批評サムライ  ~映画・ドラマ・小説・エンタメ ★斬り捨て御免!~

責任が何でも曖昧なこの国で娯楽くらいは白黒ハッキリ!大作も小品もアダルトも興業収入も関係ない。超映画批評にない「上映途中の居眠り」が特技。シネマハスラー宇多丸氏、たまむすび町山智浩氏、シネマストリップ高橋ヨシキ氏を見習って公開初日最速レビューを心掛け評価は点数制。地方在住フォトグラファーがど田舎のシネコンでネタバレあり&あらすじ&見たまま感想ブログ

映画「グリーンブック」60年代、アメリカ南部、人種差別、ロードムービー 好きな要素全部入りで堪能した。

前情報からすると、60年代、アメリカ南部、人種差別、ロードムービーetc

 

70~80年代に青春を味わった者としては過去の名作がどうしたって蘇る。

イージーライダー」「ハリーとトント」

ストレンジャー・ザン・パラダイス」「パリ・テキサス

ミシシッピー・バーニング」「スケアクロー」

それと我らがイーストウッド映画の数々・・・

どうしたって心の琴線刺激映画に間違いないだろ。

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アカデミー賞を獲ったから見に行ったんではなくて、このポスターの奥深さ。

車のボディもシートも。2人のシャツも、空の色だってこのブルー

2人の肌の色が違うだけ・・・

わかってるな、この監督。

 

いつものど田舎シネコンに7割の入りで、いつもの席についた。

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ガサツな運転手&ボディガードのイタリア系が憎めない。

どう見たって教養が低いか無い。

ガテン商売、家族思い、よく笑い、よく食べる。

70年代のアンチヒーローの一人、ジーン・ハックマン風で

共感が集まる役者を選んだもんだ。

 

対する雇い主のピアニストの

教養の塊りで、好き嫌いハッキリして、しかしミステリアスで

何か深刻な問題を抱えている感がわかってくる。

この道中のやりとりが何とも愉しい。

彼らと一緒に旅してるリズムが確かにある。

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運転手が各地で出くわす黒人であるが故のトラブルを、いろんな手を使って守っていく時のサバキ方、世渡りの巧さがわかりやすい見せ場。

一方でピアニストは旅先の事件の合間に少しずつ運転手に、被差別のつらさを吐露していく。

その心の開きが最終版にハッキリ見えてくる。

旅はかならず終わる。

運転手は愛する妻や家族のもとに。

ピアニストは誰もいない部屋へ。

ラストシーンはお約束だな、あれがいい。

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ロードムービーは本当にいい。

100点

 

 

 

 

 

映画「バーニング」ユ・アイン、チョン・ジョンソ主演 イ・チャンドン監督が村上春樹をどう映画化したのか気になったが・・・

いい歳して村上春樹のファンと言いたくないが「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は素晴らしかった。村上は殺しのないミステリーを書けばいいのに。

1Q84」は理解不能、「騎士団長殺し」に至っては・・・とんでも本の括り。

でも次作を気になってしかたない。他の作家の誰よりも。

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彼の原作映画は「トニー滝谷」「パン屋襲撃」「ノルウェイの森」と見ているが原作をなぞった退屈な映像化で感心しない。「トニー滝谷」だけが、イッセー尾形の名演で救われた感があった。

今回はどうだろう。舞台を現代、韓国に置き換えて、都市と農村を行き来する若者の悲鳴が聴けるのか・・・・いつもの巨大スーパーに行ってみた。

冷え切った日韓の反映か、私を含めてわずか3名。

上等だ。

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あらすじ)

アルバイトをしながら小説家を目指すジョンス(ユ・アイン)は、ある日、偶然幼馴染のヘミ(チョン・ジョンソ)と出会い、アフリカ旅行へ行く間、飼っている猫の世話をしてほしいと頼まれる。やがて帰国したヘミはアフリカで出会ったという謎の男ベン(スティーブン・ユァン)をジョンスに紹介する。

その後、ベンはヘミと共にジョンスの家を訪れ、自分の秘密を打ち明ける。「僕は時々ビニールハウスを燃やしています……」ジョンスが恐ろしい予感を抱き始めるなか、突如ヘミが姿を消す・・・

主役の青年がいいね。

作家志望ながら無職、都市と農村を行ったり来たり、家族はバラバラのまだ何者でもない浮遊感。決してハンサムでない、オーラの無さ、将来も無さそうな若者の不安と恍惚が窓越しの都会の風景から見えてくる。

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彼の近所に住んでいたヒロインの田舎娘ぶりも好感が持てる。

角度によっては時々美人に見える程度のバイト娘。日本のどの都会にもいる、なんちゃって地方出身者。

スクリーンで初めて韓国女性のヌードを見たが痩せっぽちでセクシーとは程遠いが夕日に舞う姿はイマジネーションを誘う。

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そして謎の金持ち。

家族持ちで、職業不明、漱石曰くの「高等遊民」か。

このエサさわやか笑顔の廻りにいる取り巻きが実に気に食わない。

そんな3人のうろうろするスケッチ物語。

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途中まで本当に退屈。何も起きない。

村上のファンでなければ映像の深見なんかしやしないので苦痛だろう。

 

が、「納谷に火をつける」告白からサスペンスが始まる。

村上作品としては最高の出来栄えだと思う。

メンドクサイ、アオハル映画

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傑作でもなく万人受けもしない。

小説と同じで、ツボを刺激するだけで完治しないマッサージの様なね。

 

70点



 

 

 

映画「蜘蛛の巣を払う女」クレア・フォイ主演 北欧ミステリー「ミレニアム」の第2弾はご都合主義の極みで女トム・クルーズ大活躍でゴールを間違えた「ドラゴン・タトゥーの女」シリーズ唯一の失敗作。

今年最初の3連休の最後に、新年最初の映画館開きとなった。

公開前になるとやたら主演者がバラエティに出まくる邦画は見たくない。

「バナナ」がどうしたとか、10代のラブコメ、アニメが多くて困った。

唯一「蜘蛛の巣を払う女」しかなかった。

近所の巨大スーパーのシネコン13時、20人くらいで観賞スタート

(ネタバレあり、注意)

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前作の「ドラゴン・タトゥーの女」(2011)は好きだった。
デビッド・フィンチャーのセンス溢れたハッカー表現、北欧の風景(都市も地方も)、タイトル・・・21世紀の現代映画と納得。

その数年前に小説「ミレニアム-1-」が楽しめた。

北欧ミステリーが好きなのは中学の時にはまった「刑事マルティン・ベック」が好きだったから。ホームズ、ポアロなど犯行や犯人誰?など本格物には興味がなく、怪人20面相も飽きて、社会派に目覚めた先が70年代スェーデンの都市生活を活写したこのシリーズだった。

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「バルコニーの男」が特に傑作だった。松本清張の陰湿なムラ社会とは違う、福祉先進国の自立した夫婦関係、職場の人間関係が目からウロコだった。

「笑う警官」「ロゼアンナ」・・・角川文庫の色つきカバー表紙がクールだった。

それ以来北欧ミステリーは小説も、ドラマも、映画も、インテリアも、家具も、好きになった。

 

次にスェーデンのTVドラマ版も良かった。

美しくなく無愛想で頭の回転が速く傷つけられるがタフで不死身。そして誰といてもいつも孤独。主演ノウミ・ラパスの真骨頂。

だからトリプルでこのシリーズは評価してきた訳だが、さて本題。

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あらすじ)

特殊な映像記憶能力を持つ天才ハッカーで、パンク風の特異な風貌、そして背中にドラゴンのタトゥーを入れた強烈な個性の持ち主リスベットは、天涯孤独で、壮絶な過去を持つ。その過去が、あるキーパーソンによって明らかにされていく……。

自らの裁きによって悪を正そうとするリスベットに対し、「皆を助けるのに、なぜあの時……私だけを助けてくれなかったの?」と意味深な言葉を彼女に投げかける謎の女カミラ。

彼女もまた、凄惨な過去と秘密を背負っていた。二人の関係を紐解きながら、リスベットはジャーナリストのミカエルと再びタッグを組み、新たなる犯罪組織の陰謀に迫る。

 

リスベット役をどうしてもノウミ・ラパス、ルーニー・マーラ(2011) 比べてしまう。


[字] ドラゴン・タトゥーの女 - サランデル役を探して

 

ミハエル役が昨年感心した「ボルグ/マッケンロー」のボルグ役スベリル・グドナソンだと後で気づいた。

双子の妹を演じるシルヴィア・フークスは絵に書いた様な北欧美女で雪がよく似合う。

脇の役者はハリウッド映画に馴染みの薄いユーロ系で達者だ。

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孤立を演じてはいるものの主演クレア・フォイにはなんか違うな。

国家機密をリスペクトが盗み、悪党になった妹一味との対決なんだけど、注射打たれても、即薬飲んで起き上がり、車運転して、煙突登ってと、トム・クルーズ「ミッションなんとか」以上のスーパーヒロインぶりに戸惑ってしまう。

こういう映画を見に来たのではないのに・・・・

 

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アメリカからデータを盗まれたNSAアメリカ国家安全保障局)職員が一人で、リスペクト周辺を捜査するが彼女に助けられる空港の脱出劇はさらに醜い。天才ハッカーが建物のコンピュータシステムに侵入しドアの開閉を自由にするのはよくある手だけど、秒単位にここまで完璧だと映画のゴールを別のところに連れていく。

この映画はアクション活劇なのか?

 

終盤、リスぺクトが絶体絶命でまたもNSAがスナイパーとして大活躍。

なんのことはない女トム・クルーズと黒人トム・クルーズで組織を壊滅してしまった。

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スェーデンの公安のNO2の美人役人も、悪党を手を組んだあげくに殺される。

観客の意外性を高めるための何でもあり感が酷い。NO2が悪党の城になんか行くものか。

私の中では3回も満足させてもらったので

構成として蜘蛛の巣の様に絡まった糸が収斂されてクライマックスを迎え

それは、リスベットへの共感=カタルシスで第3弾へ続く・・・・

当然そうなるものと期待していたが。

 

そもそも皆が狙う「データ」が国家にどんなに必要なのかの提示がないので物語の背骨(縦軸)になってない。

横軸としてリスペクトの過去(運命が別れた姉妹の相克)が十分に描かれない。

補助軸として1作から唯一の男友達ミハエルとの恋愛もない。

 

演出のセンスは感じられず、登場人物の誰にも共感はできず、1作からの繋がりは無視され、北欧デザインも堪能できず・・・

2時間のご都合主義サスペンスを見せられた先には、落胆しかない。

背中に「金返せ」のタトゥーでも入れたろか。

 

ドラゴン・タトゥーの女」シリーズ唯一で初めての失敗作。

 

0点

 

 

 

第3回 批評サムライ 映画大賞2018発表

 謹賀新年

このブログもなんだかんだ-足かけ4年になります。
昨年はここ最近一番映画見てない年でした。

見たことも忘れつつある50代、情けない。

 

対象)

2018年に見た映画(邦画・洋画)、TVドラマ、アダルト etc

新作も旧作も、初見も再見でも。劇場公開、YouTubeAmazonプライム etc
レンタルDVDでも。デバイスはPC、タブレット、iPhone etc

鑑賞したもの全てが対象です。

 

【映画賞】

グランプリ作品賞 「カメラを止めるな!

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物語の面白さはただ単にどんでん返しとかでなく、2回目以降も楽しめること。
その為に、監督、役者、スタッフの「必死」さがこっちに伝わってくる熱気が見えること。

監督賞 上田慎一郎カメラを止めるな!

脚本賞 上田慎一郎カメラを止めるな!

何よりも、東京から観客の熱気が、九州の地方都市までじわじわ広がって来た(しかもネタバレ配慮した)邦画応援の機運を感じた稀有なイベントになったことが嬉しかった。

 

主演男優賞 ベニチオ・デル・トロボーダーライン:ソルジャーズ・デイ

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立ち姿だけで存在感がもうサムライ!

全盛期の三船敏郎感に、ラテン中南米人(プエルトリコ)独特のセクシーさとプラスされてアクションしてもしてなくてもオーラしかない。

 

主演女優賞 エイミー・アダムスノクターナル・アニマルズ

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見る前から綺麗なのはわかっているが、この映画では妖しさ満開。

都会で生きる今の女、回想されるかつての女、砂漠で彷徨う劇中劇の女の3役を堪能できる。もう溜息しかない。

 

助演男優賞 青木崇高(来る)

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何ともと不快な男を愉しく演じて脇役としてブレークの予感。原田芳雄的な殺気を久しぶり感じた。

 

助演女優賞 松たか子(来る)

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独壇場で主演を喰うオーラ。

突如女王あらわれて中島ワールドが動き出した。

 

竹原芳子(カメラを止めるな!

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出てくるだけで爆笑。場をほんわかに支配する。

元お笑い芸人の凄みを見せた。

 

特殊演技賞 トニ・コレットへレディタリー/継承

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次から次に来る出す変顔オンパレードは一見の価値がある。

このエネルギーは凄い。

 

撮影賞 「ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ

砂漠にマシンガンは合う。 命のやり取りが見える。

 

音楽賞 「ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ

18年2月他界したヨハン・ヨハンソンに代わり師弟筋のヒドゥル・グドナドッティルが麻薬、砂漠、殺しを見事にイメージさせる。

 

音響賞 「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男

随所に北欧ぽい重厚感が画面を引き締める。

 

特別期待賞 松岡茉優万引き家族

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JKビジネスに現れた松岡茉優は天使だった。

トップ7

・「ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ」 

・「来る」

・「万引き家族

・「ボヘミアン・ラプソディ

・「ノクターナル・アニマルズ

・「スリー・ビルボード

・「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男

 

ワースト6

・「へレディタリー/継承」 

・「億男

・「ザ・プレデター

・「モリーズ・ゲーム

・「クソ野郎と美しき世界

・「孤狼の血

 

特に印象的なのは「クソ野郎と美しき世界
業界向け狙いと短すぎる限定上映の可笑しな世界が邦画界でまかり通る。

平成でこういうのは終わって欲しい。

 

映画「来る」説明抜き、インサート過剰の中島哲也風だけど、脇の演技合戦(黒木華、小松菜奈、青木崇高)が素晴らしい。大友「童夢」風のアパートサイキック戦争より東映女囚サソリの梶芽衣子ライクな松たか子の怪演が楽しめる。

「告白」「渇き。」と中島節がクセになってるので4年ぶりの新作は楽しみにしていた。

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突如現れるイマージュを躊躇なく挿入するリスクを取ってでも世界を作ろうとする姿勢が、3K(北野、是枝、黒沢)にはない、必要ない小細工と見る向きもあるだろうが、一貫してやってるところが作風となってPOPで好きだな。

いつものど田舎シネコンの平日16時。

観客は5人ほど。至福が始まる。

 

リズムが心地よい。中島はこの映画でも画面展開を厭わない。それも不思議な画像を挟んでくる。意味がわからないものばかりで実に強心臓だ。振り切ったな。潔よい。

それと俳優がみんな生き生きしてて頼もしい。

第1幕の妻夫木は軽い、フワフワした、調子のいい都会人は真骨頂だ。

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第2幕は黒木華の変化が凄味を増してくる。

こんなに旨い女優とは知らなかった。

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キャバレー嬢の霊媒師は最初誰かわからない。

知的な小松がこんな品の無い小娘をさらっと出来るとはね。

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前半最大の見所は青木崇高だ。

ライターを引き合せながら、友情を武器に家族を取り込んでいく手腕。主演・岡田以上に存在感を醸し出す。

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後半は松たか子の独壇場だ。

「来る」のが何物か? 何故か? 目的は? いつ?

何にも説明してくれない中で、キレのある短いセルフ廻しで状況を唯一観客に解らせ、事態の収集を図る。

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そのスタイルが、1970年代、東映女囚さそりシリーズで体制と組織に背を向けた梶芽衣子ルックでスクリーンに現われる面白さは劇画だ。

中島vs松で21世紀の反体制ハードボイルドドラマをぜひ撮って欲しいな。

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彼女は何者かと対峙し、その為に仲間を呼んで警察をも動かす、地下では有名なサイキッカーらしい。ここで観客は唯一ホッとする。彼女なら退治してくれるだろう信頼が結ばれている。

日常にはいない、出逢わないであろう存在感がスクリーンを圧倒する。

「告白」でも感じたが女性の持つ冷静、正確、無慈悲、周到など母性の反対側を演じて見せてくれた松が、次のページに進んだ感がある。

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インサート映像が若干多すぎてCM調が過ぎる気はする。それと多くの謎が回収されないまま残るモヤモヤは仕方ない。ドラマの論理より世界観が優先する中島エンタメなのだから。

これでいいのだ。

邦画で役者のアンサンブルがフルに堪能出来たんだから平成30年最後の映画鑑賞は満足だ。

 

80点

 

映画「ヘレディタリー/継承」トニ・コレットの絶叫顔、森の中の一軒家、首ハネ、怪奇現象、得体の知れない町の人々、悪魔崇拝・・・オカルト全部入りジェットコースターの抜群の後味の悪さ。監督アリ・アスターの生真面目な演出は20世紀最高のホラー映画「エクソシスト」のウィリアム・フリードキンに通じる。

最近は九州のど田舎でも結構シネコンが増えてきて、最も見たかった映画が最も近くのスーパー系で始まっていたりするから侮れない。

auマンデーを利用して夕方5時スタートで観客は私1人(10分後には熟女2人が参加して3人で鑑賞となった)ホラーは知らない人でも沢山いるとそれほど怖くない心理が働くから+2人はいないも同じ。ホラー鑑賞環境が整った。

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あらすじ)

グラハム家の祖母・エレンが亡くなった。娘のアニーは夫・スティーブン、高校生の息子・ピーター、そして人付き合いが苦手な娘・チャーリーと共に家族を亡くした哀しみを乗り越えようとする。自分たちがエレンから忌まわしい“何か”を受け継いでいたことに気づかぬまま・・・。 やがて奇妙な出来事がグラハム家に頻発。不思議な光が部屋を走る、誰かの話し声がする、暗闇に誰かの気配がする・・・。祖母に溺愛されていたチャーリーは、彼女が遺した“何か”を感じているのか、不気味な表情で虚空を見つめ、次第に異常な行動を取り始める。まるで狂ったかのように・・・。 そして最悪な出来事が起こり、一家は修復不能なまでに崩壊。そして想像を絶する恐怖が一家を襲う。 “受け継いだら死ぬ” 祖母が家族に遺したものは一体何なのか?

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葬儀でアニーが不思議な挨拶をする。
「来てるのは知らない人ばかり」「母は秘密主義」・・・

とっさに悪魔崇拝の秘密倶楽部みたいな物語の背景が広がるが、娘チャーリーの異常さにすぐに忘れてしまった。不気味な低音BGMがいつも鳴ってるせいか・・

この映画はこのBGMと音響がキーだ。(「エクソシスト」もそうだった)

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葬儀終わってから租母の実家に住む4人家族が全員がとにかく暗い。

笑顔とか笑い、ジョークの一つもありゃしない。

父以外は瞳に生気が最初からない。

いつもピリピリした作家の母。

トニ・コレットは全く知らないがトラウマ抱えた中年女性像を秀逸に演じてる。

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不幸顔しか見せない訳あり娘。

麻薬パーティー好きな息子。

序盤でオーメン的な事故があってから、不幸は目に見える形で急降下していく様を真正面から描くことにつき合わされる。

ここから母の様々な絶叫顔が強烈だ。まさに壊れていく感じ。

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母が祖母の秘密を解明していくにつれてさらに不幸が増していく。

エクソシスト」はまだわかり易かった。

この映画は先の展開が見えない。

このホラージェットコースターがきつい。

カソリックの国アメリカで悪魔崇拝はタブー。

この映画がDVD販売、レンタル、アマゾンなどで動画配信されると10代でも見れる訳だからカルト映画化になるのは目に見えている。

キリスト教の国でヘレディタリー殺人が発生する予感もして、とても危険な匂いがする。

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「サタンごっこ」は「ごっこ」で終わらない。

本来アンダーグラウンド作品を年齢制限ありとはいえ、世界配給してしまう映画会社は十分病んでる。

 

 

エクソシスト」のリンダ・ブレアーさえ3人の死と引き換えに生還したのに。

希望のきの字もありゃしない。

共感なんて皆無、ただ絶望だけの映画。

 

10点(音響を評価して)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我らがクリント・イーストウッド(88)の新作「THE MULE」(運び屋)が公開される幸せと、トランプ統治のアメリカへの異議申し立てへの期待。

娯楽映画の最高齢記録を更新し続ける天才映画俳優兼監督のクリント・イーストウッドの新作トレーラーがYouTubeにアップされている。


映画『MULE』US予告 2019年公開

主演はおろか、出演もしないと依然インタビューで語っていたと記憶したが10年ぶりにスクリーンに復活した。

70年代「ダーティーハリー」で世界を席巻したアクション俳優。

ホットドッグ食べながらの悪人退治と44マグナム、ジャケットのカッコ良さ。

もう虜にならずにいられない。



彼は演出にも才能を発揮し「恐怖のメロディ」1971年で初監督兼主演以降、ワーナーブラザース配給で続々と80年~2010年代まで傑作ドラマを産み出し続け、その集大成が「グラン・トリノ」だった。

自分を犠牲にして異国から来た移民の幸せと引き換える。

 かつて共和党を支持し2年間は市長として地域社会の抱える問題点を理解したのか、イーストウッド的博愛主義への変化球にファンのみならず世界が唸った。

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予告編では、偉丈夫なイーストウッド(45年ファンなのでイメージが確立しているのもある)が、ただただおろおろする痩せた老人になりきっていて、死が近い古老の人で、それだけで落涙の一歩手前になってしまう。

 

一方で「グラン・トリノ」と違う、何か異質な傑作の予感しかない。

見てはいけないものを見てしまったら奈落へ落ちるしか他にはない。そんな感じが伝わるのだ。

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この10年、アメリカ最大の出来事は何たって大統領選にトランプ勝利。

メキシコ国境にも、アメリカ国民にも、世界経済にも壁と分断と混乱をもたらす。

イーストウッドはトランプ統治のアメリカの今に我慢できず、これまでのキャリアから考えられない「ドラッグの運び屋」の役を通して、敢えて出演したのではないか?

残念だけど年齢からすると引退まであと数本だろう。

娯楽作の体で私映画を全世界に配給できる立場と能力が共にあるのは世界の映画界で唯一無二でイーストウッドだけだろう。

「最後に言っておきたいことがある・・・」

そんなとてつもない映画である気がしてならない。

来年の日本公開が待ち遠しい