批評サムライ  ~映画・ドラマ・小説・エンタメ ★斬り捨て御免!~

責任が何でも曖昧なこの国で娯楽くらいは白黒ハッキリ!大作も小品もアダルトも興業収入も関係ない。超映画批評にない「上映途中の居眠り」が特技。シネマハスラー宇多丸氏、たまむすび町山智浩氏、シネマストリップ高橋ヨシキ氏を見習って公開初日最速レビューを心掛け評価は点数制。地方在住フォトグラファーがど田舎のシネコンでネタバレあり&あらすじ&見たまま感想ブログ

映画「バイス」大統領は副大統領に操られ、副大統領は妻に操られながらも家族を大切にする一方、青春をこじらせて政治でチャンピオンになった陰気くさいロッキー映画。新感覚コメディの秀作

ダークナイトバットマンターミネーター4のイケメン俳優クリスチャン・ベールがデブ・ハゲ・小心の副大統領を演じる。

予告編では、ブッシュとの掛け合いのコメディ度が最高に面白そうで公開初日にいつものど田舎シネコンで拝見。

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あらすじ)

60年代半ば、酒癖の悪い電気工ディック・チェイニー(クリスチャン・ベイル)は、恋人のリン(エイミー・アダムス)に激怒され、彼女を失望させないことを誓う。

その後、下院議員のドナルド・ラムズフェルド(スティーヴ・カレル)のもとで働きながら政治のイロハを学んだチェイニーは、権力の中に自分の居場所を見いだす。

そして頭角を現し大統領首席補佐官、国防長官になったチェイニーは、ジョージ・W・ブッシュ(サム・ロックウェル)政権で副大統領に就任する・・・

 

よく存命する実在の人物をエンタメ映画でこき下ろすとは羨ましい。

(日本版バイスなら、ぜひ副総理・麻生太郎物語でコケにして欲しい。同じ福岡県人としてほんと恥ずかしい)

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それにしてもクリスチャン・ベールは凄いな。

ゴッドファーザーマーロン・ブランド級だけど彼は青年期は演じてないのでそれ以上だ。髪の毛から足先までなりきった。

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これまで見てきたハリウッドコメディは、マッチョで単細胞が多かったが・・・

小心で、何考えているかわからない、心臓に爆弾を持つ、子供思いの屈折男の喜怒哀楽、悲哀がビンビン伝わってくる。太宰治小説の登場人物みたい。

細かいアメリカ政治は知らないが、副大統領になった2000年以降はテロとの戦いの時期なのでここ20年の現代史(=自分史)の内幕なので面白くない訳がない。

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妻役が大好きなエイミー・アダムス

野心旺盛、回転が速く、夫より社交性があって、話がうまく、華がある

明らかに夫よりも政治家向きな秀才妻をまんま演じる。

ここ数年、彼女はハズレがない。

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ジョージ・W・ブッシュ役のサム・ロックウェルは傑作

こっちのコメディ度の方が高い。

何にも考えていない操られ男として。

2017年「スリー・ビルボード」のメンヘラ警官から大統領まで。

こういう曲者の脇がこの映画は多くて素晴らしい。

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このドラマは、愛国者である軍人の事故によって心臓移植に成功した”ハートのない”男ディック・チェイニーの政治版ロッキーだ。

「ロッキー」は万人に支持されるが、チェイニーは彼の野心の成就によって、武器製造企業が儲け、多くのイラク市民と軍人が死んだ。

辞めて10年たってその内幕がコメディ映画として明らかになる。

映画と政治がつなっがっているアメリカ。

ここは素晴らしい。

 

80点