本年度最高の1本★映画「メッセージ」2回目完全ネタバレ解説(過去と思わせる未来は反則か?)
公開初日で見た「メッセージ」がこれまでのところ今年見たNo1だ。
ムビチケをラジオ局から頂いたので日曜18時
九州の田舎のイオン内シネコンで6人くらいで見る。
初回では細かすぎて見落としていたものが多々あったので
セリフの隅々までしっかり見ることができるのが2回目以降だ。
冒頭、主人公の言語学者ルイーズが娘を病気で失うシーンで始まる。
父親は出てこないのでシングルマザーなのかも知れない。
一人で娘と生きている共感が醸成される。
この娘とのシーンをAとする。
大学の授業中にUFOが降りてきてエイリアンとの
コミュニケーションを軍人らと一緒に調査分析していく。
「彼らはどこから来て、目的は何なのか?」
この現在進行形がBだ。
随所にAが割り込んでくる。
最初はこのイメージが彼らの言葉を解析する手がかりになるのだろうと
思っているとAは実は過去ではなく、未来だとわかってくる。
つまりこの時点で、ルイーズは母ではなく夫もいないのだ。
このプロジェクトで出会うのだ。
彼らは3000年後に地球に救ってもらう為にやってきた。
今から地球人とコミュニケーションをスタートしたいと。
駅前留学みたいなものか?
彼ら自身も予知能力があるのだ。
中国チームの攻撃を阻止したいルイーズは
ここから超能力を活かす。
(この辺りはかなり強引でご都合主義だが)
エイリアンは彼女の予知能力を見抜き開花させ
攻撃を中止させUFOは去っていく。
ルイーズは数々のイメージから
彼女が結婚し、娘を産み、病気で死ぬとわかった上で
夫と生きていく決心をするところで映画は終わる。
この映画はエイリアンとの遭遇を表のテーマにしながらも
能力の開花、夫との出会い、一時の幸福と、夫や子供との別れを
わかった上で受け入れる女性の数奇な生き方が裏のテーマに描いている。
構成上、Bからスタートして、Aが出てくるのなら
ルイーズの1人称の心象風景なので問題ない。
何故かはわからないが、子供と遊んでいるイメージが現れる
のは納得できる。幻影で処理できる。
しかしAが先にある。
全編ルイーズ主観なのに
この冒頭はいったい何なんだと言いたくなる向きもあるだろう。
ここが監督のマジックだ。
ルイーズを悲劇の主人公にすると同時に亡くなる子供との幸福を見せる。
プロジェクトが始まってからではこの悲劇を挿入すべきタイミングがない。
リズムも感傷も別の種類だ。
ミスリードと言われてもここしかない。
冒頭でいれるとラストまでの時間差があり有効に効いてくる。
その才能が只者ではない。
唯一の欠点は、彼女の過去は実のところ描かれていない。
どんな人生を送り、価値観を持っているのか?
そこは、Aを入れたが為にないのだろう。
そんなテクニックの話よりも
彼女は子供の命を弄んだのか?
あなたならどうする?
そんな根源への問いかけがこの映画の素晴らしさだ。
SF映画の体をとりながら最も身近な家族の命とその選択を描いたのだ。
いい映画はそういうもんだ。
恋愛映画であろうとなかろうと
サスペンスでもホラーでもSFでも
ラストシーンでは人の生き方に関わる重いものを描いてくれる。
次回は、我らがリリー・フランキーの「美しい星」予定