映画「ムーンライト」フォトグラファー市橋織江が撮影したかの様な昼のハイキーと、夜のハイダイナミックレンジ合成級の美しさ(公開初日最速レビュー感想)バリー・ジェンキンス監督のアカデミー作品賞受賞作
3月31日ともなれば平日でも映画館は子供でいっぱい。
14時からあの怪獣映画を見て(感想は次回)余りの出来の悪さに本日公開作をもう一本見ることにした。
受賞を争った模様の「ラ・ラ・ランド」並みの混雑はなく、金曜18時としては普通の込み具合。
それも納得できる。オール黒人で、麻薬、暴力、いじめ、家庭崩壊・・・と、「ラ・ラ」が売れないとはいえ美男美女の恋愛+サクセスミュージカルとは対極の地味さだしね。
あらすじ)
マイアミの貧困地域で暮らす内気な少年シャロンは、学校では「チビ」と呼ばれていじめられ、家庭では麻薬常習者の母親ポーラから育児放棄されていた。そんなシャロンに優しく接してくれるのは、近所に住む麻薬ディーラーのホアン夫妻と、唯一の男友達であるケビンだけ。
やがてシャロンは、ケビンに対して友情以上の思いを抱くようになるが、自分が暮らすコミュニティではこの感情が決して受け入れてもらえないことに気づき、誰にも思いを打ち明けられずにいた。
何故か面倒見てくれるいいおじさんが、母親に麻薬を売る悪魔の商人という救いのなさ。この荒野の様な家庭と、悪人しかいない町で暮らす訳だから、起こることは悲劇しかない。
最大の見どころはこの映像の美しさだろう。
トリアーやミヒャエル・ハネケなどヨーロッパの巨匠級の緊張感がある。
夜シーンではどこ切り取ってもハイダイナミックレンジ合成の様なクオリティで彩度が異様に高い。
一方で昼の感情シーンではフォトグラファー市橋織江が撮影したような乙女トーンが見える。
デジタル映像なんだけどフィルムで撮影したような色の諧調の豊かさが感じさせる。
実は特殊な処理をして一旦色を抜いて、また色を付け足したらしい。
特に麻薬の売人になった主人公の黒人の体の美しさが生々しい。
悪の道に染まった主人公の心の揺れと映像がシンクロしているので、ストレートに見えてくる。
世界中のどこにでもいる薬の売人を主人公にして、本来なら共感など有り得ない人物にある種のシンパシーを覚える。
85点
次回「キングコング 髑髏島の巨神」