批評サムライ  ~映画・ドラマ・小説・エンタメ ★斬り捨て御免!~

責任が何でも曖昧なこの国で娯楽くらいは白黒ハッキリ!大作も小品もアダルトも興業収入も関係ない。超映画批評にない「上映途中の居眠り」が特技。シネマハスラー宇多丸氏、たまむすび町山智浩氏、シネマストリップ高橋ヨシキ氏を見習って公開初日最速レビューを心掛け評価は点数制。地方在住フォトグラファーがど田舎のシネコンでネタバレあり&あらすじ&見たまま感想ブログ

トランプ大統領誕生に思うヒラリー人気の無さ、ファーストレディの初ヌードなど家族(メラニア、イヴァンカ、ティファニー)の絆とマイケル・ムーアの洞察力

日本人の多くがヒラリー勝利を疑っていなかっただろうが
そこは何でもありのエンタメ大国

見事に期待を裏切らなかった。

しかしヒラリーは私用メールさえしなければね。

有権者の半分は女性なので普通は圧勝していたんだろうけど

人気がない、好かれない、特権階級、富裕層、プロ政治家・・

夫のビルは下半身は不道徳で脇が甘いので不倫はバレるが

上半身は好かれる。

なんだろう、持って生まれた星なんだろうね。

 

マイケル・ムーアは見事にトランプ勝利を明言していた。

ドキュメンタリーで本質を語る監督の示唆は鋭い。

www.huffingtonpost.jp

 

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(トランプ3度目の結婚式に参加したクリントン夫妻 左から次期大統領、対立候補で元ファーストレディ、その夫で元大統領、次期ファーストレディ)

 

ちゃんと裏で繋がっているね。

どっちも大金持ち、どっちも富裕層

デキゲームを1年以上やって皆を騙していたりね。

 

奥さんのメラニアさんがモデル時代のヌード写真が

ファーストレディ初ヌードと話題になっている。

 

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厳密に言えば、故ケネディ大統領夫人のジャクリーンさんが

石油王と再婚中に避暑地でパパラッチされたことはあるが・・

 

自ら金の為に裸になった最初の大統領夫人となる。

良妻賢母なんて言葉はアメリカで生きていくには

死語だろう。

 

独身時代のことでまさか将来ファーストレディになるとは

本人もカメラマンも誰一人思ってないのでビックリぽんだろう。

ゴージャスなカラダと言えばそうだけど・・

いろんなところが尖っていて何か不自然だな。

時々ヌード写真を撮っているが

日本女性が一番美しいと本当に思う。

 

しかし家族の絆は強いらしい。

才色兼備の見本

長女のイヴァンカさん

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2度目の奥さんとの間の

次女のティファニーさん

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モデル家系なのか絵に書いたような美女ばかり。

ハリウッドでTVドラマが始まるだろう。

 

 この異常に脚の長いファーストレディが

日本にもいつか来るから不思議。

 

しかし直接選挙でリーダーを選ぶ国が羨ましい。

 

我が国では憲法に指一本触れさせない勢力がいて

自衛隊がどこにも明記されていないの「合憲」という

しかもしっかりアメリカの核の下で守られているのにね。

自民から共産まで今まで真剣に変えようと論議さえしない

茶番国家が日本。

 

トランプ政権4年で、自前の安全保障議論が始まって欲しい。

「駆けつけ警護」がどうとか局所のみを語り大局、本質を避ける

 

憲法一つ変えれない情けないこの国は

これまで黒船、マッカーサーGHQとか2回の外圧でしか

変革できなかった。

新大統領は千載一遇のチャンスだと思うけどね。

 

この選挙中にアメリカ国内で作られた映画2本

機会があればぜひ見て欲しい。

 

堂々と批判する。

ほんとエンタメ界は内容はともかく健全だな。

 

トランプ批判の急先鋒マイケル・ムーアの「トランプランド」

www.youtube.com

 

クリントン批判の「クリントンキャッシュ」

www.youtube.com

映画「何者」 三浦大輔監督 佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之

映画の日、朝一で出かけたものの「男と女デジタルリマスター版」の冒頭からは間に合いそうもない。そこで何の予備知識もなく「何者」を見る。

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監督三浦大輔の「愛の渦」をネットで見ていて、スワッピングパーティーのシーンのリアルさに唸った。まさにああいう感じだ。

一般に考えられている異常性欲者のはけ口というよりも、もっと純粋にセックスと会話を楽しむ同好会だ。ただし相手のプライバシーに入り込まないとかいくつか暗黙のルールはある。相手のことを知りたいけれど詮索禁止、という機微がよく描かれた青春映画になっていて感心した。

その三浦の最新作なので期待値は上がる。

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あらすじ)

主人公二宮拓人は御山大学社会学部の大学生。演劇サークル「劇団プラネット」の脚本家でもあり、就活を機に演劇と決別。就活を通して仲間になった同大学4人と内定を狙ってチームを結成する。

神谷光太郎は元バンドマン。

田名部瑞月はアメリカ留学していた光太郎の元カノで、拓人は片思いしている。

小早川理香は瑞月の友達で英語が得意でエントリーシートやOB訪問などの活動にも余念がない。

宮本隆良は就活に興味がなくクリエイティブな活動で生きていきたいと思っている。

さて彼らは就職できるのか?

 

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邦画も洋画も最近やたらとテロップが多いとは感じる。

SNSを登場人物が日常的に使っていたり、事件のリアクションで第三者の反応を示したり。これがおじさん世代にはつらい。

テロップを読む時間が余りに短いので、それについていけない。

この映画では主人公がやたらと、周囲を気にして他人のチェックばっかりしている。またスマホ扱いが俺の10倍も速いので・・見てると腹が立ってくる。

しかし後半までにはそのスタイルにも慣れてくるからこれも不思議だね。

昨日見た「オーバーフェンス」もそうだったけど

若手俳優陣のアンサンブルが見事だったな。

佐藤健の観察者ぶり。有村架純のピュアな感じ。

特筆すべきはこの2人。

菅田将暉の遊び人&自由な感じが大人に変わる自然さと

二階堂ふみが秘密の暴露で見せる人間のいやらしい感じは只者じゃないね。

この2人はぜひスクリーンで見たいな。(彼らは芸能界に就職できてよかった)

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デジタルシーンの性急さにくらべると日常は敢えてゆっくり進む。

しかしラスト10分の面白さへの布石であった。

二宮拓人のこころの因数分解

職業脚本家を就活であきらめた演劇に仕立て

クリエイティブ界のキーワードかどうかは知らないが

「頭の中ではすべて傑作」の意味を一発でわからせた

舞台人三浦の演出の憎さ

デジタルに頼らないアナログ手法で舞台の外に出る必然を示す。

 

その時にのみ

「青春が終わり、人生が始まる。」

のだと。

 

自意識が異常にめんどくさい大学生たちの

「大人」の階段を昇る姿の本質を捕まえている。

久しぶりに映画で眩暈がした。

 

三浦大輔恐るべし。

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95点

 

”テロップをもう少しゆっくり見せろ”という意味で、実質は100点

 

次回予定 「この世界の片隅に」(片渕須直監督 声:のん:能年玲奈改め)

映画「オーバーフェンス」山下敦弘監督、オダギリジョー、蒼井優、松田翔太、北村有起哉、満島真之介、鈴木常吉、優香

いろいろあって20日以上も映画を見れないとストレスが溜まるよね。
朝、布団の上でマインドフルネス(後日記載予定)をiPhoneアプリでやって

一回クリアにし「居眠りしないぞ」宣言をしていつもの田舎シネコン

夕方乗り込んだ。

 

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同じ系列でも、東京のアート系映画がこの九州のど田舎シネコンに何故かやってくる。

故に、客は私を含む2名。上等だ。

 

あらすじ)

これまで好きなように生きて来た白岩(オダギリジョー)は妻にも見放され、東京から生まれ故郷の函館に舞い戻る。彼は実家に顔を見せることもなく、職業訓練校に通学しながら失業保険で生活していた。ただ漫然と毎日を過ごしてしていた白岩は、仲間の代島(松田翔太)の誘いで入ったキャバクラで変わり者のホステス聡(蒼井優)と出会い……

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まず演技のアンサンブルが見事だった。

オダギリジョーはいつも自転車に乗る。その不安定感がいい。若い頃のギラギラが抜けてトラウマを簡単に見せないおじさんの哀しい感じが上手いな。

蒼井優は小さなTVで見たくないスクリーンでこそ素晴らしい。

松田翔太は俳優以外考えられない程うまい。北村有起哉の普通人の皮をかぶったやさぐれ感。切れ切れの満島真之介。初めて知った鈴木常吉のユーモア。誰なのか最初はわからなかったがこんなに落ち着いた演技者になっていた優香。

 

随所に至福の時があった。

港町と坂道は住人には不便でも(私も以前長崎市に住んでいたのでわかる)映像にするとなんか懐かしくて美しい。

ここに妻子と別れ大工見習い無職のおじさんの恋愛模様と訳あり仲間の生き方が描かれる。

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ダンスをする精神を壊しているホステス蒼井優が天使のように舞う。

精神的ないい顔をしているなと思っていたが、ここで花開いた感がある。

鳥は思うようにならない現状からの脱出のメタファーかな。

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おじさんは最後にソフトボール大会でホームラン(オーバーフェンス)を打ちフェンスの向こうに消えていく。自分の力で、現状を超えるんだと。

仲間と蒼井優がそのボールを追う顔のアップが

「このままでは終わらないぜ」

「途中までの人生ゲームはいろいろあったけど、まだ負けてないんだ」と語る。

 

こんなあざやかなラストシーンを見たかった。

なかなかないよ。

 

アホな監督だったら主人公に余計なことを言わせたり

思わせぶりな表情を入れたりする。

 

吉永小百合とか大女優と呼ばれる人のラストは

涙か叫びか嗚咽か・・松竹、東映は特に多い。

何にもわかっていない。

 

「余計なことをするんじゃない」

何度日本映画に裏切られたことか。

 

ここでは見事な省略でオーバーフェンスしたボールが

ストレートに観客の心に届くようになっている。

 

そしてこの「あざやかさ」のみが、観客を我に返す。

 

「俺もオーバーフェンスできるかな?」

「そもそもバターボックスに俺はいないな」

「打つだけは打ってみよう」

 

観客の数だけ反応はいろいろだろう。

山下監督は映画わかってるね。

f:id:kudasai:20161031230634j:plain途中でアメリカ映画「カッコーの巣の上に」を思い出していた。

精神病院から脱出するチーフの正しさに「行け」「逃げろ」

私はスクリーンに叫んでいた。

あの感覚が40年ぶりに蘇った。

 

地方都市の職業訓練校に集まった

訳あり中年の青春映画として出色の出来だ。

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ブリジットジョーンズがくっついた離れた、とか

宗教象徴学者がヨーロッパを走り廻る、とか

どうでもいい。

 

ハロウィンでも町にも飲み屋にも行かない

そもそも友達いないので、誘うことも誘われもしない

金はない、借金はある

 

人間関係が下手、いつもイライラする

ストレス抱えて明日が見えない

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市井の人が懸命に生きる、暮らす、愛する・・・

普通の生活の中で、何かのパンドラの箱が開く瞬間

そういう日本映画が見たいのだ。

 

そういう映画だった。

 

100点

 

明日が映画に日だから何か見てきます。

「夫のちんぽが入らない」 こだま著 (Amazon予約可『なし水』加筆単行本)

数年前からネット上で密かに(堂々となのか)ささやかれる

「こだま」伝説。

 

主婦であり、ライターであり、ブロガーであり

その文章力、読ませる力、読後感の殺伐は並みではない。

これが作家だ。

プロとかどうかとか関係ない。

文章が勝手に躍動するのだ。

その彼女が満を持して、年明け作家デビューを果たす。

 

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想像して欲しい。

 

この本を書店員が並べる可笑しさ

読者が手に取る時に、周囲へ悟られないような仕草

レジで差し出す際の「俺じゃないよ。頼まれただけなんだ」感の装い

「あのー、夫の入らない、下さい」と勝手に中抜き短縮させる姑息さ

 

この本はタイトルだけで

日本中の書店で読者による一人コントが生まれそうな予感が楽しい。

 

アダルトや官能小説ではない完全実話で

空前絶後のタイトルは日本出版史を変える

「読みたいんだけれど買いにくい本大賞」があれば

ぶっちぎりの優勝だろう。

 

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自主出版デビューが傑作エッセイ「塩で揉む」

大手出版社(=アマゾンで買える)デビューは今回(2017年1月)が初

 

2014年5月に開催された「文学フリマ」では、同人誌『なし水』を求める人々が異例の大行列を成し、同書は即完売。その中に収録され、大反響を呼んだのが主婦こだまの自伝『夫のちんぽが入らない』だ。  同じ大学に通う自由奔放な青年と交際を始めた18歳の「私」(こだま)。初めて体を重ねようとしたある夜、事件は起きた。彼の性器が全く入らなかったのだ。その後も二人は「入らない」一方で精神的な結びつきを強くしていき、結婚。しかし「いつか入る」という願いは叶わぬまま、「私」はさらなる悲劇の渦に飲み込まれていく……。  交際してから約20年、「入らない」女性がこれまでの自分と向き合い、ドライかつユーモア溢れる筆致で綴った“愛と堕落”の半生。“衝撃の実話”が大幅加筆修正のうえ、完全版としてついに書籍化!

 

冒頭から唸らせる。

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この出だし、リズム、簡潔、潔さ、ユーモア・・・・あれだ。

日本人なら義務教育で必ず読まされる

「坊ちゃん」(夏目漱石著)だ。

 

没後100周年の2016年 、文壇に遂に後継者が現れた。

しかもそのタイトルが、「夫のちんぽが入らない」  

キーを打つ手が嫌になる。

 

漱石も目が点だと思う。

でも仕方ないのだ。

明らかにその作品世界は同根としか思えない。

 

私は尊敬を込めてこう言いたい。

こだまは、下町の女漱石と。

 

この話は市井に生きる女性の家庭内の小事かもしれない。

 

しかし 20年に及ぶ、誰にも言えない、相談できない悩みは

夫婦、生殖、性欲という人の根源にかかわる歴史的、普遍的、本質的な問題提起であり

巨根(巨大なペニス)を持つ男性にとって大事件である。

 

その明晰で、精緻な文体により当事者だから語れる世紀(性器)の本である。

これは読みたくなる。

 

夫のちんぽが入らない

夫のちんぽが入らない

 

 

小説「花祀り」 花房観音著

寝る直前に読むもんだから5ページか20ページしか進まない

いつものスロー読書で「1Q84」を7月から読み出して

やっと3巻目の途中で迎えた恒例のマスコミバカ騒ぎの夜。

 

ボブ・ディランが受賞するんなら

吉田卓郎は? 中島みゆきは? 桑田圭祐は?

 

来年以降も続くのだろうか・・村上春樹祭りは?

同じまつりでもこの「花祀り」は素晴らしい完成度で驚いた。

 

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村上はメタファー探しで頭を使うが

この作品では「女体は和菓子」と明文化され

京の男衆が猥褻の限りで20代処女の和菓子職人を

一流の女に育てる。

 

以前からカンパニー松尾のAV作品のファンで膨大な

作品群の8割を追っかけて見てきた。

 

いわゆるハメ撮りスタイルの創始者で

ストーリーはあってないも同然。

 

女と出会い、車に乗せ、インタビューをして

途中で悪戯して、ホテルでいたす。

 

全工程を一人で運転、インタビュー、撮影、セックス、編集、演出までするのはまさに驚異的で、随所に映像センスと音楽センスが光る。並の才能ではない。(近々批評を載せる)

 

アダルト映像に弁証法を持ち込んだとんでもない映像作家として尊敬しているが、観音もブログで松尾を強く支持していて、同じ匂いがしたのでいつか読みたいと思っていた。

公立の図書館にはこの手の本は勝手にないと勝手に思っていたが探せば案外あるものだ。

 

グリーン文庫などの官能小説専門文庫は時々旅先とかで読むが2度読もうとは思わないのですぐ売ってしまう。

女性官能作家も何冊かは読んでは見たが登場人物のバックグラウンドが見えないので、非日常の、アクロバット的セックスを描いただけの、底の浅い散文のようなものがあるだけで感心しなかった。

大人の恋愛と言えば、渡辺淳一なんだろうが

直木賞をとった「光と影」以外は何が良いのかさっぱりわからなかった。

読みやすい文体(林真理子は爪の垢煎じて飲め)は確かに作家だが、如何せん欲情させてはくれない。

 

観音作品は渡辺風の読みやすさに加えて

日本人の「京都」イメージを逆手にとって

「あの街ならありそうなこと・・・」と納得させる筆致は只者ではない。

見事な都市小説になっている。

宮部みゆき桐野夏生の描く現代の東京の暗黒と

都が移る前の1000年の都、京都の暗黒が描かれてこそ

日本が見えてくる。

乱交シーンのリアルさは参加者しか描き得ないだろう。

 間違いなく作者の実体験であることは明らかだ。

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これら小説群で「京都」の奥深さ、美しさ、ずる賢さ、猥褻さがよくわかる。

女・団鬼六の異名を取る京都在住の観音はひとり孤高の頂きを文壇に築きつつあるように思う。

 

観音の作品に触れたが最後

京女がみんなニンフォマニアックに思えてしまう。

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官能小説の域を超えた

教養小説(ヴィルディングス・ロマン)でありながら

是非は通用しないピカレスク小説でもある。

面白いエロ小説がそこにあった。

 

100点

 

各国語に必ず翻訳される世界系・村上春樹

決して翻訳されないであろう(されても日本人しかわからない世界)

京都系・花房観音が同時に楽しめる国は日本しかない。

 

ディランと連絡のつかないことにノーベル賞委員が怒っているらしい。

君たちこそうぬぼれるな、と言いたい。

世界一有名な賞だろうがそれだけのこと

 賞を取る取らないと

 

連絡があろうがなかろうが

授賞式に出ようが出まいと

作品の価値とは何の関係もない。

 

いつも絶対的に権威に弱い日本のマスコミの本質を露呈した

ゴミの様な記事を読まされるのが嫌になる。

 

とんでもない、ありえない、見たこともない

考えたこともない、信じられない小説や映画がただ観たいだけだ。

 

 

花祀り

花祀り

 

 

 

映画「ハドソン川の奇跡」 クリント・イーストウッド監督

待ちに待った伝説の男の物語

 

確かそれは中学時代

「マンハッタン無宿」のTV放映でその姿を焼き付けた。

スーツを着たまま長い手脚でバイクを乗り回す姿が

「大脱走」マックウィーンのナチスからの逃亡と比較しても

優とも劣らないカッコ良さ。

 

それはアメリカだった。

無口で、お洒落で、強くて、皮肉屋で・・・

男の中の男だと。

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それから彼は、自分のプロダクションを作り

アメリカン・ニューシネマ、カンフー、ホラー、SF、スーパーSFX、3D

世界的ブームやヒットのどんなスタイルにも組みせず、極力特殊撮影とは距離を置いて

人間ドラマに徹したエンタメイーストウッド・スタイル(寡黙で知的でワイルド)

に出演し、演出し、それを50年間貫いた。

 

その間多くのスターが生まれ、そして消えていった。

スティーブ・マックウィーン、ポール・ニューマン

スタローン、シュワルツネガー、ロバート・レッドフォード

ダスティン・ホフマンアル・パチーノハリソン・フォード・・

 

アメリカ映画界恒例の稼ぐ役者ランキング「マネーメイキングスター10」に

通算21年選ばれている

トム・クルーズは20年、トム・ハンクスが17年)

西部劇スターのジョン・ウェインに次いで2位

映画監督兼任はイーストウッドだけ。

 

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特に好きなのが、主演と演出の

恐怖のメロディ

ガントレット

「ペイルライダー」

マディソン郡の橋

グラン・トリノ

 

演出のみで

「バード」

ミスティック・リバー

ジャージー・ボーイズ

アメリカン・スナイパー

 

女好きDJから家族を失ったガンマン、カメラマンを演じ

破滅型ピアノ弾き、不条理サスペンス、ミュージシャンの興亡

イラク戦争の内なる戦いまで描く。

 

その映像スタイルは

省略、メタファーなしのオーソドックス

セルフは少なく、サイレント指向だ。

 

撮影は1テイクのみで早撮りの名手

余分なカットはほとんどないので編集など

後制作が楽で、故に公開までが早い。

 

私がSFX嫌いなのは、イーストウッド映画に

過剰がないことがあるのかも知れない。

 

「過不足ない」のだ。

これは凄いことだ。

 

そんなリスペクトしかないイーストウッドの最新作を見た。

金曜、九州のど田舎シネコンに16時30分スタート。

観客は10人弱、いい塩梅だ。

 

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あらすじ)

2009年1月15日激寒のニューヨークをシアトルに向けて飛び立ったUSエアウェイス"1549便は離陸直後に「バードストライク」と呼ばれる鳥がエンジンに飛び込む事故が発生。両方のエンジンが停止した状態で緊急の判断を迫られたチェス"レイ・サレンバーガー機長はキャリア42年のベテランパイロット。

このままでは155人の乗客乗員の命はおろか、下手をすれば70トンの機体がニューヨーク市内に落ちるかもしれない緊迫の事態。墜落までのリミットは約4分、速度と高度を計算しながら管制塔との緊迫のやり取りで一度は近くのテターボロ空港への着陸を検討するのだがそれも無理と判断したサレンバーガー機長は独自の判断でハドソン川に不時着を決意。    

過去にも川への着陸を試みた旅客機があったのだが失敗し大惨事となったケースがあったのだが、サレンバーガー機長はハドソン川奇跡の不時着に成功155人全員の命を救ったのだった。    

事故当時ハドソン川は氷点下6度、水温2度と記録されているなかサレンバーガー機長をはじめとするUSエアウェイス"の乗組員たちは決められた手順で冷静に脱出活動にあたった。    

事故後、サレンバーガー機長とジェフリー・スカイルス副操縦士はヒーローとして米国民に称賛されホワイトハウスではオバマ大統領からも感謝状が贈られるのだが、事故を捜査していた当局から殺人罪の容疑をかけられるのであった・・・

 

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期待が多き過ぎなのか違和感があった。

いつもの様なクラクラするものがない。

何かスッキリしない。

 

トラブル発生から飛行機の着水と脱出、救助は

本物の飛行機飛ばして撮影したせいで臨場感は抜群で

中年CAたちのが特に生生しい。

 

ただ独特の構成のせいかも知れない

前半が時制の流れに沿って見せてはくれないので

まず映画鑑賞のリズムが微妙に狂うのでノレナイのだ。

 

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川への不時着で機長の人間性が問われるが、家族との絆が、妻との電話でのみ処理される。ここが弱い。

 いつもは家族を守っている男が、危機にあって逆に守られてこその

共感ではないか。

 

事故調査委員会側の疑念を、論理的に丁寧に描いておけば

「確かにそういう見方もあるな」とライバルが強く見える。

 

ポーカーで例えると

観客に委員会のカードAを見せて、最後に機長のカードBで勝つと

サスペンスが盛り上がる。

 

グラン・トリノ」の様に

強いギャング集団がいてこそ、そこに立ち向かうイーストウッドが光る。

 

甘いカードを配ったが故に

勝つには勝ったが、相対的に勝利(共感)が薄いのは自明だ。

 

ラストシーンの再会と感謝は映画的には蛇足だと思う。

ここは省略だ。

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映画の神様が、省略をいくつか読み違えた。

 

ラストの感傷が過ぎると(多くの日本映画はこれで失敗する)

本質から逸れる。

それを凡庸と呼ぶ。

 

それでも、私の最後のアメリカンヒーローであることに
何ら変更はない。

今年86歳のイーストウッド次回作に

どんな監督よりも期待する。

 

泣きながらの、70点

 

次回作は、映画のすべてが詰まったお手本

「男と女」デジタルリマスター版

 

初めて見た時の衝撃は大きかった。

「オトナ」を見たのだから。

60年代フランス映画は凄かった。

 


映画『男と女デジタル・リマスター』予告編

 

もしくはトム・ハンクスの新作「インフェルノ」か?

映画「SCOOP!」公開初日レビュー 大根仁監督 福山雅治・二階堂ふみ・吉田羊

週末の興行収入邦画NO1狙いか?

映画に日に敢えて持って来た「SCOOP!」を見に行った。

売れないとはいえ私もカメラマンやってる以上は
映画でのカメラの扱い(福山はCanonのフラッグシップ EOS 1DXにEFのLレンズ)

レンズ選択、構図などプロらしさをぜひ見ておきたい。

演出はデジタルな現代を撮らせたら日本一の大根だし
リリーも出てるわ、全身女優二階堂が相棒だし。

(以下ネタバレ少しあり)

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100万都市の雨の上がった、公開初日の12時スタート

このべストタイミングでの客の入りの中途半端さがスクープか?

 

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初の汚れ役で、過去のトラウマを引きずり

借金を持ち自堕落で、中年、フリーランスという(俺とそっくりだ)

パパラッチ・都城静を無理してる風もなく

あんちゃんキャラが随所にあふれ

下ネタ、車内S●Xも、キャバクラ対面座位も

(ここは俺と違う、腰痛持ちで出来ない)

ふつーに演じている。

 

これまで彼は「ガリレオ」から「そして父になる」と

その役になりきりながらも、スター福山と両立させる

離れ業を見せてくれていた。

 

それは極度にカメラマンに私生活を撮らせない努力の賜物で

もうひと回り、役所を広げるのに選んだのが

逃げ切られたカメラマン役とは・・

これこそスターの運命なのだろう。

 

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映画館で見るのは初めての吉田羊だが

驚いたのが

始まる前の近日公開映画紹介で

その半分に吉田が出ていることだ。

これこそスクープだ。

 

コールドケース〜真実の扉 wowowドラマ

映画「ボクの妻と結婚してください。」

映画「グッドモーニングショー」と続々公開が待っている。

 

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福山の元彼女でありながら、家に朝食を作る程度の距離感を残しつつ

仕事上は上司で、福山の再起を助けようとする写真系週刊誌の編集キャップ

を完璧に仕上げている。

 

仕事の強引さ、部下さばき、リーダーシップと

社内政治の処世術にたけた、頭の回転の速さはまさに適役。 

また、日本には一人もいなかったハリウッド女優のような

クールセクシーとその裏返しの優しさの匂いがたまらない。

 

この吉田を見てしまったら他の女優をもはや考えられない。

独壇場だ。

 

働く現代女性のオンとオフをきっちり説得力と共感力のある

この演技されたら、エンタメ業界は黙ってはいられない。

スケジュールの奪い合いになるのは自明だ。

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そして新人記者役の二階堂は

「ほんと最低・・・」を口にしながらスクープ仕事で成長する。

下着姿に躊躇な無さも好感だ。

 

イラストレーターとしてより天性の役者としか言いようのない
リリー・フランキー(私と郷土が同じ福岡県)はまさに水を得た魚で

世界の大都会の片隅に必ずいる、何を考えているか全く知れない狂気を含んだ普通人

としてスクリーンを圧倒する。

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全体を通じて随所にストリート感溢れる演出が冴える。

冒頭のタイトルロールまでの長回しの緊張感

ドローンを使った東京夜の俯瞰の美しさ

トンネル内の警察とのカーチェイスのサスペンス

編集部内の撮影戦略ジオラマの面白さ

半人前社会人が仕事と恋で成長するワクワク感

 

さすが街に飛び出す大根仁

大都会のいまを見事なタッチで切り取って魅せる。

 

そこは昨年見た「ナイトクローラー」を思い出した。

唯一の弱点は

役柄での運命の友、リリーとの過去の事件の重さが明らかにされないので

そこのセリフ説明だけが妙に浮いて?が残る。

 

今年春の最低映画の一つ

「エヴェレスト 神々の山嶺

にも低通するドラマセオリー

「背景が描かれるとより説得力を増す」

が逆に作用した。 

そこは省略やめようよ。 

 

映画の尺は必要だがそれによって観客の心には

愛はより深まり、悲しみは悲劇に転じ、

それ故に残された者への共感が残り

故にドラマは傑作と呼ばれる。

 

でもアニメでは描けないこの下世話な世界観。

実写でロケでしか出せないストリート映画なのだ。

この手のドラマが邦画は実に少ない中で見事。

 

しかし東宝はこの夏からの「シン・ゴジラ」「君の名は。

と、怪獣でも、アニメでも、人間ドラマでもクオリティは高い。

 

物語的にパート2が出来ないからこそ

傑作にして欲しかった。惜しい。

 

95点

 

次回は絶対イーストウッド作品です。

嘘ついたらハドソン川に飛び込みます。

さよなら、さよなら、さよなら。

 

追記)

後で思い出したがカメラマンとしての違和感は

どのシーンも福山はレンズフードをしていないこと!

 

撮影場所が屋上だったり、階段だったり、車内だったり

だし、基本その後に逃走が待っている。

追手がいるのにバックにしまっている時間はない。

レンズフード装着のまま、レンズキャップをハメて

全速力のはずだ。

 

レンズの先端は最もいろんな物にぶつけるリスクが大きい。

また夜シーンではネオン光がレンズ内に反射して

決定的な場面がハレーションでは使えない。

DPP4はもちろん、フォトショップでもLIGHTROOMでも

修正できない。

 

望遠300、400のキャノン純正は100万超えなので

フリーのプロカメラマンなら有り得ないありえない。

福山+カメラのルックのカッコ良さを優先した結果だろう。

「神は細部に宿る」