映画「三度目の殺人」是枝裕和監督 福山雅治、役所広司、広瀬すず 誰が犯人か?よりも随所に張り巡らされたミスリード、記号、メタファー探しを楽しむ。
今月は見たい作品が多くて、3K(黒沢、是枝、北野)の2本目
ミステリーは、とりわけ法廷物は少ない観客と見るべきだ。
九州のど田舎シネコン、平日の21時、私を含め5人
最高のコンディションで是枝映画と向きあう。
あらすじ)
重盛は勝利にこだわる弁護士。30年前に強盗殺人の前科を持つ殺人容疑のかかった三隅の弁護にあたる。
三隅は、自分を解雇した工場の社長を殺して金銭を盗んだ。容疑はほぼ確定しており、このままいけば有罪は確実と思われた。
やむを得ず仕事を受けた重盛は、三隅と話す内に本当にこの男が犯人なのか?
その理由は?わかなくなっていく・・・
キャスティングがいいな。
何を着てもかっこいい福山が今回はスーツしか見せない。
役所は囚われの身なので動けない分、広瀬すずが後半の主役として傷ついた少女を傷ついた風に演じる。
今旬な斉藤由貴が、子供に依存するウソつき母なのは笑った。
プライベートは関係ないとは思うが、バカ不倫男のパンツ頭かぶりの絵が強烈過ぎて
大人映画を支える女子の反発はフォーエバー。
もう斉藤をスクリーンで見ることは2度とないのだろう。
自らのウソで卒業させられた。
力抜いた感がいつもより自然な吉田鋼太郎
近寄ると切れられそうな検察官・市川実日子
味のある事務員おばちゃん・松岡依都美は初めて知った
新米弁護士・満島真之介は・・・なんかよくわからない
黒沢清映画もそうだけど、映像に映った何気ない1シーンは決して偶然ではなく必然である。
カナリア、十字架、電線、交差点・・・
デビッド・リンチの怪奇趣味程ではないがメタファー、寓意、暗意などを映像に散らかっていて
そこを楽しむべき映画となっている。
サスペンスだからと言って真実はどこか?
新犯人は? などと野暮なことを言う方がどうかしている。
中学生にもわかるようなハリウッドバカ映画の方がむしろ異常で
何でもスッキリすればいいというものではない。
福山の心象風景が数カットインサートされる。
そのイメージをどうとらえるか?
人によってはミスリードと?
そこも楽しむ。
場面転換に空撮を挟むが、ドローンの低級飛行で作家性を見る。
ワクワクするな。
ヨーロッパ映画では当たり前のことだけど
わかり易さをあえて省き、物語の結末で評価されることを拒む。
観客に真意を読み解く力を強いる。
これが21世紀映画の世界標準
是枝裕和2.0が見えた。
90点
次は「足立区のたけし、世界の北野」