映画「愚行録」石川慶監督 妻夫木聡、満島ひかり、小出恵介、臼田あさ美、市川由衣、松本若菜
でのカタキを、この映画でとってくれる期待をこめて映画の日に出かける。
いつものど田舎シネコンには客はどう見ても7人くらい。
そりゃ誰だって「ラ・ラ・ランド」に行くよね。
原作は読んでないので物語は全く知らないが
最近若手キャストのアンサンブルが楽しめる日本映画多くて、満島ひかりも出るんだったら当然期待する。
一家惨殺、「3度の衝撃」
配給会社宣伝部の、盛ったコピーにはこれまで何度も騙されたので、信じはしないが衝撃してくれるなら損はない。
あらすじ)
日本中を震え上がらせた一家惨殺事件から1年、週刊誌の記者・田中は、迷宮入りした事件の真相に迫ろうと改めて取材を開始するが、関係者のインタビューから浮かび上がってきたのは、エリートの夫と美しい妻、そして可愛い娘という理想的と思われていた一家の、想像とはかけ離れた実像だった……
冒頭のバスシーンから屈折した人間を普通に見せてくれる。
過剰なものがない。
つぶやくようなセリフ廻しが心地良い。
妻夫木は新井浩文と並んで、役所浩司などと共にいい俳優になったな。
カッコいいとかではなくて共感力をスクリーンで見せてくれる。
満島は秘密を抱えた妹役で
拘置所にいるので出番がないが・・最後半の主役に。
年齢不詳感が幸いして女子大生が似合っている。
週刊誌記者として、事件の関係者を訪ね歩く先の若い役者たちが、いろんな”嫌な”人間像を演じていて好感がもてる。
特にスクリーンで初めて見る市川由衣は惹きつけるオーラが強い。
殺された妻役の松本若菜も
美しさの裏側のイヤーな感じを演じた。
臼田あさ美はNHKのコント番組でよく見た。
天然の小娘キャラからタレントと思っていたが女優としてセンスが確かにある。
ただ一家惨殺の動機が弱くて無理があると感じた。
そこを除けば監督第1作とは思えない落ち着いた映像でとくに被写界深度の浅い、主観モードと、パンフォーカスの客観モードの使い分けが匠だった。
3度の衝撃という程でもないが、それなりには面白かった。
しかし、フランス映画界におけるルネ・クレマンの様な大人のサスペンス映画の趣きを感じながらも、カタルシスが終始どこにもない息苦しさはどうなんだろう。
ここは映画のセオリーを信じて脚本いじらないと観客の心はつかめない。
才能はあるのに次回作の声がかからない恐れがある。
役者は満点なのに、映画としては
70点
次回はたぶん「アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男」
映画「ラ・ラ・ランド la la land」はフランスミュージカルへのリスペクト溢れる楽しく厳しく切ない傑作だった(公開初日最速レビュー感想) デイミアン・チャゼル監督 ライアン・ゴズリング&エマ・ストーン
フリーランスの私は、プレミアムフライデーなど国策とは関係なく、金曜は映画1000円なので映画館に行く。
直前に40年付きあった歯の根を抜いたので血だらけで麻酔も残っていて顔半分が微妙に痛い。にもかかわらずどうしても初日に見たかった。
前作「セッション」が素晴らしかったからだ。
省略の潔さとサスペンスに必要なものだけ収れんしていくクライマックスの興奮までの物語るうまさ。
遂にイーストウッドの後継者現る、と直感した。
その次回作が、ミュージカルで、現代のロサンゼルスで、色が綺麗らしく・・・
16時30分、前も後ろも左も右も、大勢の映画ファンに囲まれての平日に6割入りでこれは大ヒット間違いなしだよ「ラ・ラ・ランド」
冒頭のクレジットで、2.25 対 1 比率の【シネマスコープ】と判明。
これは60、70年代のハリウッド大作映画仕様ではないか!
通常は3対4だ。いいね、横ワイド。
スタートは渋滞のロスフルーウェイ貸切実写のダンスシーンが魅せる。
1シーン1カットの長回しなのでリズムが途切れない。
このテンポが心地いい。
あらすじ)
渋滞したロサンゼルスのハイウェイ。ようやく車の流れが動き出しますが、紙を見ながらブツブツと何かを呟いていたミア・ドーランはそれに気がつかず、後ろの車からクラクションを鳴らされ、腹を立てます。その車に乗っていたのは若い男で、ミアは彼に中指を立てて怒りを示すのです。ミアは映画の撮影所内のカフェへ。そこがバイト先です。女優志望の彼女はオーディションを受けまくっては落選する毎日。車の中でブツブツと呟いていたのもオーディション用の台本を読んでいたのです。今日もバイトを終えて面接を受けますが、また落選。
気を晴らそうと、友だちと一緒に業界関係者のパーティへ出かけます。しかし帰ろうとすると車が駐車違反でレッカー移動されていて、仕方なく徒歩で帰路へ。その途中、あるバーの前を通りかかるとピアノの演奏が聞こえます。それに気を引かれて店内へ。ピアノを弾いていたのは渋滞のハイウェイで自分を追い抜かした男でした彼の名前はセバスチャン。ジャズ・ピアニスト志望で、この店でバイトをしています。しかし、ポップスばかり弾かされ、気を腐らせていました。反逆心でジャズを演奏していたところへミアが来たのです。セバスチャンは即刻クビ。声をかけようとしたミアを無視してとっとと帰ってしまいます。
しばらくして、ミアがまた別のパーティに出ていると、セバスチャンがバンドの一員として演奏していました。ミアから声をかけ、2人はそれから親しくなります。お互いの夢を語り合い「理由なき反抗」を見る2人。やがて一緒に暮らし始めますが・・・
どこを切り取っても発色がいい。
室内でも、道路でも、レストランでも、プラネタリウムでも、どこでも踊るのだがその背景のセット美術が素晴らしい。
女性陣の服もレインボーを意識して生地の質感までよく見える。
この映画は前方で、見上げるように見るといい。
40、50年代フレッド・アステアやジーン・ケリーらのスタジオセットでのオーソドックスなハデ踊りというよりは、60、70年代フランスミュージカルの、背景と一体となった野外の解放感あるウェットな質感を感じた。
映画 シェルブーヌの雨傘 1964 (ジャック・ドゥミ監督 カトリーヌ・ドヌーブ主演)
この選択が正解だった。
2016年、トランプ帝国主義下のアメリカでフリーランスで生きるクリエーターの2人には夢追い人の心情の発露ダンスでないと。
揺れる心のひだをフランスミュージカルのどこまでも個人主義(これはアメリカファーストとは意味が違う)がピッタリはまる。
オーディションのリアル、ミュージシャンの妥協、新人女優の挫折・・・
バックヤードを見せることでフリーランスであることの生きざまを思い知る。
過去のミュージカルのみならず、様々な映画のオマージユに満ちた(ウディ・アレンの「マンハッタン」ボガード&バーグマンの「カサブランカ」など)
ビーイミーツガールのロマンチックを縦軸に、ハリウッド最前線の厳しさを横軸にしてクリエイティブで生きていこうとするリスクを取ろうとしてる世界中の若者と、かつて若者だったが大人(リスクから逃げた)に刺さるようになっている。
ラストシーンの2人の2カットの切なさが傑作にした。
2人はわかりあった。
言葉はいらないのだ。
いい映画の名シーンはサイレントなのだ。
これはロマンス映画の教科書「ローマの休日」のヘプバーンとペック のラストと重なるね。わかってるね。
監督はわずか31歳で、人生の機微と映画の文法をマスターしてる。
デイミアン・チャゼル凄いな。
文句なし今年劇場公開で見たNO1
100点
次回作は人類初の月に降りた、NASAのニール・アームストロング船長の伝記映画のようだ。
次回批評は「愚行録」か「沈黙~サイレンス」のどっちかで・・
「ブルゾンちえみ」が何故大人に刺さるのか考える。「with B (ブリリアン=コージ:徳田浩至、ダイキ:杉浦大毅)」、35億、 Austin Mahone「Dirty Work」本名は藤原史織
お笑いが好きでアメトークなどその手の番組を良く見る。
好きな芸人が爆笑問題、ナイツなど時事ネタ芸
わからないなのがパターン芸の人たち
レッスンゴレライとかのフレーズ芸は耐えられない。
ピコ太郎の登場は本当に悲劇だ。
すぐにCMに起用するスポンサーもどうかしている。
目がチカチカして実に不快だ。
あの不思議な踊りと英語と英語の足し算のどこに笑う要素があるのか?さっぱりわからない。
そういう中で、久々の大型新人ブルゾンちえみ
ラジオで語っている内容が面白かった。
この頭の良さなら受けるはずだ。
ブルゾンの声はエロいね
26歳とは思えない熟女感がある。
笑いの戦略が秀逸。
自分の立ち位置をよく分かっている。
ネタもキャラ設定もよく考えられて感心する。
上から目線に腹立つ
キャリアウーマン連呼の時代錯誤感が鬱陶しい
平たい顔に強烈なダッチワイフ的オーバーメイク
胸強調、タイトスカートのイケイケ感
美男子コンビ「 with B 」と組んでの小芝居
「35億」の大きな数字の違和感
そして ustin Mahone 「Dirty Work」
この選曲の素晴らしさ。
笑いのターゲットに20代、30代の働く女子を意識した初めての芸人だ。
おそらく彼女たち最大のテーマであるだろう「恋愛」を切り口に、成功者ブルゾンが上から教えてあげるていを取りながら、そんなちえみは存在が無理感がある落差を面白がらせる笑いの高等戦術。
時々、恋愛とかデート、結婚ネタをメインにする(割と美女と、決して美女でない)女性漫才コンビの面白くないのは、詰まるところ相手の容姿をおとしめる、揶揄するので、笑えないし笑いたくない。
容姿は親から良くも悪くも与えられたものなので、どうしようもない。小さな子供じゃあるまいし、そのネタで笑ってもらえると思っている感覚の鈍感さが嫌いだ。
ちえみはこのダーティーな職場の全員が、仕事放ったらかしで猥褻な世界観を日本版に切り取ってわかりやすく展開したのだろう。
これまで例のない芝居でも、コントでもない
プレゼン芸とでも名付けようか。
芸人であると同時に、優秀なプランナーだし時代を良く見てる感じがする。
26歳でこの才能はすごい。作家や映画監督になれる本質をみる感覚があるんだと思う。彼女こそビートたけしに続いて映画界に進出して欲しい。
独自の見解と勘違い上から目線がちょうど腹立つ
イラッと芸で2017年を席巻するブルゾンちえみ
流行語大賞は獲るな。
そこはどうでもいいけどね。
千眼美子(せんげんよしこ(せんがん)=元・清水富美加)の告白本「全部、言っちゃうね。」で自殺未遂やレプロ社長殺人願望など暴露告白出版と新ブログは、「幸福の科学」による選挙対策として若年層獲得プロモーションだよね。
NHKの朝ドラで初めて見た時、
「あ、この子は売れる、人気者になると」すぐに感じた。
主役を完全に食っている。なにか持っている。
SHIMIZU FUMIKA 1st Photobook 清水富美加
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天性の作られてない純粋な感じ
ハーフでも整形でもない大和撫子の趣きもある
一方で彼女は
中学で芸能活動を始め、ちやほやする大人しか知らない。
社会経験はゼロ。
両親共に信者なので本人のコントロールは実に容易だったろう。
教団は不満を聞きだしその原因を事務所にロックオン
レプロエンタテインメントは気の毒だね。
彼女も2015年のレプロのプロモーションで会社を絶賛してたのは何だったのか?
テレビ局や営業努力と様々なバックアップで人気物にして
これから資金回収しないといけないのに全部パー
恐らく水面下で工程表を作り(レプロの金とノーハウで育てさせ)ベストのタイミングで「ヤーメタ!」と。
相手が大手宗教団体とは争わない(嫌がらせ怖くて争えない)しね。
これは教団のプロモーション活動のスタート(これが一の矢)
心身の不調を表に出して、記者会見などは開かず教団弁護士が窓口になる。
以降はトランプと同じ手法でツイッターで言いたいことだけを言う。
二の矢がこの緊急告白という名の、計画通り出版
全部、言っちゃうね。 ~本名・清水富美加、今日、出家しまする。~
- 作者: 千眼美子
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死にたかった、死ななかった・・・
このコピーは10代、20代の人にはキャッチーで
全国にある「幸福の科学」支部に彼ら、彼女らを誘うには最適な言葉。
「あの清水さんも死のうと思ったんだけど
信仰によって死なずに済んだんだよ・・・」
若者が卒業、入学で揺れ動き、移動する3月、4月前に
一芝居打ったのだろう。
夏の都議会選挙、1年以内の衆議院総選挙がある。
18歳以上となった選挙制度の下
初の当選者を出したい宗教団体にとってこの世代の取り込みなくして勝てない。
与党となってキャスティングボートを持てることを証明した。
宗教団体に対する国の介入を退けられる。
または法案を微調整して実質効果を薄めることができる。
「政党を持つ」メリットを
大きくなった宗教法人が見逃す訳がない。
これを目指さない方が不自然だ。
大川隆法の守護霊インタビューでは
これまで、ヒラリークリントン、プーチン、石原慎太郎、ドナルドトランプなど
著名な政治家が多かった。その他ビートたけしなど大物著名人多数。
(YouTubeで公開中)
立候補した選挙は全敗なので、今後は小保方晴子氏、ローラ、綾瀬はるか、深田恭子など若手有名人、女性芸能人をターゲットに修正する。
女優・清水富美加の可能性 ~守護霊インタビュー~ (OR books)
- 作者: 大川隆法
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- 発売日: 2017/02/03
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名前を勝手に使われる方はたまったもんじゃないが。
「元・清水富美加」は若年層にとって今後最高の広告塔になる。
三の矢は彼女が規定年齢に達したらどこかの選挙で立候補だろう。
教団はフジ・サンケイグループなど各種メディアに定期広告を出す大スポンサーである。
今回の騒動の批判は、本質的な批判は教団には向かない。
メディア戦略には広告代理店のノーハウで
各局のワイドショーを見る限り、こちらもグリップ出来ている。
いまこそ読んでおきたい。
宗教法人の仕組みと本質の2冊
清水富美加のようなこどもでなくても、仕事も家庭を持つ大人が、教団に取り込まれ身も心も財産もスッカラカンになって立派な加害者になっていく。信者の子供が最大の被害者でこころに傷を追って人生を歩む。
NHK Eテレ「ねほりんぱほりん」のクオリティの高さに驚き「昔話法廷」の志の高さに感心する。出演:木南晴夏、小芝風花、安藤玉恵、宮﨑香蓮、工藤綾乃、小林涼子、真行寺君枝、ミムラ、朝倉あき、国仲涼子、光宗薫、奥貫薫
今年も40日を過ぎて、多くのドラマを地上波とネット配信で見ているが
最も感動を受けたのはNHKの子供向け番組、Eテレの数々の番組だ。
1年の受信料収益が6600億以上と潤沢な予算と、電通など民間クリエイティブと共同で作る手法で、良質なコンテンツを続々生みだしている。
まずは
山里亮太 と you がマペットになって、巷の様々な不可思議な事象を
当事者と共にみうらじゅん x いとうせいこうのスライダーショー並みに切っていく。
本人が出る深夜の民放暴露番組のつまらなさ軽く圧倒する
「ねほりんぱほりん」
山里のアイドル好きと脱力感はナレーションに最適だが
何と言ってもyou の自由さ、好奇心、質問力・・・
不可思議な現象の本質に迫るおばさんの声が実にスリリングで感動するのだ。
そして
誰でも知ってる童話・昔話を
若手女優陣 x 登場人物キャラぬいぐるみ
で物語を別の視点で再構築させるこれまでにない手法で
善悪を考えさせる「昔話法廷」
「カチカチ山」裁判の冒頭、ビジュアルだけで涙が浮かんで仕方なかった。
法廷に立つ被告人が、和服着たうさぎさんだよ。
顔は血の気のない真っ白だよ。
これは例えば
山本周五郎の名作「さぶ」の冒頭の一文
「小雨が靄のようにけぶる夕方、両国橋を西から東へ、さぶが泣きながら渡っていた。」
もう小説世界に入っていかざるをえない、魂を掴まれるのと同じ感覚
真面目にうさぎとして一生懸命に生きてきたであろう。
それが今、被告人として・・・
子供と、ある一定の年齢以上(45くらいかな)の感性のツボに刺さるのだ。
被告人のアリと検察官(ミムラ)
わずか15分の動画でこの完成度は素晴らしい。
同時にネット上で教師用のテキスト、論点整理などももDLさせ
見っ放しにさせない教育的配慮もある。
裁判員裁判の制度を理解させると同時に
裁くことの責任、裁かれることの罪の重みを教える。
志が高いのだ。
民間放送にこれを求めるのは筋が違うが、芸がないのに芸能人と呼ばれるバカのような(ようにしか見えない幼稚園児のような)人たちを、バラエティと称する番組に使い観客と代理店と称する関係者全員でスタジオで一緒になって意味もなく笑う。
大人の視聴者をバカにしてるとしか思えない。NHKと違い無料とは言え、見たくもないCMを見せられ(技術的にはCMカットは信号検知するだけで簡単に出来るが広告代理店の反対でメーカーは販売も流通も差せない)国民全体のギャンブル依存率は世界最大なのにパチンコ、競馬、競輪、モーターボートなどCMは流しっぱなしの矛盾。
漫画や小説を元に映画化、制作委員会方式で局とタイアップ、公開時に番宣で出ずっぱりのバカプロモーションを許し1000円以上の料金を取り粗悪品を観せられる。
民間放送の異常さをよそに、真のクリエイティブはひっそり公共放送で子供向けに無料で見れる。裏返せば、優秀な人材は映画界に行かないでNHKにいる訳だ。
大画面で、エンタメとして、2時間魂を揺さぶって欲しいけどね。
動画配信の最高のクオリティを子供だけに独占させるのはもったいない。
全話NHKのWEB上で配信中(以下参照)
映画「アンチポルノ」 監督:園子温 冨手麻妙、筒井真理子
月曜日の午後に、5割の入りは異常だと思ったら「メンズデー」だった。
劇場内は異様な熱気で、なんかいつもと違う。
園子温 x ロマンポルノへの期待か?
あらすじ)
小説家兼アーティストとしてブレイクした京子は極彩色の部屋に籠もり、マネージャーの典子から知らされるスケジュールを分刻みでこなす毎日を送る。次第に虚構と現実の境が曖昧になっていく中、京子の意外な過去が暴かれる・・・
主演の冨手麻妙があっけらかんとヌードになってくれるが。
80年代に日活の映画館で見た赤坂麗、宮井えりな、風祭ゆき、小川美那子、朝吹ケイトなどのもつ影のある女たちを見てきたので、あの頃のエロスとはほど遠い。
大人の女性の色気を全く感じない。
かといって少女の毒気もない。
主役をやるには何か大切なものが足りない。
共演する筒井真理子を初めてスクリーンで見るので楽しみにしていた。
美しい裸もSMもどきプレイが中途半端で、彼女の魅力の出る幕がなくかわいそう。
他の共演者も異型の人形かロボットの様で・・・
誰一人共感もないし、ふざけたコスプレの学芸会のよう。
極彩色の絵づくりも悪趣味だし
【ホフマンの舟歌】だけが空虚に流れる・・・
どうしたのか、園子温!
「冷たい熱帯魚」で魂を鷲掴みされた悪の魅力、とか
「恋の罪」でインテリの心の砂漠を見せてくれた迷宮、とか
2作はAmazonプライムで見れる。
(「ヒミズ」、「地獄でなぜ悪い」「希望の国」「TOKYO TRIBE」も)
「愛のむきだし」の何だかわからない疾走感、とか・・・
何も園がなかった。
最近は1年に2,3本を公開させる売れっ子になってクオリティを保てないのか?
日活の企画に乗っただけの箸休めかな。
だから観客はごちそうを何一つ食べれない。
「アンチポルノ」は「アンチソノシオン」だった。
10点
23年ぶりに五木寛之が「新 青春の門 第9部 漂流編」を「週刊現代」誌上に連載開始するも、電子書籍「dマガジン」で読む不思議さと講談社 VS 新潮社の戦い。
1970年代、私のヒーローはスティーヴ・マックイーン、クリント・イーストウッド、ロバート・レッドフォード、デ二ーロなどハリウッドスターと、日本人では何故か五木寛之だった。
当時ラジオドラマが人気で「海に見ていたジョニー」など音で聞いていた。
カッコ良かった。
九州のど田舎でからいつか横浜に行きたい。
海外に出たい。世界を廻りたい・・・
60年代後半からの20年間は彼の小説群をよく読んだ。
『さらばモスクワ愚連隊』のJAZZへの矜持
『蒼ざめた馬を見よ』の対ソ連世界謀略
『青年は荒野をめざす』の20世紀ヨーロッパ史の悲哀と人種差別
『男だけの世界』『内灘夫人』『ヒットラーの遺産』『狼のブルース』『こがね虫たちの夜』など耽美サスペンスロマンとでも言うべき中編のエッジの効いた、戦争を引きづった者たちの企みの高揚と敗北感が堪らななく魅力だった。
主人公がフリーライター、カメラマン、ルポライター、週刊誌記者などマスコミの底辺で生きるフリーランスに強く憧れた。
サラリーマンなど宮使いでなく、リスクを背負って謎を付きとめたい好奇心がカッコ良かった。
その影響は私も受けた。
映画「四季・奈津子」で本田博太郎演じるカメラマンのように「ヌード撮りませんか?」+名刺を渡す作戦はやったことがある。
(アマゾンプライムで見直したら1979年が見えた。舞台は私が産まれた福岡県の飯塚市近郊。八木山バイパス、オートマ以前のシフトギアー、状況劇場の赤テント、博多駅の新幹線ゼロ系、東亜国内航空(今はJALに吸収)も、田村隆一が本人役で出ていて実にあの頃が蘇る)
さて 『青春の門』
週刊現代で連載が始まったのが1969年((アポロ11号が月面着陸した年で、翌年70年安保の東大安田講堂事件の前年)だった。
あやすじ)
誰もが一度は通りすぎる、そしてただ一度しか通ることの許されない青春の門。熱い血のたぎる筑豊の地に生を享けた伊吹信介。目覚めゆく少年の愛と性、そして人生への希望と旅立ち…。ひたむきな青春の遍歴を雄大な構想で描き、世代を超えて読みつがれる不滅の大河ロマン第1部
(数度の映画化がされ、筑豊編は菅原文太版がベスト)
以降作品は、自立篇 (1971年-1972年) 放浪篇 (1973年-1974年) 堕落篇 (1976年-1977年) 望郷篇 (1979年) 再起篇 (1980年)で一旦中止、 挑戦篇 (1993年)で再開するも再中断・・・
自立編からの東京での貧乏生活、恋愛、学生運動、函館への逃避行など、こちらも東京生活を始めたり、仕事の生きずまりとか、結婚しようとした女と突然連絡とれなくなったり。故郷へ帰ったりとか・・・小説とリンクするところもあり伊吹信介の心情がよくわかる。
ただ余りに、ゆっくりしたテンポで状況を描くので、作家の年齢を考えれば、完結などまず不可能でろうと思っていた。
そこにNHKが連載再開のニュースが入る
地元紙でも
「伊吹の29歳で筑豊に帰郷でお仕舞い」
であればもしかして完結もあるうると。
そして先週、第1回を紙面で読んだ。
ソ連の僻地から物語がはじまる。
20年ぶりの五木節だ。挿絵も筑豊編の初期の感じがしていい。
60年代のソ連を舞台に日本男子・伊吹信介が躍動する。
2回目をDOCOMO提供のdマガジン(30日無料)でiPhoneとiPadで読んだ。文字の大きさと行間をピッチで自由に拡大できる便利さはシニアには素晴らしい。30年後の連載が電子書籍とは作者も読者も思わなかっただろう。
1週間に1回、5,6ページ、時空を超えてイメージする贅沢さを味わう幸せ。
村上春樹の新作を午前0時に本屋に並び朝まで一気に読み込ませSNSクチコミPR作戦の世界系人気作家、と対して週刊誌連載という名のスロー読書体験が60~80年代文学界の旗手・五木寛之というの実に面白い。
新潮社VS講談社でもある。
また、2017年、大統領トランプと皇帝プーチンが支配する全体主義的MADな世界に生きる日本人に、共産主義バリバリの1961年、日本の若者がどう生き抜いたのか?五木寛之なりのメッセージが必ずある。
週刊誌にするか電書にするかは別にして
週一、その時空に読者は飛べるか?
真の読書力が問われる。
私の中で最高傑作は「戒厳令の夜」だ。
中洲のバーから絵画を発見するところから始まって戦後の日本の政界と右翼との関係。石炭史興亡、メルセデスベンツの秘密、自衛隊出動、ナチスの絵画泥棒とリアルとエンタメが混然となって、私の故郷でもある福岡を舞台に20世紀世界史とこんな風に繋がっているのかと驚嘆。と同時のプロ作家の情報量と構築力の凄さに圧倒。
俺は作家にはなれない、と確信した。
映画雑誌社に勤める江間は、出張時に博多のバーで、「伝説中の幻の絵」といわれるパブロ・ロペスの作品を見かける。なぜここに? 大学で美術史を専攻した江間の血が騒ぐ。江間は福岡の大物国士に相談し、日本への流入経路について探索をはじめる。スペイン内乱にはじまり、ナチスのパリ占領、GHQの日本統治、さらに政界の疑獄事件へとつながっていく手がかり。舞台は筑豊からチリへ。壮大なスケールの歴史ロマン。