小説「花祀り」 花房観音著
寝る直前に読むもんだから5ページか20ページしか進まない
いつものスロー読書で「1Q84」を7月から読み出して
やっと3巻目の途中で迎えた恒例のマスコミバカ騒ぎの夜。
ボブ・ディランが受賞するんなら
吉田卓郎は? 中島みゆきは? 桑田圭祐は?
来年以降も続くのだろうか・・村上春樹祭りは?
同じまつりでもこの「花祀り」は素晴らしい完成度で驚いた。
村上はメタファー探しで頭を使うが
この作品では「女体は和菓子」と明文化され
京の男衆が猥褻の限りで20代処女の和菓子職人を
一流の女に育てる。
以前からカンパニー松尾のAV作品のファンで膨大な
作品群の8割を追っかけて見てきた。
いわゆるハメ撮りスタイルの創始者で
ストーリーはあってないも同然。
女と出会い、車に乗せ、インタビューをして
途中で悪戯して、ホテルでいたす。
全工程を一人で運転、インタビュー、撮影、セックス、編集、演出までするのはまさに驚異的で、随所に映像センスと音楽センスが光る。並の才能ではない。(近々批評を載せる)
アダルト映像に弁証法を持ち込んだとんでもない映像作家として尊敬しているが、観音もブログで松尾を強く支持していて、同じ匂いがしたのでいつか読みたいと思っていた。
公立の図書館にはこの手の本は勝手にないと勝手に思っていたが探せば案外あるものだ。
グリーン文庫などの官能小説専門文庫は時々旅先とかで読むが2度読もうとは思わないのですぐ売ってしまう。
女性官能作家も何冊かは読んでは見たが登場人物のバックグラウンドが見えないので、非日常の、アクロバット的セックスを描いただけの、底の浅い散文のようなものがあるだけで感心しなかった。
大人の恋愛と言えば、渡辺淳一なんだろうが
直木賞をとった「光と影」以外は何が良いのかさっぱりわからなかった。
読みやすい文体(林真理子は爪の垢煎じて飲め)は確かに作家だが、如何せん欲情させてはくれない。
観音作品は渡辺風の読みやすさに加えて
日本人の「京都」イメージを逆手にとって
「あの街ならありそうなこと・・・」と納得させる筆致は只者ではない。
見事な都市小説になっている。
都が移る前の1000年の都、京都の暗黒が描かれてこそ
日本が見えてくる。
乱交シーンのリアルさは参加者しか描き得ないだろう。
間違いなく作者の実体験であることは明らかだ。
これら小説群で「京都」の奥深さ、美しさ、ずる賢さ、猥褻さがよくわかる。
女・団鬼六の異名を取る京都在住の観音はひとり孤高の頂きを文壇に築きつつあるように思う。
観音の作品に触れたが最後
京女がみんなニンフォマニアックに思えてしまう。
官能小説の域を超えた
教養小説(ヴィルディングス・ロマン)でありながら
是非は通用しないピカレスク小説でもある。
面白いエロ小説がそこにあった。
100点
各国語に必ず翻訳される世界系・村上春樹と
決して翻訳されないであろう(されても日本人しかわからない世界)
京都系・花房観音が同時に楽しめる国は日本しかない。
ディランと連絡のつかないことにノーベル賞委員が怒っているらしい。
君たちこそうぬぼれるな、と言いたい。
世界一有名な賞だろうがそれだけのこと
賞を取る取らないと
連絡があろうがなかろうが
授賞式に出ようが出まいと
作品の価値とは何の関係もない。
いつも絶対的に権威に弱い日本のマスコミの本質を露呈した
ゴミの様な記事を読まされるのが嫌になる。
とんでもない、ありえない、見たこともない
考えたこともない、信じられない小説や映画がただ観たいだけだ。