映画「キングコング 髑髏島の巨神」70年代時代背景の面白さとCGの出来の良さに比べ、雑な演出にガッカリ!トム・ヒドルストン、サミュエル・L・ジャクソン、ブリー・ラーソン
「キングコング」関連作の日本公開はこれまで10本近くある。その話題作といえば
1933年(初代)
1976年(ジェシカ・ラング版とも言う)
2005年(ナオミ・キャンベル版)
1962年 東宝版
B級感が異常に漂う忘れられた関連作もある。
1986年
「コングの復讐」
「コングの復讐」
初代の大ヒットを受けてパート2が大至急作られ同年公開という離れ業。
このやっつけ感が画面に強烈に漂う。
私の最高傑作は東宝版なのだ。
怪獣は着ぐるみの親しみやすさ、広告代理店キャラのC調感、時代背景の説明のさりげなさ、日本製を差し引いても、シナリオが一番良く出来上がっている。
アメリカ発のコングに、我らがゴジラを戦わさせる戦略は上等だ。
戦争で一回勝った国と怪獣をダシにして第二次太平洋戦争をスクリーンでやる。
そんな日米の映画史にとって大切なコングが久々に帰ってきたが・・・
ベトナム戦争の最末期、調査隊と共に南太平洋の孤島に向かう海兵隊の戦士
これだけで「地獄の黙示録」の再来か、と期待値は上がる。
10台以上のヘリシーンは村を襲撃するキルゴアと重なる。
とんでもないことが始まるファンファーレとして秀逸だ。
早速コング登場してヘリを叩き壊す。
見せすぎなのは訳がある。
続々出てくる巨大生物との戦いが待っているケツカッチンなのだ。
CG処理は凄いな。リアルさは半端ない。
しかし、キャラ立ちがとにかく弱い。
部下思いのジャクソンにはエピソードがないので感情移入できない。
謎の男ジョン・グッドマンしかり、紅一点のカメラマン役もね。
怪獣どうしの戦いが映画のテーマなので感情が入らない。
どっちが勝っても、どう勝っても
「だから、何?」てなもんでね。
島に1944年から唯一、日本兵と残されたアメリカ兵エピソードだけが救いだった。
最後はコングが勝つお約束なんだから人をきっちり描いておかないと、映画に乗れないとわかっているよね! と言いたい。
アメリカ版ゴジラの怪獣勝ち抜きリーグが来年公開で、2020年にコング VS ゴジラらしい。
とにかく死んでいく怪獣がかわいそうで、限りなく超B級大作に成り下がった残念シリーズを長期に渡って見せられる模様。
50点
映画「ムーンライト」フォトグラファー市橋織江が撮影したかの様な昼のハイキーと、夜のハイダイナミックレンジ合成級の美しさ(公開初日最速レビュー感想)バリー・ジェンキンス監督のアカデミー作品賞受賞作
3月31日ともなれば平日でも映画館は子供でいっぱい。
14時からあの怪獣映画を見て(感想は次回)余りの出来の悪さに本日公開作をもう一本見ることにした。
受賞を争った模様の「ラ・ラ・ランド」並みの混雑はなく、金曜18時としては普通の込み具合。
それも納得できる。オール黒人で、麻薬、暴力、いじめ、家庭崩壊・・・と、「ラ・ラ」が売れないとはいえ美男美女の恋愛+サクセスミュージカルとは対極の地味さだしね。
あらすじ)
マイアミの貧困地域で暮らす内気な少年シャロンは、学校では「チビ」と呼ばれていじめられ、家庭では麻薬常習者の母親ポーラから育児放棄されていた。そんなシャロンに優しく接してくれるのは、近所に住む麻薬ディーラーのホアン夫妻と、唯一の男友達であるケビンだけ。
やがてシャロンは、ケビンに対して友情以上の思いを抱くようになるが、自分が暮らすコミュニティではこの感情が決して受け入れてもらえないことに気づき、誰にも思いを打ち明けられずにいた。
何故か面倒見てくれるいいおじさんが、母親に麻薬を売る悪魔の商人という救いのなさ。この荒野の様な家庭と、悪人しかいない町で暮らす訳だから、起こることは悲劇しかない。
最大の見どころはこの映像の美しさだろう。
トリアーやミヒャエル・ハネケなどヨーロッパの巨匠級の緊張感がある。
夜シーンではどこ切り取ってもハイダイナミックレンジ合成の様なクオリティで彩度が異様に高い。
一方で昼の感情シーンではフォトグラファー市橋織江が撮影したような乙女トーンが見える。
デジタル映像なんだけどフィルムで撮影したような色の諧調の豊かさが感じさせる。
実は特殊な処理をして一旦色を抜いて、また色を付け足したらしい。
特に麻薬の売人になった主人公の黒人の体の美しさが生々しい。
悪の道に染まった主人公の心の揺れと映像がシンクロしているので、ストレートに見えてくる。
世界中のどこにでもいる薬の売人を主人公にして、本来なら共感など有り得ない人物にある種のシンパシーを覚える。
85点
次回「キングコング 髑髏島の巨神」
傑作映画シリーズ100本|No 001「欲望 BLOW UP」(1967) ミケランジェロ・アントニオーニ監督 日本の名機35ミリフィルム一眼レフ Nikon F が滅茶苦茶かっこいい。
映画館に行きたくても行けない日々で悶々としているので、家で夜中昔のDVDを見ては気を紛らしている。
そこで見ておくと良いかも知れない100本をランダムにご紹介することにした。
公開当時、世界中で映画ポスターが盗まれたらしいビジュアルの強さ。
これぞ60年代中期のラブ&ピース、麻薬が蔓延していく世界の不条理を描いた時代の空気がぷんぷん匂う。
中判カメラの名機、ハッセルブラッドの美しさ。
(ビートルズのアルバム「アビーロード」など多くのLPジャケット撮影はこのカメラ)工業製品としての完成系を見る。
シャッターと巻き上げ動作と音の美しさ、操作のセクシーさ。
これなら女性も上から乗られても文句はないのだろう。
このカメラマンは何人と寝ているのか?
全員だろうな・・・ここは私と大違い。
この60年代のフリーセックス時代の幕開けの空気感が上手いな。
そしてスタジオを離れ、都市の公園に、中判から35ミリに変えて一眼レフを持ってスナップ撮影を始め事件は起こる・・・
ここで我らが Nikon F だ。
カメラ大国の片鱗をこの映画で決定つけたらしい。
知らないカップルを見つけ、隠し撮りを続ける。
週刊文春のスクープも、やってることはこの映画が原点だ。
都市の中にぽっかり口を開けた緑のブラックホールみたいの存在として。
すぐに女に見つかる。
演じるのは、大好きな映画「ジュリア」フレッド・ジンネマン監督で謎多き主人公ジュリアを演じたヴァネッサ・レッドグレーヴだ。
この顔の知性と裏に隠された淫靡な感じが、大人のヨーロッパ女優だ。
フィルムを返して欲しいという。
突如スタジオに現れ、キスをしたり奔放さを現す。
現像した写真に写っていた謎の影
BLOW-UP(引き伸ばしの意)すると
別のものが写っていて・・・
大都会の公園の片隅に起こった不条理を目撃したカメラマンの震えが伝わる。
私も普段キャノンの35ミリの一眼デジカメを使っているが、時々ニコンF3を一緒に持ち歩くと、このデザインの良さ、手触り感など圧倒的に1982年もの(35年前!)に人気が集まる。
「デジカメは素材で、フィルムこそ本来の写真」
この映画を見るとまずフィルムカメラで何かを撮りたくなるはずだ。
何度もいうが時代が写っている。
基本サイレントで、ハービー・ハンコックのJAZZが流れる。
物語はあって、ないも等しい。
何も解決しない。
しかし何もかもがカッコイイ
「写真は引き算」とはよく言うがこの映画は、カタルシスとか感動とかそういうセオリーを引いてしまった感がある。
カメラマンやっているのはこの映画の影響はあきらかにある。
作家や画家など自己完結するクリエィティブと決定的に違っていて、社会を写してなんぼ。
ある距離感を保ちながら、第三者の、組織の、国家の・・・何かを暴ける武器となるカメラを持って生きる。
しかし覗いたからにはリスクが襲ってくる。
そのスリリングを味わってみたいと。
映画「哭声/コクソン」ナ・ホンジン監督 荒削りパワーのクァク・ドウォンとフンドシで森を駆け抜ける國村隼は「地獄の黙示録」カーツ大佐の存在感を超える面白さに負けた
なかなか韓国映画を見る機会はないが、國村隼が出るサスペンス・・・これは何か映画の至福が降りてきそうな予感がぷんぷんする。
あらすじ)
平和な田舎の村に、得体の知れないよそ者がやってくる。
彼がいつ、そしてなぜこの村に来たのかを誰も知らない。この男につい ての謎めいた噂が広がるにつれて、村人が自身の家族を残虐に殺す事件が多発していく。そして必ず殺人を犯した村人は、濁った 眼に湿疹で爛れた肌をして、言葉を発することもできない状態で現場にいるのだ。事件を担当する村の警官ジョングは、ある日自分の娘に、殺人犯たちと同じ湿疹があることに気付く。ジョングは娘を救うためによそ者を追い詰めていくが、そのことで村は混乱の渦となっていき、誰も想像できない結末へと走り出す・・・
地方の村と山しか出てこない。故に緑が多く、美しい。
黒沢清フィルムと似ている。
この感じは好きだな。映画に落ち着きと狂気を与える。
警官ジョングを演じるクァク・ドウォンが魅力的だ。
妻と義母に弱い、情けない、仕事が出来そうにない普通の太った警官のおじさんだけど娘を愛している。渥美清とかフランキー堺の様な昭和の荒削りさと人間力が匂う。
こういう人が主役をやる映画は好きだな。
日本映画も含めてあまり三枚目主演映画は劇場公開されない気がする。
美男美女ばっかりじゃね。
そして謎の日本人役の國村隼。冒頭シーンからもう世界を作っているな。
こういう凄い役者だったのか。
日本映画では気のきいたセリフを必ず言わされる重みのあるバイプレイヤーだけど
今回は韓国語を話さず孤立した存在なので彼の出るシーンだけサイレントになる。
何を考えているのか、どういう過去なのか背景なのか何の説明もない。
これがいい。
娘の異常行動から物語は別の方向へ向かう。
悪霊、エクソシスト、ゾンビ、悪魔・・・
間抜けな警官と仲間たちによる科学捜査を無視した不思議な復習劇
細かな伏線は回収されたかどうかは1回ではわからなかった。
すっきりなんて決してしない。
敢えて語らないスタイル
しかし國村隼の存在感が圧倒的で
コッポラの傑作「地獄の黙示録」カーツ大佐(マーロン・ブランド)に匹敵する。
ベトナムのジャングルには攻める者には戦闘ヘリもナパームもマシンガンもある。
相手には弓矢がある。
この韓国の森に武器はない。
何か得たいの知れない魔力のようなものを感じる。
周囲にたてまつられた神ではなく、すぐそばに住んでいる悪魔的な者の恐ろしさ。
人間と悪魔の線引きの曖昧さを描いたのだろう。
最初に見た勧告映画は確か「シュリ」だった。
南北対立のスリルと恋愛模様がサスペンスを高めハリウッド映画によく似ていた。
以降、多くの映画人を国策でアメリカに送り学ばせたようだが、俳優のパワーとシナリオ、演出の力は素晴らしい。
ナ・ホンジンのキャリアは知らないが、それらの流れとは違う独立峰の感がある。
予測不能、ジャンル分け不可能、見えない社会の井戸を腕力で覗かせるようだ。
過去作も今後も見ておく必要がありそうだ。
85点
2016年度東スポ映画大賞(ビートたけし選考)受賞作品・俳優などまとめ(シン・ゴジラのDVD&ブルーレイ商売で東宝の欲の深さは怪獣並みだ。アマゾン予約で前売り大ヒットらしい)
第26回東京スポーツ映画大賞
やっぱり世界の北野武が選ぶこの賞が楽しみだ。北野作品があれば毎回受賞だけど2016年はなかったので話題作に分散傾向。
大まかで納得できる。
作品賞 「この世界の片隅に」
2016年の国内実写興行収入の1位はどの媒体でも大ヒットは間違いない、
3月22日発売で、標準の2枚から、いろんな特典付けて、3枚、4枚の4Kの高画質まで、東宝の本気度と商売気が半端ない。
(私も劇場で3回観たしね)
DVD 2枚組
Blu-ray 特典付き2枚組
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主演男優賞 三浦友和「葛城事件」
これは納得
主演女優賞 宮沢りえ「湯を沸かすほどの熱い愛」
見逃したのは残念
助演男優賞 綾野剛「怒り」、菅田将暉「ディストラクション・ベイビーズ」他
「怒り」なら妻夫木と思うが・・・
これも納得
新人賞 杉咲花「湯を沸かすほどの熱い愛」
知らなかった。
外国作品賞 「ハドソン川の奇跡」
リスペクトしかないイーストウッドだけど・・・これはどうだろう?
特別功労賞 神山繁
亡くなってほんとに残念。新聞記者とか刑事の管理職やるとほんとうまかったな。昭和のガンコ親父がどんどん去っていくのは本当に惜しい。
追伸)
不倫しただけで人殺した訳でもないのにね。
映画「愚行録」石川慶監督 妻夫木聡、満島ひかり、小出恵介、臼田あさ美、市川由衣、松本若菜
でのカタキを、この映画でとってくれる期待をこめて映画の日に出かける。
いつものど田舎シネコンには客はどう見ても7人くらい。
そりゃ誰だって「ラ・ラ・ランド」に行くよね。
原作は読んでないので物語は全く知らないが
最近若手キャストのアンサンブルが楽しめる日本映画多くて、満島ひかりも出るんだったら当然期待する。
一家惨殺、「3度の衝撃」
配給会社宣伝部の、盛ったコピーにはこれまで何度も騙されたので、信じはしないが衝撃してくれるなら損はない。
あらすじ)
日本中を震え上がらせた一家惨殺事件から1年、週刊誌の記者・田中は、迷宮入りした事件の真相に迫ろうと改めて取材を開始するが、関係者のインタビューから浮かび上がってきたのは、エリートの夫と美しい妻、そして可愛い娘という理想的と思われていた一家の、想像とはかけ離れた実像だった……
冒頭のバスシーンから屈折した人間を普通に見せてくれる。
過剰なものがない。
つぶやくようなセリフ廻しが心地良い。
妻夫木は新井浩文と並んで、役所浩司などと共にいい俳優になったな。
カッコいいとかではなくて共感力をスクリーンで見せてくれる。
満島は秘密を抱えた妹役で
拘置所にいるので出番がないが・・最後半の主役に。
年齢不詳感が幸いして女子大生が似合っている。
週刊誌記者として、事件の関係者を訪ね歩く先の若い役者たちが、いろんな”嫌な”人間像を演じていて好感がもてる。
特にスクリーンで初めて見る市川由衣は惹きつけるオーラが強い。
殺された妻役の松本若菜も
美しさの裏側のイヤーな感じを演じた。
臼田あさ美はNHKのコント番組でよく見た。
天然の小娘キャラからタレントと思っていたが女優としてセンスが確かにある。
ただ一家惨殺の動機が弱くて無理があると感じた。
そこを除けば監督第1作とは思えない落ち着いた映像でとくに被写界深度の浅い、主観モードと、パンフォーカスの客観モードの使い分けが匠だった。
3度の衝撃という程でもないが、それなりには面白かった。
しかし、フランス映画界におけるルネ・クレマンの様な大人のサスペンス映画の趣きを感じながらも、カタルシスが終始どこにもない息苦しさはどうなんだろう。
ここは映画のセオリーを信じて脚本いじらないと観客の心はつかめない。
才能はあるのに次回作の声がかからない恐れがある。
役者は満点なのに、映画としては
70点
次回はたぶん「アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男」
映画「ラ・ラ・ランド la la land」はフランスミュージカルへのリスペクト溢れる楽しく厳しく切ない傑作だった(公開初日最速レビュー感想) デイミアン・チャゼル監督 ライアン・ゴズリング&エマ・ストーン
フリーランスの私は、プレミアムフライデーなど国策とは関係なく、金曜は映画1000円なので映画館に行く。
直前に40年付きあった歯の根を抜いたので血だらけで麻酔も残っていて顔半分が微妙に痛い。にもかかわらずどうしても初日に見たかった。
前作「セッション」が素晴らしかったからだ。
省略の潔さとサスペンスに必要なものだけ収れんしていくクライマックスの興奮までの物語るうまさ。
遂にイーストウッドの後継者現る、と直感した。
その次回作が、ミュージカルで、現代のロサンゼルスで、色が綺麗らしく・・・
16時30分、前も後ろも左も右も、大勢の映画ファンに囲まれての平日に6割入りでこれは大ヒット間違いなしだよ「ラ・ラ・ランド」
冒頭のクレジットで、2.25 対 1 比率の【シネマスコープ】と判明。
これは60、70年代のハリウッド大作映画仕様ではないか!
通常は3対4だ。いいね、横ワイド。
スタートは渋滞のロスフルーウェイ貸切実写のダンスシーンが魅せる。
1シーン1カットの長回しなのでリズムが途切れない。
このテンポが心地いい。
あらすじ)
渋滞したロサンゼルスのハイウェイ。ようやく車の流れが動き出しますが、紙を見ながらブツブツと何かを呟いていたミア・ドーランはそれに気がつかず、後ろの車からクラクションを鳴らされ、腹を立てます。その車に乗っていたのは若い男で、ミアは彼に中指を立てて怒りを示すのです。ミアは映画の撮影所内のカフェへ。そこがバイト先です。女優志望の彼女はオーディションを受けまくっては落選する毎日。車の中でブツブツと呟いていたのもオーディション用の台本を読んでいたのです。今日もバイトを終えて面接を受けますが、また落選。
気を晴らそうと、友だちと一緒に業界関係者のパーティへ出かけます。しかし帰ろうとすると車が駐車違反でレッカー移動されていて、仕方なく徒歩で帰路へ。その途中、あるバーの前を通りかかるとピアノの演奏が聞こえます。それに気を引かれて店内へ。ピアノを弾いていたのは渋滞のハイウェイで自分を追い抜かした男でした彼の名前はセバスチャン。ジャズ・ピアニスト志望で、この店でバイトをしています。しかし、ポップスばかり弾かされ、気を腐らせていました。反逆心でジャズを演奏していたところへミアが来たのです。セバスチャンは即刻クビ。声をかけようとしたミアを無視してとっとと帰ってしまいます。
しばらくして、ミアがまた別のパーティに出ていると、セバスチャンがバンドの一員として演奏していました。ミアから声をかけ、2人はそれから親しくなります。お互いの夢を語り合い「理由なき反抗」を見る2人。やがて一緒に暮らし始めますが・・・
どこを切り取っても発色がいい。
室内でも、道路でも、レストランでも、プラネタリウムでも、どこでも踊るのだがその背景のセット美術が素晴らしい。
女性陣の服もレインボーを意識して生地の質感までよく見える。
この映画は前方で、見上げるように見るといい。
40、50年代フレッド・アステアやジーン・ケリーらのスタジオセットでのオーソドックスなハデ踊りというよりは、60、70年代フランスミュージカルの、背景と一体となった野外の解放感あるウェットな質感を感じた。
映画 シェルブーヌの雨傘 1964 (ジャック・ドゥミ監督 カトリーヌ・ドヌーブ主演)
この選択が正解だった。
2016年、トランプ帝国主義下のアメリカでフリーランスで生きるクリエーターの2人には夢追い人の心情の発露ダンスでないと。
揺れる心のひだをフランスミュージカルのどこまでも個人主義(これはアメリカファーストとは意味が違う)がピッタリはまる。
オーディションのリアル、ミュージシャンの妥協、新人女優の挫折・・・
バックヤードを見せることでフリーランスであることの生きざまを思い知る。
過去のミュージカルのみならず、様々な映画のオマージユに満ちた(ウディ・アレンの「マンハッタン」ボガード&バーグマンの「カサブランカ」など)
ビーイミーツガールのロマンチックを縦軸に、ハリウッド最前線の厳しさを横軸にしてクリエイティブで生きていこうとするリスクを取ろうとしてる世界中の若者と、かつて若者だったが大人(リスクから逃げた)に刺さるようになっている。
ラストシーンの2人の2カットの切なさが傑作にした。
2人はわかりあった。
言葉はいらないのだ。
いい映画の名シーンはサイレントなのだ。
これはロマンス映画の教科書「ローマの休日」のヘプバーンとペック のラストと重なるね。わかってるね。
監督はわずか31歳で、人生の機微と映画の文法をマスターしてる。
デイミアン・チャゼル凄いな。
文句なし今年劇場公開で見たNO1
100点
次回作は人類初の月に降りた、NASAのニール・アームストロング船長の伝記映画のようだ。
次回批評は「愚行録」か「沈黙~サイレンス」のどっちかで・・