映画「彼女がその名を知らない鳥たち」原作:沼田まほかる 白石和彌監督 阿部サダヲ 伏線回収の見事さよりも蒼井優のヌードに日本女性の美しさを再確認した。松坂桃李のすけこまし演技は秀逸。
先週から、「ブレードランナー」「ゲットアウト」と洋画ラッシュなので、映画の日は邦画が見たくなって、いつもの館のいつもの場所、平日最終回で、事前情報のないものにした。
昨年のベスト10「オーバーフェンス」にも主演した蒼井優
テレビ出演はよく知らないが、映画館のスクリーンで見たい女優だ。
実年齢32歳だけど20代ようでもあり精神年齢が高そうでもある。
30代前半は娘にも母にもなれて、最も役柄に恵まれていい仕事を出来る時期だし、安藤サクラ、満島ひかり、宮崎あおいなど素晴らしいライバルもいるが裸へのこだわりの無さは頭ひとつ抜けてる感がある。
脚本や監督、役柄で仕事を選ぶタイプなのだろう。
週刊誌に”魔性の女”とか呼ばれているそうだがスクリーンで輝けば私生活はどうでもよろしい。
70年代の秋吉久美子、関根(高橋)恵子のスクリーン無双系統になって欲しい。
あらすじ)
作業着のまま暮らす醜くて汚い佐野陣司。同居して6年になる十和子。彼女は以前に捨てられた黒崎のことが忘れられない。
十和子は仕事もせず、陣司が稼いだ金で生活。にも関わらず陣司への嫌悪感はある。
姉は叱る、陣司は十和子を責めることなどせず愛し続ける。
ある日、十和子は壊れた腕時計をきっかけに、百貨店に勤める妻子持ちの水島と恋に落ちる。逢瀬を重ねるほど深まる想い。 陣司はストーキングや嫌がらせなどで水島と引き離そうとし、十和子はその様子に恐怖を抱く・・・
ダメ男役の阿部サダヲをスクリーンで初めて。
小市民らしい小芝居の連続で、イライラしてくる。
蒼井は商品クレーマーのベテランでありプロの言葉選びと、だらしなさ、安アパートセットのリアルが実にいい。
プライベートが普通じゃない、やっかいでメンドクサイ女を「オーバーフェンス」同様見事だな。
松坂桃李という名前は綾瀬はるかの彼氏とは知ってはいたが映像で見たことがない。
スクリーンで見るとなかなかの正統派二枚目で特に指がいやらしい。
女癖の悪いサラリーマンを好演している。
私が女なら抱かれたいと思うだろうな。
後半化けの皮が剥がれる不快さとセットで、すけこまし役なら日本一だ。
デパートは働く方も顧客も女の園なので、私も就職で考えたことがあるがブスメンなのであきらめた。
プロクレーマーで、他人依存で、不倫体質という、日活ロマンポルノライクな展開が素晴らしい。
ここに、刑事が訪ねてくる辺りから不快不穏な空気にサスペンスが加味される。
後半、蒼井のヌードがいいタイミングで挟んでくる。
米倉涼子的に手足が異常に長いとなんかしっくりこないが、日本女性の小ぶりなバストが美しい。過激に見せるためでなく、彼女の依存体質の殺伐とした心象風景の表現として納得できる。32歳の女性のカラダのリアリティは20代とは違う。
ラスト15分で怒涛の伏線回収はうなずくばかり。最近こういうパターンが実に多い。
去年のベスト10「何者」的な脚本が増えた理由はなんだろう。
原作小説を2時間以内に収めるには、とにかく省略しないとしょうがない。起承転結の結は削れないので、結を念入りに巧みな映像処理で見せる。
故に起承転との妙な違和感が残る。
今回はうまくいった。
不思議なタイトル「彼女がその名を知らない鳥たち」の回収は忘れたもよう。
85点