小説「キャプテンサンダーボルト」阿部 和重・伊坂幸太郎共著
今年最初に読んだ小説。
阿部 和重と伊坂幸太郎の本は初めて。帯が痺れる。
~世界を救うために、二人は走る。東京大空襲の夜、東北の蔵王に墜落したB29。公開中止になった幻の映画。迫りくる冷酷非情な破壊者。すべての謎に答えが出たとき、カウントダウンがはじまった。~
TBS土曜の何でもヨイショ番組の書評コーナーで絶賛していたし期待した。
ヤフオクで安く買えたので3か月掛かりで読んだのだが・・・
何だろうこの軽さは。
ページ数が多く装丁は重いのに、かるーい感じ。
太平洋戦争中の歴史秘話を探る旅に関わる
人生とも、社会とも折り合いのつかない中年2人
謎に包まれた父親捜しの旅を続ける官僚の娘
主役を突如降ろされ汚名を着せられたアクション俳優
海外から来た謎の殺し屋
イーストウッドの映画「サンダーボルト」
など、サスペンス、ミステリー、映画ファンなら泣いて喜ぶ
舞台設定なのに、この出来損ないぶりはひどい。
またマスコミのヨイショに騙された。
伏線は確かに回収はされる。
しかし伏線の先にある歴史の真実の大きな絵が
描かれないので感動がないのだ。
終戦間際の日本軍の秘密研究とは?
米軍はそれをどこで知ったのか?
殺し屋と、組織の正体は?
おじさん2人の心象風景にこだわり過ぎて
森を描かず、木も描かず。
10代のヤンチャ事件の影を引きずるつまんない大人の
友情の作り直し?小説となってテーマが広がらない。
史実にフィクションを混じらせ
読書を唸らせるためには
背景をしっかり描かないとリアリティが現れない。
例えば歴史ミステリーの傑作と言えば
作品に登場する組織、人、矜持、哲学が散りばめられ
納得出来るし、心を揺さぶられる。
その行為に「異議なし」と叫ばずにはいられない。
小説の世界観構築の凄みを感じざるを得ない。
これが本物の作家だ。
それに比べて・・・(比べる必要もないが)
大学生が初めて挑んだ歴史のびっくりポン小説か?
キャリアのある(読んだことないので知らないが)作家の共作が
が何だったのか?
明らかにそのキャリアに傷をつけたであろう
ライト・ライト・ノベル。
10点