が多き過ぎなのか違和感があった。

いつもの様なクラクラするものがない。

何かスッキリしない。

 

トラブル発生から飛行機の着水と脱出、救助は

本物の飛行機飛ばして撮影したせいで臨場感は抜群で

中年CAたちのが特に生生しい。

 

ただ独特の構成のせいかも知れない

前半が時制の流れに沿って見せてはくれないので

まず映画鑑賞のリズムが微妙に狂うのでノレナイのだ。

 

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川への不時着で機長の人間性が問われるが、家族との絆が、妻との電話でのみ処理される。ここが弱い。

 いつもは家族を守っている男が、危機にあって逆に守られてこその

共感ではないか。

 

事故調査委員会側の疑念を、論理的に丁寧に描いておけば

「確かにそういう見方もあるな」とライバルが強く見える。

 

ポーカーで例えると

観客に委員会のカードAを見せて、最後に機長のカードBで勝つと

サスペンスが盛り上がる。

 

グラン・トリノ」の様に

強いギャング集団がいてこそ、そこに立ち向かうイーストウッドが光る。

 

甘いカードを配ったが故に

勝つには勝ったが、相対的に勝利(共感)が薄いのは自明だ。

 

ラストシーンの再会と感謝は映画的には蛇足だと思う。

ここは省略だ。

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映画の神様が、省略をいくつか読み違えた。

 

ラストの感傷が過ぎると(多くの日本映画はこれで失敗する)

本質から逸れる。

それを凡庸と呼ぶ。

 

それでも、私の最後のアメリカンヒーローであることに
何ら変更はない。

今年86歳のイーストウッド次回作に

どんな監督よりも期待する。

 

泣きながらの、70点

 

次回作は、映画のすべてが詰まったお手本

「男と女」デジタルリマスター版

 

初めて見た時の衝撃は大きかった。

「オトナ」を見たのだから。

60年代フランス映画は凄かった。

 


映画『男と女デジタル・リマスター』予告編

 

もしくはトム・ハンクスの新作「インフェルノ」か?