批評サムライ  ~映画・ドラマ・小説・エンタメ ★斬り捨て御免!~

責任が何でも曖昧なこの国で娯楽くらいは白黒ハッキリ!大作も小品もアダルトも興業収入も関係ない。超映画批評にない「上映途中の居眠り」が特技。シネマハスラー宇多丸氏、たまむすび町山智浩氏、シネマストリップ高橋ヨシキ氏を見習って公開初日最速レビューを心掛け評価は点数制。地方在住フォトグラファーがど田舎のシネコンでネタバレあり&あらすじ&見たまま感想ブログ

映画「万引き家族」是枝裕和監督 リリー・フランキーの品の無さ、子役のリアルさ、松岡茉優のお宝演技、安藤サクラのふてぶてしさ満開の母性には参った。それよりも「もうおねがい、ゆるして」の5歳女児・船戸結愛ちゃん虐待死と重なり過ぎてどうしようもなかった。

一週間前のプレ上映に行きそびれ、昨日の公開初日に出遅れる。

晩御飯食べてると、NHK7時のニュースでも大ヒットが取り上げられた。

20時から制作委員会のフジテレビが地上波で「海街Diary」だし

監督の国からの表彰辞退、文化庁の支援は受けていた矛盾への非難など、今週は明らかに「是枝祭り」の様相。

土曜の最終上映は多いに決まっているが、行くしかない。

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案の定、いつもの九州のど田舎シネコンほぼ満席。
邦画のシリアスドラマが満席なのはほんとに嬉しいな。

あらすじ)

 東京の下町に、日雇い労働の父・柴田治とクリーニング店で働く妻・信代、息子・祥太、風俗店で働く信代の妹・亜紀、そして家主である祖母・初枝の5人家族。

 家族の収益は初枝の年金と、治と祥太親子で手がける「万引き」。5人は社会の底辺で暮らしながらも家族には笑顔が絶えなかった。

 冬のある日、近所の団地の廊下にひとりの幼い女の子が震えているのを見つけ、見かねた治が連れて帰る。体中に傷跡のある彼女「ゆり」の境遇をおもんばかり、「ゆり」は柴田家の6人目の家族となった。

 しかし、柴田家にある事件が起こり、家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれの秘密と願いが次々に明らかになっていく・・・

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いつもの脱力感漂わせるリリーフランキーが、子供を使っての万引きのスリルと

「万引き家族」のタイトルテロップの出し方の職人芸。

冒頭から心掴む。

映像が微妙に懐かし色と思ったら、デジタルでなくフィルム撮影だと気がついた。

家族の住む、やたら物の多い(いるか、いらないか、わからなさそうな)狭さが昭和感というよりあきらかに低所得者の趣き。

まるで我が家の様で身につまされる。

そして「ゆり」ちゃん登場。

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この子を見ていると「命」を考えざるを得ない。

親の愛に放置され、外で置いておかれるむき出しの「いのち」

「もうおねがい、ゆるして」のあの子と100%重なる。

随分前に目黒区に住んでいたのでなおさらだ。

あまりにタイムリーなドラマ。

 

彼女を誘拐したのも、一瞬で事の重大さを察知した万引き男のある種の感性の豊かさ。犯罪者ではあるけれどもシンパシーを抱いてしまう。

よく出来た脚本だ。

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この5人「家族」の日常の異様さの中の、この絆と暖かさはどうだ。根は悪い人たちでは決してない。

しかし何かみんな裏の顔があるようだ。そこは説明がない、

また、児童相談所とか役所など地域社会の不備など一切指摘しない。

誘拐捜査、裁判も、判決も描かない。北野武演出より省略してしまっている。

底辺で暮らす人々の細部を淡々と描く。

この辺りの丁寧さは平成の小津安二郎だ。

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安藤サクラはオールヌード(背中だけ)でリリーとの夏の夕暮れ、夕立情事を肉食おばさんをさらっと演じる。

取り調べ問答、収監面接の別れと名演技を見せつける。

「100円の恋」でも感じたが世界映画の最前線に立つ女優だな。

今年の主演女優賞は総獲りしかあり得ない。(興味はないが)

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品のない暮らしをしてい疑似家族を描きながら

是枝のいつものテーマ

「人は前を向いて生きていかねばならない」

にプラスして

「命を守るためなら何でもやれ」と

 

万引き家族=偽家族によって、本物の家族の宝であるはず4歳児は救われる。

しかし、偽家族崩壊後は、彼女は愛のない家庭に戻り・・・

いったいその後はどうなるんだろう?

 

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船戸結愛ちゃんのような悲劇にならないように大人の社会はどうするの?

あんたならどうするの?

実親だったら子どもの虐待を許す仕組みをつくった大人のルール=法律を

役者に語らせず、ナレーションもなく、テロップさえ入れない

敢えて主張しない、是枝の品の良さと重なって

ど直球、内角高めに入ってきた。

 

映画をきっかけで、狂った親から子どもを救わないと(法律変える)
ただ感動したで終らせてはいけないと思うな。

モリカケも必要だが、働き方改革法案よりはまず子どもだろう、命だろう。

 

法律改正なら国会議員を働かせないといけない。

現行の運用なら知事を働かせないといけない。

何かしないと、聞こえない悲鳴が日本中で、ご近所から今もあがっている。

 

100点

 

一部の是枝の発言や映画への非難の前に、大人にはまずやることがある。

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児童虐待の防止等に関する法律 一部抜粋 (平成12年5月24日)

 

(目的) 第一条

 この法律は、児童虐待が児童の人権を著しく侵害し、その心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるとともに、我が国における将来の世代の育成にも懸念を及ぼすことにかんがみ、児童に対する虐待の禁止、児童虐待の予防及び早期発見その他の児童虐待の防止に関する国及び地方公共団体の責務、児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援のための措置等を定めることにより、児童虐待の防止等に関する施策を促進し、もって児童の権利利益の擁護に資することを目的とする。

(児童虐待の定義) 第二条 

この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。

一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。

二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。

三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。

四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

(児童に対する虐待の禁止) 第三条 

何人も、児童に対し、虐待をしてはならない。

(国及び地方公共団体の責務等) 第四条 

国及び地方公共団体は、児童虐待の予防及び早期発見、迅速かつ適切な児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援(児童虐待を受けた後十八歳となった者に対する自立の支援を含む。第三項及び次条第二項において同じ。)並びに児童虐待を行った保護者に対する親子の再統合の促進への配慮その他の児童虐待を受けた児童が良好な家庭的環境で生活するために必要な配慮をした適切な指導及び支援を行うため、関係省庁相互間その他関係機関及び民間団体の間の連携の強化、民間団体の支援、医療の提供体制の整備その他児童虐待の防止等のために必要な体制の整備に努めなければならない。

2 国及び地方公共団体は、児童相談所等関係機関の職員及び学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、保健師、弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者が児童虐待を早期に発見し、その他児童虐待の防止に寄与することができるよう、研修等必要な措置を講ずるものとする。

3 国及び地方公共団体は、児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援を専門的知識に基づき適切に行うことができるよう、児童相談所等関係機関の職員、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援の職務に携わる者の人材の確保及び資質の向上を図るため、研修等必要な措置を講ずるものとする。

4 国及び地方公共団体は、児童虐待の防止に資するため、児童の人権、児童虐待が児童に及ぼす影響、児童虐待に係る通告義務等について必要な広報その他の啓発活動に努めなければならない。

5 国及び地方公共団体は、児童虐待を受けた児童がその心身に著しく重大な被害を受けた事例の分析を行うとともに、児童虐待の予防及び早期発見のための方策、児童虐待を受けた児童のケア並びに児童虐待を行った保護者の指導及び支援のあり方、学校の教職員及び児童福祉施設の職員が児童虐待の防止に果たすべき役割その他児童虐待の防止等のために必要な事項についての調査研究及び検証を行うものとする。

6 児童の親権を行う者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を有するものであって、親権を行うに当たっては、できる限り児童の利益を尊重するよう努めなければならない。

7 何人も、児童の健全な成長のために、良好な家庭的環境及び近隣社会の連帯が求められていることに留意しなければならない。

(児童虐待に係る通告) 第六条 

児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。

2 前項の規定による通告は、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第二十五条の規定による通告とみなして、同法の規定を適用する。

3 刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第一項の規定による通告をする義務の遵守を妨げるものと解釈してはならない。

第七条 市町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所が前条第一項の規定による通告を受けた場合においては、当該通告を受けた市町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所の所長、所員その他の職員及び当該通告を仲介した児童委員は、その職務上知り得た事項であって当該通告をした者を特定させるものを漏らしてはならない。

(通告又は送致を受けた場合の措置) 第八条 

市町村又は都道府県の設置する福祉事務所が第六条第一項の規定による通告を受けたときは、市町村又は福祉事務所の長は、必要に応じ近隣住民、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他の者の協力を得つつ、当該児童との面会その他の当該児童の安全の確認を行うための措置を講ずるとともに、必要に応じ次に掲げる措置を採るものとする。

一 児童福祉法第二十五条の七第一項第一号若しくは第二項第一号又は第二十五条の八第一号の規定により当該児童を児童相談所に送致すること。

二 当該児童のうち次条第一項の規定による出頭の求め及び調査若しくは質問、第九条第一項の規定による立入り及び調査若しくは質問又は児童福祉法第三十三条第一項若しくは第二項の規定による一時保護の実施が適当であると認めるものを都道府県知事又は児童相談所長へ通知すること。

2 児童相談所が第六条第一項の規定による通告又は児童福祉法第二十五条の七第一項第一号若しくは第二項第一号又は第二十五条の八第一号の規定による送致を受けたときは、児童相談所長は、必要に応じ近隣住民、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他の者の協力を得つつ、当該児童との面会その他の当該児童の安全の確認を行うための措置を講ずるとともに、必要に応じ同法第三十三条第一項の規定による一時保護を行うものとする。

3 前二項の児童の安全の確認を行うための措置、児童相談所への送致又は一時保護を行う者は、速やかにこれを行うものとする。

(児童虐待を行った保護者に対する指導等) 第十一条 

児童虐待を行った保護者について児童福祉法第二十七条第一項第二号の規定により行われる指導は、親子の再統合への配慮その他の児童虐待を受けた児童が良好な家庭的環境で生活するために必要な配慮の下に適切に行われなければならない。

2 児童虐待を行った保護者について児童福祉法第二十七条第一項第二号の措置が採られた場合においては、当該保護者は、同号の指導を受けなければならない。

3 前項の場合において保護者が同項の指導を受けないときは、都道府県知事は、当該保護者に対し、同項の指導を受けるよう勧告することができる。

4 都道府県知事は、前項の規定による勧告を受けた保護者が当該勧告に従わない場合において必要があると認めるときは、児童福祉法第三十三条第二項の規定により児童相談所長をして児童虐待を受けた児童に一時保護を加えさせ又は適当な者に一時保護を加えることを委託させ、同法第二十七条第一項第三号又は第二十八条第一項の規定による措置を採る等の必要な措置を講ずるものとする。

5 児童相談所長は、第三項の規定による勧告を受けた保護者が当該勧告に従わず、その監護する児童に対し親権を行わせることが著しく当該児童の福祉を害する場合には、必要に応じて、適切に、児童福祉法第三十三条の七の規定による請求を行うものとする。